婚約破棄とのことですが、あなたは既に詰んでいますよ?

マルローネ

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1話

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「お前とは婚約破棄なんだよ、ローズ。いい加減に分かってくれ」

「コルデン様! なぜでしょうか!?」


 コルデン・バウム伯爵からの信じられない言葉だった。婚約者である私と婚約破棄をしようと言うのだ。本当に意味が分からない事態に私はその理由を求めていた。

「お前が子爵令嬢でしかないからだ。私はもっと地位の高い女性と付き合うことにする。そうでなければ、より上を目指せないからな」

「そ、そんな……コルデン様! そんなことって……!」

「済まないな、ローズ。お前は美人だが地位が低すぎる。ま、そういうことだ」


 コルデン様は全く悪びれている様子はない。私の方向も見ていないので、反論を聞く気もないのかもしれない。それでも私は叫び続けた。


「酷過ぎます……こんなの! どうしてこんな……いきなり婚約破棄だなんて……!」

「まあ、どうでも良いが、さっさと荷物をまとめて出て行ってくれないか? 私も何かと忙しいんだ。これから用事もあるしな」

「コルデン様……」


 本当に私の話を聞く気がないみたいだった。既に婚約破棄は決定しているようで、私は出て行けということか。あり得ない……なんなのかしら、この人は……。


「コルデン様、失礼致します……」

「ん? どうかしたのか?」


 そんな時だった。コルデン様の部下である執事の一人が部屋に入って来たのは。一体、なにかしら?


「リブガロ様がいらっしゃっておりますが、如何いたしましょうか?」

「ローズの父親か。ちょうどいい。こいつとの婚約破棄を直接父親に話すのは良いことだ。すぐに通せ」

「畏まりました」


 お父様が訪れている? どうしてこのタイミングで……? 私は不思議でしょうがなかった。何がなんだか分からない……。


---------------------------


「これは偶然だな、リブガロ殿。こんな時に私の屋敷に来るとは」

「突然の訪問失礼致します。コルデン様」

「申し訳ございませんでした、コルデン様」

「ローズの姉のミシェラも一緒だったか……まあ、どうでもいいが。それで何用かな?」

「私達がここに来たのは偶然ではありません。それは分かっていますよね?」

「そうだな……偶然にしてはあまりに出来過ぎている」


 確かにコルデン様の言う通りだった。お父様と姉さまが訪れるなんて。そうそうあることではない。既に二人には婚約破棄の話はしているけれど……二人とも驚いている様子はなかった。
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