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Prolog
05
しおりを挟む連絡先に追加された「相模倫太郎」の名前。
何度見ても溜め息が止まらない。
本当に全部食べきれるのか、そればかりが頭に浮かんだ。
捨てることにならないといいけど。そんなことになったら、本当にもったいない。
食べれないなら持って帰りたかったけれど、本人が食べるというし、置いていくしかなかった。
最初にあの人がRinだと知ったとき、本当に嬉しかった。
この世に存在していることが分かって、嬉しくて、ついテンションが上がってしまった。
けれど、接してみてRinと相模倫太郎はちがうんだということを知る。
理想があったわけではなくて、そこに落胆したわけでもなくて、曲を作った『人』がいると実感がなかったから、知って現実味が帯びたというような印象だった。
相模倫太郎がどんな人であれ、『Colorful』を作ってくれたことに感謝しているし、尊敬もしている。
けれども、相模倫太郎本人が友好的かというとそうではなかったので、関係を持つことに悩む。
友人になるにはハードルが高い相手だと思うし、知人として付き合っていくにも少し遠慮したいなと思う。
嫌いではないけれど、私では彼の力になれないと思った。
私自身が精神的に強くて健康なら、きっと相模倫太郎の支えになることを選べたかもしれない。
しかし、私は人の心配をして尽くすことができるほど、心に余裕がない。
日々、楽しいことを見つけて、うれしいことを探して、心を穏やかにして過ごす。
そんな生活が乱される気がして、彼と関わることを拒んでしまう。
『パロン』に癒やされて、ごろごろして回復に臨んだ。
このチャンネルでは撮影会やふれあい会、『パロン』の体調やストレスを考慮して三ヶ月に一度だけ何かしらの企画を行っている。
『パロン』は人気なので、企画参加には必ず人数制限があり、抽選で選ばれる仕組みだ。
大人数だとストレスになるので、10数人と決まっている。
多いときは15人、少ないときは10人くらいの規模で行っているが、『パロン』が疲れたりストレスを感じたりしているかもしれないという予兆が見えたらそこで終わる、というルールがある。
それに納得できる人だけ応募することになっていて、それでも毎回大人気で私は当選したことがない。
グッズのシールはチェキ目当てで購入した。パロンが伏せをしているチェキだ。
飼い主のマリアさんのおしゃれなサイン入り。
今日更新の動画でチャンネルのリニューアルをすると言っていた。
合間のイラストが変わったりするそうだ。
イラストもファンの人が描いていて、いつもかわいらしいので次のイラストも楽しみにしている。
三日ほどのんびり過ごして、その間どうしても忘れられなかったので、気合いを入れてメッセージを送った。
買ってきたもの、食べましたか?
それだけを打つのに、やたら気力が必要だった。
返ってきた返事は、つめたい大福のアイスはどこにある?というものだったので、おそらくこれは食べたあとにまた食べたくて、売っている場所が知りたいんだなと察した。
コンビニにもスーパーにも売ってますよと返したが、気になっていたのはおにぎりとヨーグルトの消費期限だ。
ヨーグルトとおにぎりは食べましたか?と追加でメッセージを送ると、食べたとだけ返ってきた。
ならいいか。
無事に消費されたことがわかったので、すっきりした気持ちでメッセージアプリをタスクから消した。
今日は良い気分で眠れそうだ。
応援ありがとうございます!
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