ネクロマンサー異世界旅行記

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第二十一話

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「すみませーん」

 一度見たことのある扉を押し開けて白蛇は声をかけた。
 数秒待ってみるが返事はない。
 だが、この図書館にフィアはいる。
 その証拠に集中しなくても圧縮された膨大な魔力を感じる。
 
「あのー、すみませーん入りますよ」

 静かな図書館に白蛇の声が溶けて消えた。
 そもそも誰でも入れるはずのこの図書館に全く人がいない。 
 少しくらい雰囲気も相待って中々不気味に感じる。
 フィアの魔力を追いかけて図書館の中を進む。
 『無限回廊』という魔法のおかげで図書館の館内の広さが文字通り無限になっておりどこまで歩いても端を見ることはできない。
 そのためこの図書館では室内なのに地平線を見ることができる。
 
「すごい蔵書数ですね」

 歩きながら白蛇は声をこぼした。

「私では何百年かかってもコレほどの本を集めることは不可能でしょう」

 突然かけられたその声は、高い音と低い音を同時にラジオで流した様なしゃがれた声だった。
 白蛇は弾かれた様にその声元へと振り返る。

「どうも」

 白いヤギ、漢字で書くと山羊。
 テレビの中で直角にも近い崖の居るヤギだった。
 
(ヤギの獣人?)

 確か執事服というのだろうか、スーツ……いや燕尾服の方が近いだろうか。
 何せキッチリとした服を着ている。
 身長は白蛇よりも随分と高い、おそらく190センチ以上だろう。
 白くて背が高く、ねじれた角にヤギ特有の四角い瞳孔を持つ奇妙な目、それに執事服が合わさって独特な雰囲気を醸し出している。

「私、フィア様に仕えているメンメットと申します」
「はぁ……どうも」

 白蛇が曖昧に返すと、メンメットと名乗った二足歩行のヤギは目を細める。
 おそらく笑って返したのだろう。
 
「えーと、白蛇さん? でしたよね、話は聞いております。鬼姫さんの弟子だとかなんとか」
「鬼姫さんのこと知ってるんですか!?」
「私も長い間フィア様に仕えておりますから、そのフィア様のお友達である鬼姫さんのことも当然知っております」
「そうなんですね」
「ところで白蛇さん、今回の用事はなんでしょう? あなたが図書館に来るときは何か用事がある。そうではないですか?」

 メルメットは尋ねた。

「当たってます、そうなんです。フィアさんは居ますか? 魔法を学びたくて」
「あら、贅沢な頼みね」

 白蛇の頭上から声が降ってくる。
 その声に釣られて上を見上げると、天井がなくなっていた。
 吹き抜けの図書館が合わせ鏡の様に無限に続いている。

「数日ぶりね」

 扉が閉まる様な音と共に、突如上にいたはずのフィアが白蛇のすぐそばに現れる。

「そうですね」
「あら、驚かないのね?」
「鬼姫さんも似たような悪戯が好きでしたから」

 ただ鬼姫と違うのはおそらく身体能力に任せた超スピードの類ではないと言うことだろう。

(フィアさんの魔力が一瞬で移動しましたね、なんの魔法でしょう?)

「そうね……教えるのは構わないけど、少しだけ条件をつけてもいいかしら?」
「ええ、構いません」
「まず一つ目なんだけど、あなたの使える魔法を全て今から見せてもらえないかしら?」
「今からですか? わかりました」

 いきますと白蛇がそれだけ呟くと目を閉じる。
 ゆっくり息を吐き、体の隅々に意識を集中させる。

「まず、身体強化魔法です」
「それが全力なのね?」
「はい」
「じゃあ次お願い」

 では、そう言って白蛇は数歩後ろに下がる。
 ゆっくり刀に手をかけ、見せびらかすようにベルトに挟んだ鞘を引く。
 親指で鍔を押し、紫がかった白銀が少しだけ顕になる。

「抜きますよ」

 ゆっくり刀を抜いて、その刀に魔力を込める。

「はい、武器強化魔法です」
「なるほど、次」

 手早く刀をしまうと、右手に魔力を込める。
 その魔力をゆっくり人形を作るように押し出す。
 押し出された魔力は空気に散布されることなく、質量を持っていく。
 子供サイズの骸骨が生成される。
 
「へぇ、いい魔法ね」

 初めてフィアの表情が緩んだ。

「ほんとですかっ!? ありがとうございます」
「これで最後かしら?」
「いえ、あと一つあります」

 指にはめた銀色の輪に琥珀色の宝石が取り付けられた指輪。
 鬼姫からもらったその指輪に魔力を込める。
 鬼姫の使う魔法と同じ、ゲートを開いた。

「へぇ」

 開いたゲートにその骸骨をしまう。

「僕の使える魔法はこれで全てです」
「その指輪は鬼姫から?」
「そうです、最近貰いました」
「なるほどねぇ」
 
 フィアは少し考えるような仕草を数秒して口を開いた。

「そうね、今から魔法の基礎の基礎を教えるわ、取り敢えずこれが出来れば魔法っぽいことはできるはずよ」
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