21 / 32
第二十一話
しおりを挟む
「すみませーん」
一度見たことのある扉を押し開けて白蛇は声をかけた。
数秒待ってみるが返事はない。
だが、この図書館にフィアはいる。
その証拠に集中しなくても圧縮された膨大な魔力を感じる。
「あのー、すみませーん入りますよ」
静かな図書館に白蛇の声が溶けて消えた。
そもそも誰でも入れるはずのこの図書館に全く人がいない。
少しくらい雰囲気も相待って中々不気味に感じる。
フィアの魔力を追いかけて図書館の中を進む。
『無限回廊』という魔法のおかげで図書館の館内の広さが文字通り無限になっておりどこまで歩いても端を見ることはできない。
そのためこの図書館では室内なのに地平線を見ることができる。
「すごい蔵書数ですね」
歩きながら白蛇は声をこぼした。
「私では何百年かかってもコレほどの本を集めることは不可能でしょう」
突然かけられたその声は、高い音と低い音を同時にラジオで流した様なしゃがれた声だった。
白蛇は弾かれた様にその声元へと振り返る。
「どうも」
白いヤギ、漢字で書くと山羊。
テレビの中で直角にも近い崖の居るヤギだった。
(ヤギの獣人?)
確か執事服というのだろうか、スーツ……いや燕尾服の方が近いだろうか。
何せキッチリとした服を着ている。
身長は白蛇よりも随分と高い、おそらく190センチ以上だろう。
白くて背が高く、ねじれた角にヤギ特有の四角い瞳孔を持つ奇妙な目、それに執事服が合わさって独特な雰囲気を醸し出している。
「私、フィア様に仕えているメンメットと申します」
「はぁ……どうも」
白蛇が曖昧に返すと、メンメットと名乗った二足歩行のヤギは目を細める。
おそらく笑って返したのだろう。
「えーと、白蛇さん? でしたよね、話は聞いております。鬼姫さんの弟子だとかなんとか」
「鬼姫さんのこと知ってるんですか!?」
「私も長い間フィア様に仕えておりますから、そのフィア様のお友達である鬼姫さんのことも当然知っております」
「そうなんですね」
「ところで白蛇さん、今回の用事はなんでしょう? あなたが図書館に来るときは何か用事がある。そうではないですか?」
メルメットは尋ねた。
「当たってます、そうなんです。フィアさんは居ますか? 魔法を学びたくて」
「あら、贅沢な頼みね」
白蛇の頭上から声が降ってくる。
その声に釣られて上を見上げると、天井がなくなっていた。
吹き抜けの図書館が合わせ鏡の様に無限に続いている。
「数日ぶりね」
扉が閉まる様な音と共に、突如上にいたはずのフィアが白蛇のすぐそばに現れる。
「そうですね」
「あら、驚かないのね?」
「鬼姫さんも似たような悪戯が好きでしたから」
ただ鬼姫と違うのはおそらく身体能力に任せた超スピードの類ではないと言うことだろう。
(フィアさんの魔力が一瞬で移動しましたね、なんの魔法でしょう?)
「そうね……教えるのは構わないけど、少しだけ条件をつけてもいいかしら?」
「ええ、構いません」
「まず一つ目なんだけど、あなたの使える魔法を全て今から見せてもらえないかしら?」
「今からですか? わかりました」
いきますと白蛇がそれだけ呟くと目を閉じる。
ゆっくり息を吐き、体の隅々に意識を集中させる。
「まず、身体強化魔法です」
「それが全力なのね?」
「はい」
「じゃあ次お願い」
では、そう言って白蛇は数歩後ろに下がる。
ゆっくり刀に手をかけ、見せびらかすようにベルトに挟んだ鞘を引く。
親指で鍔を押し、紫がかった白銀が少しだけ顕になる。
「抜きますよ」
ゆっくり刀を抜いて、その刀に魔力を込める。
「はい、武器強化魔法です」
「なるほど、次」
手早く刀をしまうと、右手に魔力を込める。
その魔力をゆっくり人形を作るように押し出す。
押し出された魔力は空気に散布されることなく、質量を持っていく。
子供サイズの骸骨が生成される。
「へぇ、いい魔法ね」
初めてフィアの表情が緩んだ。
「ほんとですかっ!? ありがとうございます」
「これで最後かしら?」
「いえ、あと一つあります」
指にはめた銀色の輪に琥珀色の宝石が取り付けられた指輪。
鬼姫からもらったその指輪に魔力を込める。
鬼姫の使う魔法と同じ、ゲートを開いた。
「へぇ」
開いたゲートにその骸骨をしまう。
「僕の使える魔法はこれで全てです」
「その指輪は鬼姫から?」
「そうです、最近貰いました」
「なるほどねぇ」
フィアは少し考えるような仕草を数秒して口を開いた。
「そうね、今から魔法の基礎の基礎を教えるわ、取り敢えずこれが出来れば魔法っぽいことはできるはずよ」
一度見たことのある扉を押し開けて白蛇は声をかけた。
数秒待ってみるが返事はない。
だが、この図書館にフィアはいる。
その証拠に集中しなくても圧縮された膨大な魔力を感じる。
「あのー、すみませーん入りますよ」
静かな図書館に白蛇の声が溶けて消えた。
そもそも誰でも入れるはずのこの図書館に全く人がいない。
少しくらい雰囲気も相待って中々不気味に感じる。
フィアの魔力を追いかけて図書館の中を進む。
『無限回廊』という魔法のおかげで図書館の館内の広さが文字通り無限になっておりどこまで歩いても端を見ることはできない。
そのためこの図書館では室内なのに地平線を見ることができる。
「すごい蔵書数ですね」
歩きながら白蛇は声をこぼした。
「私では何百年かかってもコレほどの本を集めることは不可能でしょう」
突然かけられたその声は、高い音と低い音を同時にラジオで流した様なしゃがれた声だった。
白蛇は弾かれた様にその声元へと振り返る。
「どうも」
白いヤギ、漢字で書くと山羊。
テレビの中で直角にも近い崖の居るヤギだった。
(ヤギの獣人?)
確か執事服というのだろうか、スーツ……いや燕尾服の方が近いだろうか。
何せキッチリとした服を着ている。
身長は白蛇よりも随分と高い、おそらく190センチ以上だろう。
白くて背が高く、ねじれた角にヤギ特有の四角い瞳孔を持つ奇妙な目、それに執事服が合わさって独特な雰囲気を醸し出している。
「私、フィア様に仕えているメンメットと申します」
「はぁ……どうも」
白蛇が曖昧に返すと、メンメットと名乗った二足歩行のヤギは目を細める。
おそらく笑って返したのだろう。
「えーと、白蛇さん? でしたよね、話は聞いております。鬼姫さんの弟子だとかなんとか」
「鬼姫さんのこと知ってるんですか!?」
「私も長い間フィア様に仕えておりますから、そのフィア様のお友達である鬼姫さんのことも当然知っております」
「そうなんですね」
「ところで白蛇さん、今回の用事はなんでしょう? あなたが図書館に来るときは何か用事がある。そうではないですか?」
メルメットは尋ねた。
「当たってます、そうなんです。フィアさんは居ますか? 魔法を学びたくて」
「あら、贅沢な頼みね」
白蛇の頭上から声が降ってくる。
その声に釣られて上を見上げると、天井がなくなっていた。
吹き抜けの図書館が合わせ鏡の様に無限に続いている。
「数日ぶりね」
扉が閉まる様な音と共に、突如上にいたはずのフィアが白蛇のすぐそばに現れる。
「そうですね」
「あら、驚かないのね?」
「鬼姫さんも似たような悪戯が好きでしたから」
ただ鬼姫と違うのはおそらく身体能力に任せた超スピードの類ではないと言うことだろう。
(フィアさんの魔力が一瞬で移動しましたね、なんの魔法でしょう?)
「そうね……教えるのは構わないけど、少しだけ条件をつけてもいいかしら?」
「ええ、構いません」
「まず一つ目なんだけど、あなたの使える魔法を全て今から見せてもらえないかしら?」
「今からですか? わかりました」
いきますと白蛇がそれだけ呟くと目を閉じる。
ゆっくり息を吐き、体の隅々に意識を集中させる。
「まず、身体強化魔法です」
「それが全力なのね?」
「はい」
「じゃあ次お願い」
では、そう言って白蛇は数歩後ろに下がる。
ゆっくり刀に手をかけ、見せびらかすようにベルトに挟んだ鞘を引く。
親指で鍔を押し、紫がかった白銀が少しだけ顕になる。
「抜きますよ」
ゆっくり刀を抜いて、その刀に魔力を込める。
「はい、武器強化魔法です」
「なるほど、次」
手早く刀をしまうと、右手に魔力を込める。
その魔力をゆっくり人形を作るように押し出す。
押し出された魔力は空気に散布されることなく、質量を持っていく。
子供サイズの骸骨が生成される。
「へぇ、いい魔法ね」
初めてフィアの表情が緩んだ。
「ほんとですかっ!? ありがとうございます」
「これで最後かしら?」
「いえ、あと一つあります」
指にはめた銀色の輪に琥珀色の宝石が取り付けられた指輪。
鬼姫からもらったその指輪に魔力を込める。
鬼姫の使う魔法と同じ、ゲートを開いた。
「へぇ」
開いたゲートにその骸骨をしまう。
「僕の使える魔法はこれで全てです」
「その指輪は鬼姫から?」
「そうです、最近貰いました」
「なるほどねぇ」
フィアは少し考えるような仕草を数秒して口を開いた。
「そうね、今から魔法の基礎の基礎を教えるわ、取り敢えずこれが出来れば魔法っぽいことはできるはずよ」
0
あなたにおすすめの小説
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる