異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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連載

牧場見学!

「チハルさん!こちらです!」
 シンクは領都にある牧場を背に両手を広げる。

「広い!」
「それはそうだ、畜産を多くしている領だからな。」
 エンハルトは腰に手を当て牧場を見渡す、少し先にある厩舎の方を見れば沢山の羊が見える。

「それでは向かいましょう♪」
 嬉しそうに答えるシンク、昨夜のお茶会で千春との距離も縮まった、今日のお出かけは進んで案内をすると言う程だった。

「ハルト、商業ギルドにも行くの?」
「商業ギルドはいつでも構わないな、明日でも構わないぞ?」
「いやぁ、流石に一日中ここにはいないでしょ。」
 てくてくと歩きながら千春が呟く。

「羊だー、あっちにも動物いるね。」
「牛だな。」
「・・・あの牛どっかで見た事あるなぁ。」
「魔国の牛だ。」
「魔国牛も連れて来てるの!?」
「ああ、試験的に育てている、マコト殿の指示で飼料を変えて育てているはずだ。」
「ん?ダイアパパ?」
「穀物をメインに食べさせると肉が柔らかくなるらしい。」
「あー、グレイン牛ね。」
「チハルは分かるのか?」
「わかるよ、グレインフェッドって言って、穀物で育てた牛さんは脂肪が増えて早く育つんだよ、私があっちの牛肉で作ったすき焼き食べたでしょ?」
「あれは美味しかったな。」
「国産和牛だからね~♪あれがグレイン牛。」
「普通の牛は草を食べるんだろう?」
「うん、それはグラス牛、グラスフェッドって言うの。」
「・・・よく知ってるな。」
 千春の知識に関心するエンハルト、千春はドヤ顔で答える。

「料理は趣味ですから~♪食材くらいは調べるよ♪」
「しかし全部を穀物で育ててないんだ、草だけで育てる場所もある。」
 エンハルトは不思議そうに言うと、千春が頷く。

「グラス牛の方は脂身少ないけど、ビタミンとかミネラルが多いんだよ、それに赤身の方が美味しい料理もあるじゃん?」
「じゃん?って言われても俺は分からないぞ。」
「赤身ゴロゴロのビーフシチュー食べたいな。」
 不意に千春は呟く、エンハルトは思わず笑みを零す。

「俺も食べたいな。」
「おっけー、今日は牛肉で行きますかー♪」
「牛肉ですか!?この先に牛もいます!」
「いや、牛さんいても肉は肉屋さんでしょ。」
 嬉しそうに言うシンクに突っ込む千春、シンクは少し考え頷く。

「そうでした・・・」
「ハルト、領都で買い物も出来るよね?」
「そうだな、時間があるならさっき言っていた商業ギルドに顔を出すか。」
「商業ギルドに肉あるの?」
「有るだろ、無ければ肉屋に行けばいい。」
「そりゃそうだー。」
 千春はそう言うと、「にくにくにっく~♪」とどこかで聞いた事のある歌を歌いながら厩舎に向かった。


-------------------------


「ふむ、概ね問題は無さそうじゃな。」
 王城の一室、ジブラロール王国国王エイダンは書類を見ながら呟く、昨夜アリンハンドからの魔導通信で来た報告書を呼んでいた。

「インゴール侯爵は元から保守派でしたので。」
「うむ、一部過激な者が居たが、処理は終わっておるからな。」
 インゴール派と言われる者達、その領袖であるインゴール侯爵の動きは既に把握されているが・・・

「他の貴族も同派閥内で情報を集めているようですが、残っているのは穏健派、保守派の者達、大きな動きは無いでしょう。」
「ふむぅ、それはそれで問題もあるが、ここはルビノブに任せるか。」
「そうですね。」
 宰相ルーカスも同じ考えなのか、すぐに頷く。

「しかし・・・昨日の夕食は美味かったな。」
「インゴール侯爵領で育て始めたヒアープですか。」
「チハルは羊と言っておったが・・・羊獣人族も居るが同じ系統なのかのう。」
「人族である私たちも「猿」と同じ系統とタイキ殿が言われておりましたが。」
「そう考えると進化とは不思議な物じゃな、女神の采配か、しかし、王都も獣人や精霊族も増えたのう。」
 ふと思い出す様に呟くエイダンは、窓の外から見える王都を見つめる。
 色々な種族が集まり始めたジブラロール王国、最近は獣人族も増えている、大きな問題こそ起きてはいないが、種族間での喧嘩は耳にしていた。

「元から少なくは無かったのですが、ここ最近はかなりの種族がジブラロールに来ております。」
「問題は?」
「今のところ大きな事は起きておりません。」
「ふむ、ジブラロールの法を遵守しているか。」
「法よりも抑制力のある「力」が有りますので。」
「・・・ドラゴンか。」
「はい、どの種族よりも強く、高貴な種族です、特に一部の獣人はドラゴンを神の様に扱います。」
「そして人間は「神」の存在をその目で見ていると。」
「ええ、神モート様は滅多にお目にかかれませんが・・・女神アイトネ様は・・・」
「うむ、王都で見かけるらしいのぅ。」
「はい、これ以上の抑制力はありません、何か有れば妖精や軍隊蜂がドラゴンと兵士を呼び、あっという間に制圧されます。」
 フッと笑みを零すエイダンは立ち上がり外を見つめる。

「王国の貴族も『聖女チハル』の存在に畏怖を感じておる、だからこそ・・・おとなしくしておる所がある。」
 エイダンは呟く、いつも元気に、楽しく、呑気に動き回る千春を思い出しながら。

「チハルの存在は大きい、他の聖女もな、『今だけの平和』ではなく、これからも続けなくてはならぬ。」
 思いつめる様に呟く、しかしエイダンの目は優しく微笑んでいる。

「今回、チハル王女殿下がインゴール侯爵領へ行かれたのは僥倖でございました。」
「うむ、たまーーーーーーに面倒事を持ってくるが、チハルが動けば良い方へ転がる、これも女神の采配かのう。」
 呑気に笑う千春、そしていつも何かを嬉し気に食べている女神を思い出し、エイダンは思わず笑う。

「ルーカス。」
「はい。」
「エンハルトが次に行く領の候補を出しておけ。」
「はっ、問題がありそうな領の方が宜しいですか?」
「そうじゃな、次もチハルが行くとは限らんが・・・珍しい食材がある領が良いじゃろうな。」
 エイダンは笑いながら言う、勿論無理して行かせるつもりはないが、千春が『行きたい』と言うような情報を流せばと、淡い期待を持つエイダンだった。


-------------------------


「・・・えっぶし!!!」
「大丈夫か?チハル。」
 急にくしゃみをする千春にエンハルトが声を掛ける。

「んー、だいじょぶー・・・だれかうわさしてんのかなぁ。」
「チハルの所は噂をされるとくしゃみをするのか?」
「こっちは言わない?」
「言わないな、噂でくしゃみをするならチハルは一日中くしゃみしてるだろ。」
「えー、そんなに噂されてるの?私。」
「されてると思うぞ?」
「・・・嫌だなそれ。」
 ハンカチで鼻を拭きながら呟く千春は、王都の人達を思い出す。

「いい噂ならいいけどなぁ・・・」




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