異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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連載

戦闘侍女の底力!

 エイヒムはミシェールと向かい合う侍女たちを静かに見つめた。
 前に立つのはモリアンとサリナ。その後方にはナッテリーとトーテル、さらに左右を固めるようにサフィーナとクーネスが立つ。
 六人――まるで戦場で鍛え上げられた兵の布陣だった。

「剣は持たないのか?」
 エイヒムが尋ねる。

「女相手に持てるわけがありませんよ、お爺様。」
 ミシェールは軽く笑い、侍女たちを見やった。

「――始め!」
 エイヒムの合図と同時に、モリアンとサリナが一瞬で飛び出す。
 その速さにミシェールはわずかに目を見張ったが、迫る拳を手で払い、足を狙うサリナの蹴りを軽やかにかわす。二人はすぐに左右へ散開――しかし次の瞬間、ナッテリーが目前に躍り出た。

「速いな!」
 ミシェールはナッテリーの拳を上に跳ね上げ、空いた腹を狙う。だが横合いからの攻撃気配を察し、すぐにバックステップで距離を取った。

「・・・特殊部隊出身か。」
 その身のこなしにミシェールが低く呟く。
 背後の気配に反応し、回し蹴りを放つ。鋭い蹴りはトーテルの腹を捉え、トーテルは横へ吹き飛んだ。

「トーテル!」
 千春が思わず叫ぶ。しかしトーテルはすぐに立ち上がり、再び構えを取る。
 その間にも、モリアン・ナッテリー・サリナが連携して猛攻を仕掛けた。

 千春は横目で動きを見守るサフィーナとクーネスに目を向ける。

「サフィーとクーネス姉さま、動かないけど……?」
「ああ、もうすぐ動くだろう。」
 隣のエンハルトが答える。

「全員で行かないの?」
「同時に攻撃できるのはせいぜい三人だ。動き回るモリーやサリナ、ナッテリーの邪魔になる。」
「そうなんだ・・・」
 千春は頷き、息をのんで戦況を見守る。

「フッ!」
 モリアンが地を蹴る。死角からの一撃・・・だがミシェールはその動きを読み切り、掴んだ腕をひねり投げる。モリアンは体を捻って自らの力で着地。次の瞬間、ミシェールの身体が吹き飛んだ。

「くっ!!!」
 サフィーナの拳が顔面をとらえていた。いつの間にか距離を詰めていたのだ。
 ミシェールは体勢を崩さず踏ん張るが、背後からの蹴りが追撃する・・・クーネスだ。

「・・・これは手加減できないな。」
 ミシェールが呟くと、再びモリアンとサリナが突撃する。

「すまん。」
 小さく漏れた声とともに、ミシェールの反撃が始まった。
 モリアンの拳を紙一重で避け、腹部へ一撃。続けざまにサリナの攻撃を躱し、蹴りを叩き込む。サリナは腕を交差させて受けるが、衝撃に耐えきれず地面に倒れた。

 息を乱さぬミシェールを前に、ナッテリーとトーテルが左右から同時に攻めかかる。
 しかし、その全てをギリギリで見切り、逆に反撃を浴びせるミシェール。確実に攻撃の精度と威圧が増していく。

「ナッテリー、トーテル、下がりなさい。」
「「はっ!」」
 サフィーナの号令に、二人は素早く後退した。

「もう良いのか?」
 ミシェールが問う。

「ええ。二人では、あなたの隙を作れないようなので。」
「・・・チッ、こっちの方が面倒だな。」
 サフィーナとクーネスが並び立つ。次の瞬間、二人の姿が掻き消えた。

 高速で迫る二人の攻撃に、ミシェールは防御と反撃を繰り返す。だが押される一方だ。
 サフィーナの拳、クーネスの蹴り。間髪入れぬ連携が、確実にダメージを重ねていく。

「お前ら・・・連携取りすぎだろ!!!」
 叫ぶミシェールの顔面に拳が、そして背に蹴りが同時に入る。
 大きな音を立てて壁まで吹き飛んだ。

「そこまで!」
 エイヒムの声が響く。
 一瞬の静寂・・・そして。

「やったー!!!」
「サフィーちゃんすごーい!」
「クーネス姉さますっげー!」
 聖女たちの歓声が一斉に上がる。

「みんな大丈夫!?治療するから集まって!」
「モリーちゃん!大丈夫?」

 千春が駆け寄る中、侍女たちは笑顔で頷き合った。
 その光景に、エイヒムも思わず口元をほころばせる。

「さすがにこれは無理だ。」
「だろうな、俺でもこの2人相手は自信ない。」
 ダメージを受けているはずのミシェールは何も無かったように歩いてエンハルトに話しかける、エンハルトも当たり前の様に言葉を返す。

「ミシェールさん、治療しますね。」
「ありがとう。」
 千春はミシェールに回復を掛ける、それ以上にダメージを受けた侍女達には頼子達が回復をかけていた。

「どうでした?うちの侍女たち♪」
「・・・侍女じゃないだろ。」
「侍女ですよ♪」
「特殊部隊だろ。」
「えーっと、特殊部隊じゃないのって誰か居たっけ?」
 千春が言うと、トーテルとクーネスが手を上げる。

「私は違います。」
 トーテルが言うと、クーネスも答える。

「私も違いますわ。」
「うん、トーテルは騎士貴族で、クーネス姉さまは・・・特殊部隊断ったんだっけ。」
「クーネス・トグラムか、強いわけだ。」
 呟くミシェール、クーネスはニッコリ微笑む。

「スイーツバイキングですぅ!!!」
 元気になったモリアンが叫ぶと、ミシェールが千春に問いかける。

「すいーつばいきんぐとは何だ?」
「美味しいお菓子が食べ放題のお店ですよ、ミシェールさんも行きます?」
「良いのか?」
「良いですよ、次は大変でしょうけど♪」
 千春はそう言うと、準備運動を始めたルプ達を見る。

「狼獣人に子供が2人、女性が1人に・・・猿?」
 ルプ、ビェリー、コン、ロイロ、そして子ザルを見てミシェールが呟く。

「うちの護衛です♪」
「だろうな、気迫が違う・・・エイヒムお爺様以上だ。」
 ミシェールの額に汗が流れる。

「わかるんです?」
「ああ、だが、これだけの相手と試合が出来るのは楽しみだな。」
「怖くないんです?」
「ダンジョンで出会えば逃げるが、ここには聖女が居る、死ななければ大丈夫だろう。」
「死んでもワンチャン生き返らせるから♪」
 軽く答える千春、するとルプ達はジャンケンを始めた、ワイワイと騒ぐペット達、そして・・・

「わっちが1番ばーい♪」
 ビェリーは子供の姿でピョンピョンと飛び跳ねる、頼子は我が子を見るように話しかける。

「ビェリー、その姿でやるの?」
「どっちがよかかいな?」
「戦いやすい方でよくない?」
「んじゃこっちばいね♪」
 ビェリーはそう言うと人化を解く、そして巨大な白蛇に変わった。

「おい。」
 ミシェールはエンハルトに話しかける。

「言いたい事はわかる、まぁ死ぬなよ。」
「・・・嘘だろぉ、気迫が倍増したぞ。」
「まぁビェリーはあっちの土地神だからな。」
「今何と言った?」
「あっちの土地神だ。」
「あっち?」
「ああ、それも後で教えるよ。」
「神なのか?」
「こっちだと・・・聖獣・・・いや、神獣だな。」
「・・・俺死んだわ。」
 自分の背よりも上から見下ろす視線、ビェリーはちょろりと舌を出しながらニヤリと笑った。



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