異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

文字の大きさ
908 / 1,139
連載

村人の治療っ!

しおりを挟む
 千春たちはお婆さんに案内されて、教会の横に建つ家の扉をくぐった、部屋の中は広く、壁際に簡易ベッドが並んでいて、十人ほどの男たちが横たわっている、痛々しい包帯が巻かれ、傷口から血がにじむ者もいる、中には腕や足が失われた者までいて、その姿を目にした千春たちは思わず息を呑んだ。

「・・・っ。」
 頼子が小さく声を漏らす。

「酷いね・・・」
「どんだけ暴れたんだろ、猿の魔物。」
 麗奈と美桜も眉をひそめる、そのとき、お婆さんに気づいた教会の男が駆け寄ってきた、教会の服を着た若い男で、顔には疲労が滲んでいる。

「お婆さん、どうされました?急患でも?」
「いやね、治療ができる子たちを連れてきたんだよ」
「えっ・・・?」
 教会の男の目が千春たちへ向けられる。

「この子たちが?」
「そうだよ、あんたたちだけじゃ治療が追いつかないだろう?少しでも助けになればと思ってね。」
「・・・ありがとうございます、僕はこの村司祭をしています、ディオンといいます、どうぞよろしくお願いします。」
 千春たちは小さく会釈を返すと、怪我人の間を縫うように歩き始めた、サフィーナとクーネスは布を巻かれた傷口を確かめ、治療の準備している、千春は、ふと腕のない男性の横に腰を下ろした。

「大丈夫ですか?」
 声をかけると、男性は苦笑いを浮かべた。

「痛みは取ってもらったからな。あとは、こうして寝てるだけだ」
 千春はゆっくりと頷き、男性の肩に視線を落とした。

「腕、生やしますね。ただ、急に腕が戻るので、体力めちゃくちゃ持って行かれるんですよ」
「・・・腕が、戻るのか?」
 男性は目を丸くし、信じられないという表情を浮かべた、その横で頼子が不安そうに声をかける。

「MP大丈夫なの?千春。」
 千春は笑って、アイトネに問いかけた。

「アイトネ、MP増えたんだよね?」
『ええ。腕の二、三本なら問題ないわ。』
「だってさ。」
 千春は頼子に向き直り、ニッと笑った。

「心配ないって、慣れてるし。」
 そして再び男性の方を向いた。男性は不安そうに千春を見上げている。

「そんな顔しなくても大丈夫ですよん♪初めてじゃ無いんで♪」
 そう言うと、千春は男性の肩に手を置き、ゆっくりと魔力を練った、青白い光が彼女の手のひらに集まり、男性の肩口へと流れ込んでいく。

「ヒール。」
 その一言と同時に、失われた腕の付け根がわずかに蠢き、肉が盛り上がり始めた、血が出ることもなく、みるみるうちに腕が形作られていく、男性は息を呑み、痛みもないのか、ただただ自分の腕が再生されるのをじっと見つめていた。

「す、すげぇ・・・」
 周囲で寝ていた他の男たちも目を見張り、次々に声を上げた。

「おい、見ろよ・・・」
「腕が・・・生えてきやがった・・・!」
 ディオンも呆然としたように千春の手元を見つめている。

「・・・これは・・・奇跡だ・・・」
 千春は笑顔を浮かべ、腕が完全に生えそろうのを見届けると、ゆっくりと手を離した。

「はい、元通り、しばらくは安静にしていてくださいね♪」
 男性は目を見開き、震える声で言った。

「・・・ありがとう・・・!本当に、ありがとう・・・!」

 千春は笑顔のままうなずくと、隣で見ていた頼子に向かって親指を立てた。
「MP、大丈夫だったよ!」
「・・・いやぁもう凄いわ、流石神聖女だわ。」
 その横で、美桜達も治癒の魔法を施し始めていた。光が次々と怪我人を包み込み、静まり返っていた部屋に希望の色が差し込む。
 ディオンは感極まった様子で千春たちに深く頭を下げた。

「本当に・・・感謝してもしきれません、どうか・・・どうか、皆を助けてください・・・!」
 千春はディオンを見て、小さく笑った。

「任せてください。少しでも力になれれば、嬉しいですから」
 そう言うと、再び別の患者のもとへと足を運んでいった。


--------------------------------


「お嬢ちゃん達、ありがとう、俺はイェンスだ。」
「千春って言います♪」
「頼子で~す♪」
「美桜で~す♪」
「麗奈で~す♪」
「え?なにその流れ・・・青空で~す♪」
「え?続けんの?大愛で~す♪」
「日葵です。」
「花音です。」
「ヒマリ、カノンずるくね?」
「なにがよ、自己紹介にずるいもなにもないっしょ?」
 自己紹介だけで騒ぎ始める少女達を見て、男達の顔が綻ぶ、そしてイェンスが千春に問いかける。

「チハルちゃん、君達は何者なんだい?昔、街の治療もして貰ったことがあるが、なくなった腕を元に戻すなんて、教会の高位な人でも無理だったぞ?」
「そうです、お願いした手前、このような言い様は失礼かとおもいますが・・・異常です、チハル様、いったい・・・。」
 イェンスの言葉に続けて言う司祭ディオン、千春はチラッとエンハルトを見ると頷いている、それを確認し千春は答える。

「別の大陸から来た聖女軍団で~す♪」
 キャピっと言わんばかりに目にピースした指を当てる千春。

「何そのポーズ。」
 思わず突っ込む頼子。

「いや、こっちだとさ、ちょっとはっちゃけても怒られないかなって。」
「あー、そう言われたらそうだね、王女とか貴族関係なさそうだし。」
 千春と頼子の言葉を聞き、男達の空気が変わる。

「お・・・おうじょ・・・?」
「いや、その前に聖女様だと!?」
 男達が騒めくが、千春達は慣れたもので、ニコニコと微笑み返す。

「ま、大陸違いますし♪」
「チハル。」
「なに?ハルト。」
「大陸が違っても問題あるぞ。」
「そうなの?」
「ああ、しかもお前聖女の上の神聖女だろ?」
「それは言わなきゃわからない!」
「それはそうだが・・・。」
「まぁまぁ、とりあえず治療終わったし・・・おわりですよね?」
 場を納める花音はディオンを見ると、呆けた顔で頷く。

「んじゃ次は鳥だね。」
 青空は嬉しそうに言うと、大愛も頷く。

「一狩り行っとく?」
「なに、モンスター狩る言い方してんのさ。」
「魔物じゃ無いの?」
「普通に鳥でしょ。」
「デカいダチョウだっけ?」
「ダチョウはデカいっしょ。」
「名前なんだっけ。」
「あ~・・・えっと・・・クル・・・なんとか、チハルなんだっけ。」
「クルゥトクだよ。」
「それそれ。」
 聖女達の話を聞いていたイェンスが話しかける。

「聖女様達はクルゥトクを狩に行かれるのですか?」
「はい♪何か知ってます?」
「ああ、西の平原の先にある水辺の近くに、幾つかの群れがある。」
「おお!情報ゲットだぜー!」
「だが。」
「・・・だが?」
「最近魔物も増えている。」
「えぇ~?また魔物ぉ?」
「ああ、俺達がやられた猿の魔物、あの魔物が森のバランスを崩した、森の魔物が溢れて平原にまで現れてきたんだ。」
「マジで?」
 千春は面倒そうに呟くと、ルプが話しかける。

「魔物ごと狩れば良いだろ?」
「そうばい、誤差ばい誤差♪」
 ルプが言うと、ビェリーも頷く。

「・・・ちなみにその魔物って何の魔物です?」
「色々だ、特に大型なのは虎や熊だな。」
「・・・熊は食べれるけど虎って食べれるのかな。」
 千春の言葉を聞き、ベッドに腰掛けた男達が一斉に千春を見る、信じられないと言わんばかりに目を見開きながら。

「く・・・食うのか?アレを。」
「その前に倒すのは無理だろ。」
「大きな罠でも作れば・・・いや、相当な罠を作らないと無理だ。」
 男達はどうやれば虎の魔物を倒せるか考え始めるが、千春は気にせず頼子達と話す。

「とりあえず狩っとく?」
「持って帰れば冒険者のギルマスさん喜ぶじゃん?」
「虎と熊は状態良ければ商業ギルドも喜ぶよ。」
「んじゃ、ついでに狩りますかね、ルプいけるよね?」
「余裕。」
「ビェリー、沢山いたら頼むね♪」
「まかせり~♪」
「コンちゃん、今回は暴れれるみたいよ。」
「はい!ミオがんばります!」
 狩る気満々の聖女とペット達、男達は先程まで治療を必死で行い、後光が見えるほど輝いて見えた聖女達を見つめる、少女達の後ろに立つ護衛の男達は確かに強そうだ、しかし人の手に負える物ではないと思っている男達は不安そうに呟く。

「護衛の貴方、本当に行くのか?」
 イェンスはエーデルに呟くように話しかける。

「ああ、聖女が行くと言えば行く。」
「だが・・・。」
「問題無い、ドラゴンでも倒せるからな。」
「ど!?ドラゴンでも!?」
「ああ、心配しなくても大丈夫だ。」
 千春達を心底心配しているイェンスにエーデルは笑い掛ける。

「さ!それじゃ行ってきますので皆さん安静にしてくださいねー♪」
 千春は治療が終わった男達に手を振る、男達は再度お礼を言うと、聖女達は教会を出て行く、すると後ろからディオンが走って来た。

「聖女様!お待ちください!」
 ディオンは呆けた状態から意識を取り戻し、急いで千春達を追いかけてきた。

「はい?」
「またこの村に来られますか!?」
「・・・さぁ?」
「是非!是非お越しください!お礼をさせていただきたく!」
「あー・・・これたら来ます♪」
 千春は軽く答えると、箒を取り出す。

「んじゃ行こかー♪」
「まった!チハル!」
「なに?ミオ。」
「トイレ!」
「私も!」
「うちもいきたい!」
「・・・ディオンさん、トイレあります?」
「はい!此方で御座います!」
 皆はディオンに案内され、教会のトイレで用を足す、そして改めて外に出ると、あっという間に飛び立ち消えて行った。






しおりを挟む
感想 3,755

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。