異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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連載

ストーノクの食改革!

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「チハル、これみてー。」
 大愛はおにぎりを食べながら千春に買った物を見せる。

「なにこれ。」
 千春は木で彫られた像を受け取る、精巧に掘られ、女性の姿だというのが分る。

「これ、神女ウィステル様像なんだってさ。」
「へぇ~、さすが神様、木像もあるんだね。」
「へ~って、チハルじゃんコレ。」
「私では無いよ、ウィステルはウィステル、私は私だもん♪」
 そう言うと、千春はおにぎりを口に入れる。

「千春も作られるんじゃない?」
「なにを?」
「木像。」
「えぇ~?マジでー?」
「だって神聖女じゃん?」
「・・・」
 頼子に言われ、千春はウィステルの像を見る、そして視線が止まる、頼子も千春の見ている場所に気付いた。

「・・・でかいね。」
「・・・うん、でかいね。」
 千春が言うと、頼子も頷く、ウィステルの像の胸を見ながら呟く2人。

「チハルの像作ってもらう時大きくしてもらったら?」
 青空はケラケラ笑いながら言うと、美桜が言う。

「チハルのアイデンティティが無くなるじゃん。」
「ちょっと?ミオさん?どういう意味かな?」
「チハル!目がマジなのやめてくんない!?」
「まぁまぁ、他にも色々売ってたよ、見に行かない?」
 話を逸らす麗奈、千春は頷き、残りのおにぎりを口に入れる。

「うん、美味しかった、ストーノク王国の米は美味しかった。」
「これでこの国も米食になるのかな。」
「ジブラロールは米普及したよねー。」
「でもパンの方が多いじゃん?」
「ジブラロールのパン美味しいからね。」
「ねぇ千春、こっちもパンの作り方教えるの?」
 頼子の言葉に千春は頷く。

「そのつもりだよ、商業ギルドが別らしいから、ママさんズに丸投げしちゃったけど。」
 千春が答えると、頼子も頷き答える。

「お母さんとセレスティア王妃様が商業ギルドと話しするって言ってたから、そこで教えるんじゃない?」
「あー、言ってたね、またチハルの資産増えるじゃん?」
「増えたらストーノク王国に使うよ♪ウィステルの故郷だからね~♪」
 千春達が話していると、店主が千春に話しかける。

「お嬢ちゃん・・・何者なんだ?」
 神女ウィステルを呼び捨てにし、ストーノク王国の王妃の名前を呼ぶ、そして美味しい米の食べ方を知る少女、すると千春はニコっと微笑む。

「ただの一般人ですよ♪」
「チハル、それは無理があるよ。」
「ふっ・・・知らない方がいい事も有るのですよ。」
「それ言ってみたいだけでしょ。」
「んなこた~ない。」
 千春達は楽しそうに話す、すると店主が再度問いかける。

「で?何者なんだい?」
「えっと、遠くの王女で聖女で、ウィステルの生まれ変わりです。」
「・・・はぁ・・・へ?」
 店主は声が裏返りながら口をポカンと開けたまま止まる。

「あ、止まった。」
「次期王妃で女神と友達が抜けてね?」
「ペットに聖獣2人いるってのは?」
 青空達が言うと、ゆっくりと首を動かす店主、そして「ほんとうに?」というと、青空達はコクリと頷く。

「も・・・もうしわけありませんでしたああ!!」
 テーブルに頭をこすりつけながら謝罪する店主。

「いやいや、何も悪い事してないじゃないですか。」
「無礼な口をききましたああ!」
「あ、そっちの方がうれしいんで♪」
 千春が言うと、頭を上げる店主、そして。

「おれ・・・私はヴォルテールともうします!」
 店主は名前を言いもう一度頭を下げる。

「・・・カッコいい名前だ。」
「米屋なのに・・・」
「いや、餌屋だよ。」
「なおさらだよ。」
「ちょっと、あんたら店と名前は関係ないっしょ。」
 麗奈、青空、大愛、美桜に突っ込む花音。

「ま、気にしないで下さい♪お米美味しかったです♪」
「あ、ありがとうございます!なにかお礼が出来れば!!!」
「いやいや、そんな・・・あ!そうだ!お米をお城に届けてもらえます?」
「・・・米をですか?」
「はい♪今お米好きな人達が来てるんで、主食になると思うんですよ。」
「わかりました!お城へ贈らせて頂きます!」
「あ、ちゃんとお金払いますから♪」
 そして千春は紙を取り出し、メモを書き始める。

「千春、何書いてんの?」
「ん、米の炊き方。」
 千春はストーノク王国で使われている文字で、サラサラと字を書く、そしてヴォルテールに渡す。

「はい!お米の炊き方♪あと、その魔導精米機、精米君まーくつーは使ってください。」
「え!?宜しいのですか?!」
「はい♪言えば手に入るんで♪」
 千春は立ち上がり、炊飯ジャーをアイテムボックスに入れる。

「炊飯ジャーはあげないんだ。」
「うん、だから炊き方は教えたの、それに他の人に勧める時、炊き方教えないとじゃん?炊飯ジャーだと『ぽちっ』で終わるし。」
「確かに。」
「それじゃ王都探索再開しましょー!」
「「「おー!」」」
 立ち上がる聖女達、サフィーナ達を連れ店の外に出ると、ヴォルテールは店の外まで千春達を見送る。

「ありがとう、えっと・・・。」
「チハルです!ヴォルテールさん♪」
「チハル様、ありがとうございました。」
「いえいえ~♪お米お願いしますねー♪」
「はい!お届けさせて頂きます!」
 ヴォルテールの返事を聞き千春はニパッと微笑み手を振り、歩いて行く、ヴォルテールはその後ろ姿が見えなくなるまで千春達を見つめた。

「おい、ヴォル、何してるんだ?」
 隣の店から声を掛けて来る野太い声。

「ああ、今・・・えっと、言って良いのか?これ。」
「なにがだ?」
「いや・・・その、あ!そうだ!ムリッジ!ちょっと来てくれ!」
「なんだなんだ?」
 ムリッジと呼ばれた隣の店主の手を掴み、店の奥に連れて行くヴォルテール、そして、皿に乗せられ、上から透明のシートが掛かったおにぎりを見せる。

「ん?なんだこれ。」
 ムリッジはラップを手に取り不思議そうに見る。

「そっちじゃねえ!こっちだ!」
 おにぎりを掴み、ムリッジに渡すヴォルテール。

「食ってみろ。」
「なんだこれ。」
「米だ。」
「は!?食えるかそんなもの!」
「騙されたと思って食ってくれ。」
「・・・お前がそう言うなら食うけどよ、どれ。」
 そう言うとムリッジはおにぎりを一口食べる、そして目を見開きヴォルテールを見る、ヴォルテールはうんうんと頷き満足そうだ、そしてムリッジはそのまま食べ続け、中に入った具を見てさらに驚く、そしてあっという間におにぎりを完食してしまった。

「これが・・・米だと?」
「ああ!米だ!あの方は『ごはん』っていってたけどな。」
「ごはん?」
「ああ、ごはんだ・・・はっ!こんなことしてる場合じゃ無かった!」
「おいおい!どうした?!」
「米を準備しなくては!」
「何のだよ。」
「城にお届けするんだよ!」
「はぁ!?米をか!?」
「ああ!米をだ!忙しくなるぞおお!!!」
 ヴォルテールは、空を見上げて微笑んだ。
 香ばしく炊き上がる米の香りが、こんなにも人を笑顔にするとは。
 王都の台所を変える日が来るのかもしれない。
 ストーノクに、あたたかな食の風が吹き始めていた。







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