悪役令嬢になりましたので、自分好みのイケメン近衛騎士団を作ることにしました

葉月キツネ

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新たなる始まり

第274話-目覚めたら-

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 空気には匂いがある。果たしてそれが本当に空気の匂いなのか、はたまたその周りの環境の匂いなのか。
 私としては両方とも正しいと思う。
 なぜ私がこんな哲学的な事を考えているのか。それは今現在私の目覚めかけた意識の中で一番はっきりとしているのがこの空気に混じる木々の匂いだからだ。
 水々しく、澄んだ空気と思われるいい匂いが私を優しく包んでいる。
 目を開けるとずっと目を瞑っていたせいか視界がぼやけている。
 それでも分かるのは外であるという事。明らかに自宅ではない。テレビもなければパソコンもない。あるのは緑を纏った木々達。生い茂った葉の隙間から差し込む日光が幻想的だ。

「綺麗……」

 自然のままで人の手が介入していないように思えるそんな土地は日本にどのくらいあるだろうか。少なくともそんな所までは行った事ない。
 ここまできてようやく意識がはっきりしてきた。いや、ある程度ははっきりしていたけど、誤魔化していただけだ。
 明らかに異常。最後の記憶は自宅のはずだ。急な睡魔に襲われて横になったのは覚えている。

「目が覚めましたか」

 私に向けられたその言葉。私はやはり眠っていたらしい。しかも外で。
 いやそれよりも声だ。この声は聞いた覚えがある。最後に聞いたのはいつだったか。もう半年以上前じゃないか。

「質問させて頂きますね。貴方は私が分かりますか?」

 質問の主は私の横にいた。寝そべる形の私を上から見るような体勢で。
 視線を質問の主に向けた。
 髪型は変わっている。話し方も落ち着いた様に思えるけど、彼女は前の時もいつも落ち着いていたと思う。少なくともアンよりも。

「ユリィ……よね?」
「はい。と言うことは前に私と会っている人ですよね」
「そう。直接じゃないけど……雰囲気変わったね」

 その姿は私の知っている時よりも大人になっていた。

「前の私の願いが叶ってからもう五年ですから」
「これって夢かな」
「現実です。そして聞きますね。時間が巻き戻る事が昔ありました。それを止めてくれたのは貴方であってますか?」

 そんな魔法みたいなことあるだろうか。いや、あった事を知っている。

「そうだよ。私が止めた」
「そうですか。そしたら成功ですね。私の魔法も少しは成長しているようですね」
「ねぇ。私は誰か分かる?」
「すみません。呼んで失礼ですが名前は分かりません。ただ、少なくとも私にとっては一縷の希望です。さぁ、起きてください。ゆっくり座ってお話しさせてもらいたいので」
「そうだね。私も」

 私は望んでいた世界にまた来れた。
 そしてユリィと再会した。
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