恋喰らい 序

葉月キツネ

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プロローグ

前園奏の悩み

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「奏ちゃんの恋の話とか聞いてみたい!聞かせて聞かせて!」
 私の前には無邪気な顔で話しの催促をしてくる友人がお弁当をほおばりながらいた。
 18歳にしては少しお転婆な友人、そもそも女子高自体にこういった子は少なく、どちらかといえばおとなしい子が多い、その中でも私は寡黙なタイプだった。
 しかし、磁石のSとNのように正反対な2人だったからこそ馬が合いこうしてお昼を3年間一緒に食べるくらいには親友となっていた。
「私はあまりそういうの興味ないから…」
「本当に?すっごいモテるのに!もったいないなぁ」
 18歳女子学生というとやはり恋の話は定番で大好物だ、私たち以外でもそんな話をしているのがちらほらと聞こえてくる。6月は梅雨で嫌な気分になりがちな時期ではあるが、超えたら夏がやってくる、夏はうちの学校でもカップルが成立する確率が高い時期である勝負を掛けている子も多いのが現状だ。
 そんな話が飛び交う中で彼女が恋愛話をしだすのは自然なことだ。
「他校からでも人気のある奏ちゃんだよ。そんな高嶺の花に認められた男の子!ってすごい気になるじゃん!御願いちょっとだけでいいから!」
 彼女は押しが強いが彼女の押しは嫌いではない。なぜなら本当に嫌な時は察して身を引いてくれるからだ。ただ今回はあまり身を引いてくれないのは、本当に気になって仕方ないのだと思った。
「じ、じゃあちょっとだけね。その変わり絶対内緒の話ね」
「ありがとう!私口堅いから安心してよ!」
 彼女にはいつもお世話になっているし、そんな親友の御願いを無下にすることはできなかった。
 しかも彼女はこう見えて本当に口が堅いことを3年間を通じて知っていた。
「私の初恋は小学生の頃でね・・・」
 このことを話すのは彼女が初めてだった。
自分の嫌な思い出など人に話すことはなかったから。私の経験した恋愛はみんな初恋と同じ運命を辿っていた。だからこの話題はあまり好きではなかった。
「えっ…なにそれ最低じゃん」
 いつも笑顔の彼女の眉間に皺が寄っているのを初めて見た。苦手な茄子を食べるときでもこんな顔はしなかった。
「私の恋バナっていうとこんなのばっかりだから…」
「奏ちゃん男運悪いのかなぁ、それとも男癖?」
「どっちもかも」
 笑ってごまかす。彼女も笑って「かもね」と返してくる。
 こんな話題あとでも暗くならず、次の話に行ってくれる彼女は本当にすごいと思う。
「モテモテ奏ちゃんにもそんなことがあったんだねー。きっと生徒会長とか運動部のキャプテンみたいなイケメンと付き合ってると思ってたのになぁ」
 告白されたことはあっても、次の日にフラれている。
「だから私は恋愛っていうのに興味がなくて…すぐフラれちゃうのが悩みかな。みんな思ってたイメージと私は違うみたい」
「あぁ私も一度でいいからモテてみたいなぁ、でも奏ちゃんはそんなにイメージ違うことはにけどなぁ。男の子のイメージがおかしいんじゃないかな」
 彼女は明るく元気で顔だちも幼く見えて可愛いタイプだ。
 噂では彼女もモテているのだが性格的に友達で収まることが多いらしい灯台下暗しなのかもしれない。
 彼女の励ましは暖かった、こういった子が本来モテるべきだ。
「でもこれからは人生は長いんだしきっといい人見つかるよ!困ったときとかはいつでも相談してきてね!」
 彼女の言葉は力強く私に元気をくれた。
 それでも今の私はもう男性を信じることができない思考になっていた。




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