彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

6章・学校

066・このプレッシャー、どこかで感じた事が！？

「......感謝か。正直あの時、キミの危機を知っても助けるかどうか
迷った身としてはキミにそこまでの感謝をうけるのは、ちょっと気が
咎めるというか、気が引けるというか...なので感謝の言葉は別にいら
ない――――」

「―――いいえ！感謝させて下さいっ！あなたの考えはどうであれど、
結果私を助けてたという事実は間違いありませんから！もしあのまま
事が進んでいたら、きっと...いいえ、絶対に取り返しのつかない事に
なっていたと思いますっ！で、ですから......っ！！」

迷った上の偶々の行動だから感謝はやめてと口にするが、しかし女子
生徒は真剣な眼差しと表情で俺の顔をジット見つめ、それでもと感謝と
思いの込もった強き言葉俺に伝えてくる。

そんな女子生徒の感謝を無下する事のは野暮と考え直し、

「あはは。分かりました。ではキミの感謝の言葉。素直に受け取って
置くとしますねっ！」

俺はテレを見せつつ、女子生徒の感謝を素直に受け取る事にした。

「ふう。良かったです、感謝の言葉を受け取ってくれてっ！」

そんな俺の返答を聞き、女子生徒はホッとした屈託のない笑顔を返す。

「所で光野君？そ、その...ちょっと気になった事があるんだけど...」

「ん？気になった事？」

「う、うん。えっと...さっきから私の事を名前で呼んでいませんよね？」

「え？」

「も、もしかしてと思いますが...わ、私の名前を知らない...とか？」

女子生徒は少し戸惑った口調で「そんな事ないよね！？」と言わん
表情で俺の顔を見てくる。

「あ、あはは！い、いやだなぁ～！も、勿論、知ってますよ！お、同じ
クラスメイトの名前だよ！い、一年近くも一緒だったクラスメイトの
名前を知らないだなんて事、んな事ある訳ないじゃないですかっ！」

「で、ですよねぇ♪」

「そうそう！あは...あははは♪」

......スマン、名も知らない女子生徒よ。

俺はクラスに全く馴染みも馴染めていない陰キャラなのだよ。

そんな俺がクラスメイトの事は勿論の事、

陽キャラやクラスのカーストトップの事なんぞ知る訳がないし、
正直いって興味もないのだよ。

大体あいつら。

例え話し掛けたとしても、話し掛けてくんじゃねえよオーラを
露骨に出してきやがるからな。

女子はそれに付け加え、蔑む目線で見てきやがるしよ。

なのでそんな不愉快極まりない連中供の事なんぞ、覚える必要性が
ないのだよ。

そもそも覚えたくもない。

そう言う訳なので名前を知らなくてスイマセンと、色んな感情の
入り混ざった表情を見せつつ、確実にクラスの上位カーストに
入っているであろう、目の前にいる女子生徒に心の中で頭を
下げて謝罪する。

「――んん？光野君のその表情......なんか怪しいなぁ。ホントに
私の名前...知っているの？」

すると俺の表情が疑わしかったのか、女子生徒が少し威圧感の
込もったジト目で、こっちをジロリと睨んでくる。

「うえ！？そ、そそ、それは勿論......と、と、当然ですよっ！さっきも
言ったけど、一年も一緒だったクラスメイトの名前を忘れる訳ないじゃ
ないですか～っ！」

「ふぅ～ん。じゃあさ、私の名前言ってみてよ♪」

「はひぃぃいっ！？！？」

な、なな、何なの！？

あ、あの笑顔の奥に見え隠れするプレッシャーはっ！？

怒ってますオーラが溢れ出てて

めっちゃ怖いんですけどぉぉぉおぉおっ！？

ど、どうしてそんなに怒ってるのかなキミ！？

大体キミの名前、知らなくて当然だよね？

だって俺達、今の今まで殆ど会話らしい会話なんてしてこな
かったじゃん！

「だ、だがしかし......」

この子の名前をもし間違えでもしようものならヤバイ事になると、
俺の直感が注意喚起してきやがるっ！

「そ、そういえばこのプレッシャー、どこかで感じた事が―――」



―――ハッ！？



あああああっ！！？

お、思い出したぁぁぁあぁああっ！！？

こ、このプレッシャーッ！

あっちの世界で時々見せていた勇者仲間達あいつらのあのプレッシャーと
おんなじだぁぁぁああっ！！？

「おや？どうしたんですか、光野君？やはり私の名前を知らない......とか？
う、嘘だよ......ね、光野君？私達、同じクラスメイト......だよっ？」

女子生徒の表情はニコニコ顔のままなのだが、しかし威圧感は先程よりも
更に強力となって、俺の全体を刺す様に襲い掛かってくる。

「―――は、はひぃぃいぃいっ！！？」

そんな威圧感を受けた俺は、悲鳴が口からこぼしつつ、後ろ後ろへと
退いてしまう。