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36 東方の呪い師
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彼女は不思議なひとだ、と女官の一人は言った。
なんでもできて、なんでも知っている。
気が利いていて、時にはこちらが口に出さないことまで理解してくれるのだと。
だが、別の女官は、彼女が怖いとも言った。
何もかも見透かされているようで。また、赤い血が流れていないような酷薄さを垣間見てしまうから、とも。
ルルイエが王女に聖女教育を施すようになって、半月が過ぎた。
講義は一週間のうちの五日間、毎日午前中に行われる。
その間、フェリアとジャネッタは特段することがないので、それぞれに聖女宮に馴染むことを意識して行動した結果、フェリアは女官たちに東方世界について話し、ジャネッタは護衛騎士たちに混じって訓練するのが日課となった。
ルルイエの講義の際に立ち会うのはメノウと女官が一人だけだ。女官は毎回交代で入れ替わるが、それ以外の女官たちは、王女の世話をする必要がなくなったため、手が空いた。
そんな女官たちの元に、最初の日、フェリアとジャネッタは東方から持って来たお茶と手作りの菓子を手土産に、挨拶のために顔を出した。
フェリアいわく、「少しでもルルイエ様のお仕事をやりやすくするため」の行動だったそうだ。
聖女宮の女官たちは、そんな彼女たちを歓迎した。そして、東方のことを教えてほしいとせがんだのだ。
実のところ、女官たちの方は憂さを発散する手段がなくて、いささか腐っていた。
エーリカ国内が荒れ果ててからは、旅人らもこの国を避けて通るようになった。そのせいで、城にも東方や他国からの商人らがいっさい訪れなくなったのだ。また、出入りの商人たちも国を出て行った者が多く、国が豊かだったころのように、珍しい布や装飾品を持って頻繁に訪れることもなくなっていた。
しかも彼女たちの主は、あのわがままな王女である。メノウと女官長のひそかな確執などもあって、女官たちの胸には不満がたまるばかりだった。
そんな彼女たちにとっては、東方からやって来たフェリアとジャネッタの話は珍しく、聞いているだけでもワクワクするものだったのだ。
もっとも、ジャネッタの方はすぐに女官たちの相手をするのに飽きて、宮の女性ばかりの護衛騎士の訓練に混ざるようになったのだが。
ともあれ、そんな中でフェリアが女官たちから聞きいたメノウの評判がそれだった。
ちなみに、誰も彼女の素性を不思議がっている者はいなかった。
女官たちは皆、口をそろえて言う。
「あの方は、ルルイエ様がまだ聖女の教えを受けていたころ、お傍に上がったのだとか」
「ルルイエ様が聖女だったころに、婚姻のために女官を辞めたと伺いました」
「王女様がお生まれになったころに、ちょうど子を産んで、昔聖女に仕えていたならちょうどいいだろうと、宰相様が乳母にされたのです」
では、メノウの夫や子供はどうしているのか、とフェリアが問うと、女官たちは顔を見合わせ、首をかしげるばかりになった。
「ご夫君は、亡くなられたのではなかったかしら」
「わたくしは、離縁されたと聞きましたけれど」
「そうそう、そうですわ。メノウ様があまりに王女様の養育に入れ込むので、呆れたご夫君がお子を連れて離縁した……と」
一人が言うと、別の一人が思い出したように手を打って言った。
「では、その元ご夫君はどちらに?」
フェリアが問うと、女官たちはまた首をかしげる。だが、中の一人が言った。
「たしか、お子を連れて国を出たと聞きましたわ。その……メノウ様を離縁したことで、宰相様のご不興を買ってしまったから……と。メノウ様のご夫君だった時は、宰相府の官吏でしたから」
フェリアから、そうした話を聞かされて、ルルイエは眉をひそめて考え込んだ。
話自体には、これといっておかしなところはない。
メノウが王女の乳母になったいきさつは、以前にアゼリアから聞いたものと同じだったし、よくある話ではある。ましてや、夫が宰相府の官吏だったなら、その妻が元聖女の女官で子供が生まれたばかりであるなどという情報は、宰相の耳にも入りやすいだろう。もしかしたら、夫の側が自ら宰相に話した可能性もある。
また、離縁のいきさつも、それほど奇妙な話ではないと思えた。
メノウが王女の養育に入れ込んでいたことは、アゼリアの話でも感じられたし、夫が他所の子よりも自分の子に愛情を注いでほしいと願うのも、当然のことではある。
(……でも、なぜだろう。何か妙な違和感というか……なんだか変な感じがするわ)
ルルイエは、思わず胸に呟いた。
その違和感のような妙な感じは、聖女宮で過ごすうちに次第に強くなっている気がする。
それはそれとして、もう一つ奇妙なことがあった。
宰相が東方世界から呼び寄せたという呪い師のことだ。
城内に姿がないどころか、聖女宮の女官たちは誰もその人物のことを知らなかったのだ。
呪い師については、ルルイエ自身も心に引っかかっていたが、彼女たちが城内に移る前にカルドスからももし得られるようなら情報をと言われていたものだった。
だが、フェリアが女官たちにその話をふってみても、誰もが首をかしげるばかりなのだ。ジャネッタも護衛騎士たちにさぐりを入れてみたが、こちらも同じで、誰もがきょとんとした顔をする。
いったいどういうことなのかと、情報を突き合わせてみて、彼女たちは顔を見合わせたものだ。
「そもそも、『呪い師』という呼称自体が変ですよね」
小宮での夕食後、三人だけでお茶を飲みながら言ったのは、フェリアだった。
「東方世界には、そういう呼称はありません」
「だよねぇ。ただ、わたしは西方の人たちが魔法使いのことをそう呼んでるのかなって、最初思ったんだけど」
ジャネッタがうなずいて言う。
「わたくしも、最初はそう思ったわ」
フェリアはうなずき、尋ねるようにルルイエをふり返った。
それへ少し考え込みながら、ルルイエは口を開く。
「わたくしも最初は、ジャネッタと同じように思っていました。ただ……厳密に言うと、昔の東方世界には呪術師と呼ばれる者たちがいました」
「そうなのですか?」
魔法使いであるフェリアも知らなかったのか、軽く目を見張って声を上げる。ジャネッタも、同じく目を見張った。
ルルイエは、その二人に言った。
「それは、大魔法使いアイン・ソフ・アウルが生まれるより前の時代のことだと、わたくしが読んだ歴史書には記されていました。もちろん、当時から魔法使いはいましたが、今のように等級が決められていたり、学校があったりするわけではなかったそうです。そして、その魔法使いたちの中で、呪術を専門に扱う者たちを、区別して呪術師と呼んでいたそうです」
「呪術……ということは、他者を呪う術を行うということですか?」
フェリアが問うた。
現在の東方世界では、魔法はいくつかの体系に分けられている。
たとえば、戦闘系・医療系・生活支援系といった専門性による区分だったり、火・水・土・光・闇といった魔法の属性による区分だったりだ。
そんな中、現在では秘匿されているのが、呪術――呪いによって他人を害する術だった。
もっとも、昔は名付けや召喚、精霊などの使役も全て呪術の一つとされていた。が、現在ではそれらは呪術とは切り離されて、今ある体系区分の中に組み込まれていた。
フェリアの問いに、ルルイエはうなずく。
「アイン・ソフ・アウルの出現以前は、魔法使いが呪術によって、戦争以外で人を殺めることが合法……とまでは言いませんが、ごく普通にある状態だったのです」
「では、宰相が連れて来た呪い師は、実際には呪術を使う者だった可能性もある……と?」
更に目を見張って、フェリアが問い返した。
「わかりません。呪術の多くは秘匿されているはずですが……使える者が皆無とは限りません。かつてわたくしが助けた形になったアイラのスラヴェナ様は、魔法によって肉体と魂を分けられ、魂を封じられておいででした。当時は魔法の知識がなかったので理解できませんでしたが、今ならばそれが、魔法というより呪術だったのだろうと理解できます」
ルルイエは小さくかぶりをふって言う。そして、付け加えた。
「イーリスで、魔法使いがまるで犯罪者のような扱いなのは、呪術師がいた古い時代の記憶を、慣習として受け継いでいるからなのかもしれませんね」
「ルルイエ様……」
フェリアが再び目を見張る。
その隣で、何事か考え込んでいたジャネッタが、その時つと顔を上げた。
「今のお話で、昔両親から聞いた事件を思い出しました。両親がまだ婚姻前、護衛騎士をしていた貴族のお屋敷で、番犬として飼っていた犬が盗まれる事件があったそうです。しかも犬を盗まれたのはそのお屋敷だけではなく、他の貴族の屋敷でも同じことが続いたそうで。それで、国の騎士団が調査に乗り出して、結果、盗まれた犬たちは魔法使いの呪術に使うために、殺し合いをさせられていたと判明した――と」
「その事件ならば、わたくしも覚えています」
ジャネッタの言葉に、ルルイエもうなずいた。
「たしか、その時の犯人は、『イヌガミ』という怪しげな呪術を行おうとしていたと聞きました……」
言いさして、ルルイエは眉をひそめて考え込む。
当時、まだ魔法学校の生徒だったルルイエは、親しくしていた教師の一人から、その犯人が持っていた呪術書について聞かされた覚えがあった。
呪術書は写本だったというが、その元の持ち主は事件の数年前に、朽ちたモスクの地下から呪術書を発見し、写本を作って密かに売りさばいていたのだという。だがそれは国家の知るところとなり、持ち主は捕らわれた。ただ、大臣の一人に伝手があったために死罪にはならず、国から追放されただけで終わったのだという。そして噂では、国外追放となった持ち主は、流れ流れて西方世界へ向かったとか。
(まさか……)
ルルイエの胸に、いやな考えが浮かぶ。
当時押収されたものが写本だったということは、その追放された者が原本を所持していたかもしれないということだ。
(宰相様の元にいるという呪い師は、その時の追放された者では……)
宰相が東方から呼んだ呪い師を従えている、という話は、彼女自身が国を出たあとに聞かれるようになった。つまり、時期的にはそれが、追放された写本の持ち主だったとしても、おかしくはないのだ。
とはいえ、腑に落ちないこともあるにはあった。
ある程度魔力のある魔法使いならば、そんな呪術書を見つけたら、まず自分でそこに記されている呪術を試してみようと考えるのではないか、と思うのだ。むろんそれは許されない行為だし、見つけたものはさっさと役所に届けるのが一番ではある。だがそれでも――。
(わたくしならば、記されている呪術に興味が湧くわ。……役所に届ける前に、写本を自分のために作っておこうと考えてしまうかもしれない。そう……苦労して写した写本を、他人に売ろうとは考えないわ。たとえ、どれだけお金に困っていたとしても……)
胸に呟き、ルルイエは更に眉根を寄せる。つまり、呪術書を見つけた人間は、魔法使いではないか、あるいは魔力がそこまで豊富ではない魔法使いだったということだ。自分では使うことができない書物だったので、他者に売って金を稼ごうとしたというわけだ。
ただ、その場合は、宰相が呼んだ呪い師ではない可能性が高くなる。
例の呪い師は王妃の子供たちについて予言し、王妃が亡くなること以外は当てている。だが、未来を予見するにはかなりの魔力が必要だ。大魔法使いと呼ばれる銀級魔法使いでさえ、正確に未来を予見することは難しく、呪い師の予言のように、生まれる子供の数や性別を当てるのは、ほぼ不可能に近かった。
(結局、よくわからないわね……)
低く吐息をついて、ルルイエは考えるのをやめる。そして言った。
「なんにしても、聖女宮の人たちが誰も呪い師について知らない……というか、いることすら知らないというのは、奇妙すぎますね」
「ええ」
うなずいたあと、フェリアは言った。
「ルルイエ様、次の休みにでも、一度城の外に出ませんか? カルドス殿とも話をしたいですし、城の外で呪い師について聞き込みをすれば、何かわかるかもしれません」
「そうですね。では、ジャネッタ。カルドス殿に次の休みに会えるよう、連絡を取ってもらえますか」
ルルイエはうなずくと、ジャネッタをふり返って告げる。
「わかりました」
ジャネッタは大きくうなずいた。
彼女たちがそんな相談をして数日が過ぎた。
明日は休みで、ルルイエたちは三人そろって城の外でカルドスと会おうとなった日の夜のこと。ルルイエは、メノウから食事の誘いを受けた。断る理由もなく、ルルイエは夕刻前、メノウの元から迎えに来た女官に案内されて、彼女の部屋へと向かう。
ジャネッタが護衛として同行したがったが、それは相手を警戒させるだけだと、ルルイエが断った。
メノウの部屋は、聖女宮の王女の部屋のすぐ近くにあって、大きな居間と寝室に応接室や食堂までついた立派なものだった。しかも彼女の身の回りの世話をする女官が、王女に仕える者とは別にいて、ルルイエを迎えに来たのもその女官たちの一人だった。
招き入れられた食堂も、王女の乳母とはいえ女官に与えられるものとしては豪華で広々としており、ルルイエは思わず目を見張ったものだった。
メノウは長方形のテーブルの上座、造り付けの暖炉のある側に座り、ルルイエの席はその正面で少しばかり遠い位置だった。とはいえ、主賓と客の配置としては、間違ってはいない。
「今夜はお招きいただき、ありがとう存じます」
ルルイエは席に着く前、軽くスカートの裾をつまんで挨拶した。
「いいえ。わたくしも、あなたと私的にお話ししたかったのです。かつて女官と主だったわたくしとあなたが、こうして再び顔を合わせたのも、何かの縁だと感じますもの。さ、どうぞお座りになって」
メノウは小さくかぶりをふって言うと、彼女に席を勧める。
ルルイエがうなずいて腰を下ろすと、給仕の女官らがまだ湯気の立ち昇っている料理を運んで来た。
食事中の会話はたわいのないものばかりで、メノウは特段、王女の教育の進捗などについて気にしているふうもなかった。
だが、食事も終わり、お茶が運ばれて来ると、メノウは女官たちに部屋から出て行くように命じた。
驚くルルイエを尻目に、女官たちは潮が引くかのように立ち去っていく。
あとには、メノウとルルイエが二人きりで残された。
「ルルイエ殿は……わたくしのことをずいぶんと聞き回っておいでのようですわね」
お茶を一口飲んで、メノウが微笑みながら口を開いた。
「聞きたいことがあるのでしたら、わたくしに直接質問してはいかが?」
「質問して、答えていただけるのですか?」
ルルイエは問い返す。
食事に誘われた時から、何かあるかもしれないと考えていたので、多少の心構えはできていた。
「質問にもよるけれども……たとえば、どんなことを問いたいのかしら」
肩をすくめて返すメノウを、ルルイエはまっすぐ見やった。
「あなたは、本当は何者なのですか? かつてわたくしに仕えていたと誰もが言いますが、わたくしはあなたのことをはっきり覚えてはおりません」
「あら」
問われてメノウは、クスリと笑う。そして、小さく肩をすくめると立ち上がった。ルルイエの傍まで歩み寄り、口元には笑みをたたえたまま、少しも笑っていない目で見降ろす。
「やはり、元聖女で銀級魔法使いのあなたには、わたくしの暗示は効かないようですわね」
言葉と共に、彼女は口の中で低く何事かを呟いた。
それとほぼ同時に、ルルイエは席を蹴って立ち上がっていた。同じく口の中で低く呪文を唱える。
途端、空中に一瞬の稲妻が閃き、ルルイエの席にあったカップが真っ二つに割れた。
「まさか、あなたが東方から訪れたという呪い師……なのですか?」
「あっけなく、バレてしまいましたわね」
相手を見据えて問うルルイエに、メノウは楽しげに笑いながら答える。だが、その目は相変わらず少しも笑ってはおらず――そして二人は、どちらも鋭い光を瞳に浮かべて、対峙するのだった。
なんでもできて、なんでも知っている。
気が利いていて、時にはこちらが口に出さないことまで理解してくれるのだと。
だが、別の女官は、彼女が怖いとも言った。
何もかも見透かされているようで。また、赤い血が流れていないような酷薄さを垣間見てしまうから、とも。
ルルイエが王女に聖女教育を施すようになって、半月が過ぎた。
講義は一週間のうちの五日間、毎日午前中に行われる。
その間、フェリアとジャネッタは特段することがないので、それぞれに聖女宮に馴染むことを意識して行動した結果、フェリアは女官たちに東方世界について話し、ジャネッタは護衛騎士たちに混じって訓練するのが日課となった。
ルルイエの講義の際に立ち会うのはメノウと女官が一人だけだ。女官は毎回交代で入れ替わるが、それ以外の女官たちは、王女の世話をする必要がなくなったため、手が空いた。
そんな女官たちの元に、最初の日、フェリアとジャネッタは東方から持って来たお茶と手作りの菓子を手土産に、挨拶のために顔を出した。
フェリアいわく、「少しでもルルイエ様のお仕事をやりやすくするため」の行動だったそうだ。
聖女宮の女官たちは、そんな彼女たちを歓迎した。そして、東方のことを教えてほしいとせがんだのだ。
実のところ、女官たちの方は憂さを発散する手段がなくて、いささか腐っていた。
エーリカ国内が荒れ果ててからは、旅人らもこの国を避けて通るようになった。そのせいで、城にも東方や他国からの商人らがいっさい訪れなくなったのだ。また、出入りの商人たちも国を出て行った者が多く、国が豊かだったころのように、珍しい布や装飾品を持って頻繁に訪れることもなくなっていた。
しかも彼女たちの主は、あのわがままな王女である。メノウと女官長のひそかな確執などもあって、女官たちの胸には不満がたまるばかりだった。
そんな彼女たちにとっては、東方からやって来たフェリアとジャネッタの話は珍しく、聞いているだけでもワクワクするものだったのだ。
もっとも、ジャネッタの方はすぐに女官たちの相手をするのに飽きて、宮の女性ばかりの護衛騎士の訓練に混ざるようになったのだが。
ともあれ、そんな中でフェリアが女官たちから聞きいたメノウの評判がそれだった。
ちなみに、誰も彼女の素性を不思議がっている者はいなかった。
女官たちは皆、口をそろえて言う。
「あの方は、ルルイエ様がまだ聖女の教えを受けていたころ、お傍に上がったのだとか」
「ルルイエ様が聖女だったころに、婚姻のために女官を辞めたと伺いました」
「王女様がお生まれになったころに、ちょうど子を産んで、昔聖女に仕えていたならちょうどいいだろうと、宰相様が乳母にされたのです」
では、メノウの夫や子供はどうしているのか、とフェリアが問うと、女官たちは顔を見合わせ、首をかしげるばかりになった。
「ご夫君は、亡くなられたのではなかったかしら」
「わたくしは、離縁されたと聞きましたけれど」
「そうそう、そうですわ。メノウ様があまりに王女様の養育に入れ込むので、呆れたご夫君がお子を連れて離縁した……と」
一人が言うと、別の一人が思い出したように手を打って言った。
「では、その元ご夫君はどちらに?」
フェリアが問うと、女官たちはまた首をかしげる。だが、中の一人が言った。
「たしか、お子を連れて国を出たと聞きましたわ。その……メノウ様を離縁したことで、宰相様のご不興を買ってしまったから……と。メノウ様のご夫君だった時は、宰相府の官吏でしたから」
フェリアから、そうした話を聞かされて、ルルイエは眉をひそめて考え込んだ。
話自体には、これといっておかしなところはない。
メノウが王女の乳母になったいきさつは、以前にアゼリアから聞いたものと同じだったし、よくある話ではある。ましてや、夫が宰相府の官吏だったなら、その妻が元聖女の女官で子供が生まれたばかりであるなどという情報は、宰相の耳にも入りやすいだろう。もしかしたら、夫の側が自ら宰相に話した可能性もある。
また、離縁のいきさつも、それほど奇妙な話ではないと思えた。
メノウが王女の養育に入れ込んでいたことは、アゼリアの話でも感じられたし、夫が他所の子よりも自分の子に愛情を注いでほしいと願うのも、当然のことではある。
(……でも、なぜだろう。何か妙な違和感というか……なんだか変な感じがするわ)
ルルイエは、思わず胸に呟いた。
その違和感のような妙な感じは、聖女宮で過ごすうちに次第に強くなっている気がする。
それはそれとして、もう一つ奇妙なことがあった。
宰相が東方世界から呼び寄せたという呪い師のことだ。
城内に姿がないどころか、聖女宮の女官たちは誰もその人物のことを知らなかったのだ。
呪い師については、ルルイエ自身も心に引っかかっていたが、彼女たちが城内に移る前にカルドスからももし得られるようなら情報をと言われていたものだった。
だが、フェリアが女官たちにその話をふってみても、誰もが首をかしげるばかりなのだ。ジャネッタも護衛騎士たちにさぐりを入れてみたが、こちらも同じで、誰もがきょとんとした顔をする。
いったいどういうことなのかと、情報を突き合わせてみて、彼女たちは顔を見合わせたものだ。
「そもそも、『呪い師』という呼称自体が変ですよね」
小宮での夕食後、三人だけでお茶を飲みながら言ったのは、フェリアだった。
「東方世界には、そういう呼称はありません」
「だよねぇ。ただ、わたしは西方の人たちが魔法使いのことをそう呼んでるのかなって、最初思ったんだけど」
ジャネッタがうなずいて言う。
「わたくしも、最初はそう思ったわ」
フェリアはうなずき、尋ねるようにルルイエをふり返った。
それへ少し考え込みながら、ルルイエは口を開く。
「わたくしも最初は、ジャネッタと同じように思っていました。ただ……厳密に言うと、昔の東方世界には呪術師と呼ばれる者たちがいました」
「そうなのですか?」
魔法使いであるフェリアも知らなかったのか、軽く目を見張って声を上げる。ジャネッタも、同じく目を見張った。
ルルイエは、その二人に言った。
「それは、大魔法使いアイン・ソフ・アウルが生まれるより前の時代のことだと、わたくしが読んだ歴史書には記されていました。もちろん、当時から魔法使いはいましたが、今のように等級が決められていたり、学校があったりするわけではなかったそうです。そして、その魔法使いたちの中で、呪術を専門に扱う者たちを、区別して呪術師と呼んでいたそうです」
「呪術……ということは、他者を呪う術を行うということですか?」
フェリアが問うた。
現在の東方世界では、魔法はいくつかの体系に分けられている。
たとえば、戦闘系・医療系・生活支援系といった専門性による区分だったり、火・水・土・光・闇といった魔法の属性による区分だったりだ。
そんな中、現在では秘匿されているのが、呪術――呪いによって他人を害する術だった。
もっとも、昔は名付けや召喚、精霊などの使役も全て呪術の一つとされていた。が、現在ではそれらは呪術とは切り離されて、今ある体系区分の中に組み込まれていた。
フェリアの問いに、ルルイエはうなずく。
「アイン・ソフ・アウルの出現以前は、魔法使いが呪術によって、戦争以外で人を殺めることが合法……とまでは言いませんが、ごく普通にある状態だったのです」
「では、宰相が連れて来た呪い師は、実際には呪術を使う者だった可能性もある……と?」
更に目を見張って、フェリアが問い返した。
「わかりません。呪術の多くは秘匿されているはずですが……使える者が皆無とは限りません。かつてわたくしが助けた形になったアイラのスラヴェナ様は、魔法によって肉体と魂を分けられ、魂を封じられておいででした。当時は魔法の知識がなかったので理解できませんでしたが、今ならばそれが、魔法というより呪術だったのだろうと理解できます」
ルルイエは小さくかぶりをふって言う。そして、付け加えた。
「イーリスで、魔法使いがまるで犯罪者のような扱いなのは、呪術師がいた古い時代の記憶を、慣習として受け継いでいるからなのかもしれませんね」
「ルルイエ様……」
フェリアが再び目を見張る。
その隣で、何事か考え込んでいたジャネッタが、その時つと顔を上げた。
「今のお話で、昔両親から聞いた事件を思い出しました。両親がまだ婚姻前、護衛騎士をしていた貴族のお屋敷で、番犬として飼っていた犬が盗まれる事件があったそうです。しかも犬を盗まれたのはそのお屋敷だけではなく、他の貴族の屋敷でも同じことが続いたそうで。それで、国の騎士団が調査に乗り出して、結果、盗まれた犬たちは魔法使いの呪術に使うために、殺し合いをさせられていたと判明した――と」
「その事件ならば、わたくしも覚えています」
ジャネッタの言葉に、ルルイエもうなずいた。
「たしか、その時の犯人は、『イヌガミ』という怪しげな呪術を行おうとしていたと聞きました……」
言いさして、ルルイエは眉をひそめて考え込む。
当時、まだ魔法学校の生徒だったルルイエは、親しくしていた教師の一人から、その犯人が持っていた呪術書について聞かされた覚えがあった。
呪術書は写本だったというが、その元の持ち主は事件の数年前に、朽ちたモスクの地下から呪術書を発見し、写本を作って密かに売りさばいていたのだという。だがそれは国家の知るところとなり、持ち主は捕らわれた。ただ、大臣の一人に伝手があったために死罪にはならず、国から追放されただけで終わったのだという。そして噂では、国外追放となった持ち主は、流れ流れて西方世界へ向かったとか。
(まさか……)
ルルイエの胸に、いやな考えが浮かぶ。
当時押収されたものが写本だったということは、その追放された者が原本を所持していたかもしれないということだ。
(宰相様の元にいるという呪い師は、その時の追放された者では……)
宰相が東方から呼んだ呪い師を従えている、という話は、彼女自身が国を出たあとに聞かれるようになった。つまり、時期的にはそれが、追放された写本の持ち主だったとしても、おかしくはないのだ。
とはいえ、腑に落ちないこともあるにはあった。
ある程度魔力のある魔法使いならば、そんな呪術書を見つけたら、まず自分でそこに記されている呪術を試してみようと考えるのではないか、と思うのだ。むろんそれは許されない行為だし、見つけたものはさっさと役所に届けるのが一番ではある。だがそれでも――。
(わたくしならば、記されている呪術に興味が湧くわ。……役所に届ける前に、写本を自分のために作っておこうと考えてしまうかもしれない。そう……苦労して写した写本を、他人に売ろうとは考えないわ。たとえ、どれだけお金に困っていたとしても……)
胸に呟き、ルルイエは更に眉根を寄せる。つまり、呪術書を見つけた人間は、魔法使いではないか、あるいは魔力がそこまで豊富ではない魔法使いだったということだ。自分では使うことができない書物だったので、他者に売って金を稼ごうとしたというわけだ。
ただ、その場合は、宰相が呼んだ呪い師ではない可能性が高くなる。
例の呪い師は王妃の子供たちについて予言し、王妃が亡くなること以外は当てている。だが、未来を予見するにはかなりの魔力が必要だ。大魔法使いと呼ばれる銀級魔法使いでさえ、正確に未来を予見することは難しく、呪い師の予言のように、生まれる子供の数や性別を当てるのは、ほぼ不可能に近かった。
(結局、よくわからないわね……)
低く吐息をついて、ルルイエは考えるのをやめる。そして言った。
「なんにしても、聖女宮の人たちが誰も呪い師について知らない……というか、いることすら知らないというのは、奇妙すぎますね」
「ええ」
うなずいたあと、フェリアは言った。
「ルルイエ様、次の休みにでも、一度城の外に出ませんか? カルドス殿とも話をしたいですし、城の外で呪い師について聞き込みをすれば、何かわかるかもしれません」
「そうですね。では、ジャネッタ。カルドス殿に次の休みに会えるよう、連絡を取ってもらえますか」
ルルイエはうなずくと、ジャネッタをふり返って告げる。
「わかりました」
ジャネッタは大きくうなずいた。
彼女たちがそんな相談をして数日が過ぎた。
明日は休みで、ルルイエたちは三人そろって城の外でカルドスと会おうとなった日の夜のこと。ルルイエは、メノウから食事の誘いを受けた。断る理由もなく、ルルイエは夕刻前、メノウの元から迎えに来た女官に案内されて、彼女の部屋へと向かう。
ジャネッタが護衛として同行したがったが、それは相手を警戒させるだけだと、ルルイエが断った。
メノウの部屋は、聖女宮の王女の部屋のすぐ近くにあって、大きな居間と寝室に応接室や食堂までついた立派なものだった。しかも彼女の身の回りの世話をする女官が、王女に仕える者とは別にいて、ルルイエを迎えに来たのもその女官たちの一人だった。
招き入れられた食堂も、王女の乳母とはいえ女官に与えられるものとしては豪華で広々としており、ルルイエは思わず目を見張ったものだった。
メノウは長方形のテーブルの上座、造り付けの暖炉のある側に座り、ルルイエの席はその正面で少しばかり遠い位置だった。とはいえ、主賓と客の配置としては、間違ってはいない。
「今夜はお招きいただき、ありがとう存じます」
ルルイエは席に着く前、軽くスカートの裾をつまんで挨拶した。
「いいえ。わたくしも、あなたと私的にお話ししたかったのです。かつて女官と主だったわたくしとあなたが、こうして再び顔を合わせたのも、何かの縁だと感じますもの。さ、どうぞお座りになって」
メノウは小さくかぶりをふって言うと、彼女に席を勧める。
ルルイエがうなずいて腰を下ろすと、給仕の女官らがまだ湯気の立ち昇っている料理を運んで来た。
食事中の会話はたわいのないものばかりで、メノウは特段、王女の教育の進捗などについて気にしているふうもなかった。
だが、食事も終わり、お茶が運ばれて来ると、メノウは女官たちに部屋から出て行くように命じた。
驚くルルイエを尻目に、女官たちは潮が引くかのように立ち去っていく。
あとには、メノウとルルイエが二人きりで残された。
「ルルイエ殿は……わたくしのことをずいぶんと聞き回っておいでのようですわね」
お茶を一口飲んで、メノウが微笑みながら口を開いた。
「聞きたいことがあるのでしたら、わたくしに直接質問してはいかが?」
「質問して、答えていただけるのですか?」
ルルイエは問い返す。
食事に誘われた時から、何かあるかもしれないと考えていたので、多少の心構えはできていた。
「質問にもよるけれども……たとえば、どんなことを問いたいのかしら」
肩をすくめて返すメノウを、ルルイエはまっすぐ見やった。
「あなたは、本当は何者なのですか? かつてわたくしに仕えていたと誰もが言いますが、わたくしはあなたのことをはっきり覚えてはおりません」
「あら」
問われてメノウは、クスリと笑う。そして、小さく肩をすくめると立ち上がった。ルルイエの傍まで歩み寄り、口元には笑みをたたえたまま、少しも笑っていない目で見降ろす。
「やはり、元聖女で銀級魔法使いのあなたには、わたくしの暗示は効かないようですわね」
言葉と共に、彼女は口の中で低く何事かを呟いた。
それとほぼ同時に、ルルイエは席を蹴って立ち上がっていた。同じく口の中で低く呪文を唱える。
途端、空中に一瞬の稲妻が閃き、ルルイエの席にあったカップが真っ二つに割れた。
「まさか、あなたが東方から訪れたという呪い師……なのですか?」
「あっけなく、バレてしまいましたわね」
相手を見据えて問うルルイエに、メノウは楽しげに笑いながら答える。だが、その目は相変わらず少しも笑ってはおらず――そして二人は、どちらも鋭い光を瞳に浮かべて、対峙するのだった。
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「お前は役立たずだ」
――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。
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スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
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勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
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いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
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