神庭の番人 ~陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない~

夜乃すてら

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陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない

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 エジが淹れてくれた豆茶まめちゃを飲んでから、ゴールデンハイム村の村長にあいさつに行くことにした。
 侵入者と騒がれて、弓矢を向けられたらどうしようかとはらはらしながら、暁はエジの後についていく。
 風呂に入り、エジの服を借りて綺麗になったからか、現金にも、フォレスは暁に抱っこしろと命令した。貴重なエネルギーを神の威光で無駄にされてはかなわないので、暁はしぶしぶフォレスを抱き上げた。

「お前さあ、自分で飛べよ」
「人間の身でありながら、神に触れられる栄誉えいよに感謝するがいい」
「へいへい」

 風呂に入って、お茶で一息ついた暁には余裕がある。小さな子どもに接するような態度で、フォレスの傲慢ごうまんな言い分を聞き流した。
 そして、村の奥まった場所に来た。村長の家は、周りよりも若干高い所に建っている。

 エルフ達は弓矢や槍を持って、ピリピリした空気で歩き回っているのに、なぜかエジと暁には目もくれない。

(エジの影の薄さ、すごすぎる……)

 一緒にいる暁まで周りから見えなくなっているようだ。いったいどういうことなのだ。

「フォレス様にお会いできて、本当にうれしいです。実は僕も十二人兄弟の末っ子なので、親近感があるんですよね」

 歩きながら、エジがのほほんと笑う。

「ええっ、お前、十二人兄弟なの!? すげえな」
「アカツキよ、エルフは長生きなのだから、人間と比べればこれでも少ないほうだ」
「言われてみればそうだな」

 フォレスに指摘され、暁はなるほどと思った。
 人間の場合、寿命が長くて百年ほどだが、エルフほど長生きなら、それだけ子どもが増えてもおかしくはない。

「エルフは長命ですが、その分、子どもができにくいので、僕の家族くらいで普通ですよ。両親は仲が良いので、そのうち弟妹ができるかも」
「エジの家族はどうしてるんだ?」
「両親と長兄は村にそれぞれ家を持っていますよ。旅に出ている兄弟もいれば、結婚でよその村に引っ越した兄弟もいます」
「え……旅に出て大丈夫なのか? イメージ的に、エルフって貴重種族だから閉鎖的なのかなって」

 エルフが人種差別にあったり、人身売買にあうのはファンタジーもののお約束だ。
 気にする暁に、エジは首を傾げる。

「王族や貴族は貴重かもしれませんが、平民は特には。まあ、他の種族に比べれば、魔法の素養は高いですし、森が好きなので引きこもりとか言われてますけど」
「引きこもり! 好きな単語だぜ」
「はは、そうですか。大神官様は面白いですねえ」

 エルフとは気が合いそうだと勝手に親近感を抱く暁を眺め、エジはちょっと不思議そうにしたものの、笑みを浮かべた。

「それだけ大家族なのに、一緒に暮らさないのか?」
「成人したら、たいていは土地と家を与えられて独立しますよ。余裕があれば、親が仕事の世話くらいはしてくれますけど、あとは放任主義ですかねえ。うちの村はそんな感じです」
「へー」

 長い時を生きるからこそ、家族でも適度な距離感が必要なのだろうか。
 暁にはうらやましい価値観だ。

「まあ、僕は家族からも忘れられがちでしたけど」
「えっ、育児放棄!?」
「アカツキ、ぐいぐいツッコミすぎだ」

 思わずこぼした暁の頬を、フォレスが羽でぐいぐい押した。うざいが、フォレスの言い分はもっともなので、暁は気まずく思う。だが、エジは手を振った。

「すぐ上の兄と姉が双子で、それは暴れん坊だったので、両親も兄弟も手を焼いていたんですよ。大人しい僕はありがたがられました」
「そういう理由!?」

 エジをこれほど影が薄い存在にさせるとは、暴れん坊の双子ってどんな感じなのだろうか。
 たぶん気が合わないと、暁は察した。

「その双子はどこに?」

「そんな暴れん坊が、村で静かにしているわけないじゃないですか。冒険の旅に出かけましたよ。最近は、どこぞの勇者のパーティに入って、竜退治をしたとか。突然、竜の頭を送り付けてきたので、両親がおびえてました」

「まさに暴れん坊……!!!!」

 家族に魔物の首を送ってくるなんて、ぶっ飛びすぎである。そりゃあ親だって悲鳴を上げるだろう。
 エジは苦笑した。

「正直、二人が村を出て、村人達もほっとしています」
「だろうなあ」
「よくそんな耳長が、我が森を荒らさなかったな」

 フォレスのつぶやきに、エジはすっと目をそらす。

「ええ、もちろん、二人は森に踏み込みましたよ。ですが、悪意のある者は道に迷って追い返されるでしょう?」
「結界が健在の時はそうであったな。うるさい輩は迷惑だから、来なくて助かった」

 フォレスは正直な感想をつぶやき、エジに問う。

「お前達は大丈夫だったのか? 闇の神が魔物を送ってきたせいで、近隣の村や町が襲撃されたようだが」

「魔物のせいで、村がピリピリしているんですよ。魔導具で防いで追い払いましたので、この村には被害はありません。人間の村のほうは悲惨なことになっているみたいで……。そちらからの難民が盗賊になっているらしくて」

「ひえ。二次被害に発展してんのな!」

 ひどい事態だと、暁は青ざめる。

「エルフって人間が嫌いなのか?」
「人間ではなく、よそ者が嫌いですね。魔導具狙いで、たびたび襲撃を受けるので」
「そりゃ嫌いになるわ!」

 難民を支援しないのかなと思ったが、理由が理由だけに、暁は何も言えない。

「俺、ここにいて大丈夫なの?」
「フォレス様と一緒なら敵視されませんよ」

 エジはそう言って、にこっと笑う。暁は初めてエジの笑みにうすら寒さを感じた。
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