神庭の番人 ~陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない~

夜乃すてら

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陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない

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 フォレスは神庭には〈宝樹〉が千本以上はあると言っていた。
 泉でタンブラーに水を汲んだところで、重要なことに気づく。

「あれ? 一日三本だとしたら、一年はかかるってことじゃないかよ」

 一週間くらいがんばれば帰れるとのんきに構えていた暁は、サーッと青ざめる。

「おい、フォレス! 俺が無事に帰れたとして、一年もかかってたら、あっちじゃ行方不明扱いじゃないか!」

 一週間程度ならば、引きこもりがちな大学生が風邪でも引いていたと言い訳できる。

(言い訳をする友達がいないけどな!)

 親しくしている先生もいなければ、サークルや研究室にも未所属なので、誰にも不在に気づかれない可能性はあった。最悪、家賃の未払いで、大家が確認に来て異常に気付く……なんてことになりかねない。
 テレビや新聞で騒がれることを想像し、暁は頭を抱える。

「私を誰だと思っている!」
「フクロウ」
「馬鹿者!」
「いだっ。いい加減、蹴るのをやめろ!」
「愚かな下僕を調教して何が悪い!」

 フクロウの足で、後頭部を蹴られ、暁は危うく泉にダイブするところだった。下僕や調教という言葉に引いていると、フォレスは傍らにちょこんと座って、こちらを見上げる。

「エネルギーさえ満ちれば、同じ時空に戻すことは可能だ」
「時空……?」
「時間と空間という意味だ」
「えっ、じゃあ、あの日のキャンパスに戻れるってことか?」

「そういうことだ。よいか、召喚というのは契約だ。私の望みを叶える代わりに、褒美を与え、元の時空に戻す。それが神のルールである」

 アニメやゲームに触れていなかったら、暁には意味不明な内容だっただろう。悲しいことに、意味をすんなり理解した。

「えっ、お前の願いを叶えたら、褒美がもらえるの?」
「そうだ。私は森の神だから、森の祝福を与える」
「ええー、アウトドア嫌いの俺には意味ねえじゃん」

「植物は豊かに育ち、木々のあるエリアでは幸運が上がる。遭難しないし、遭難してもすぐに助かる」
「うーん、動物病院で、兄さんの補佐をする予定でいるくらいで、農業にかかわるつもりはないんだけど」

 暁はうなったが、田舎なので、家の傍には畑と田があり、一家の分を自給自足できる程度に作物を育てている。豊作になれば、家族が喜ぶだろうか。

「何か金になりそうなものはないの?」
「愚か者め! 金よりも、神の祝福のほうが貴重に決まってるだろうが!」
「ちょっとアカツキ。そういうのはゲスっていうんだよ」

 すごみのある笑みを浮かべるエジを目撃し、暁はひえっと首をすくめた。

「うわっ、エジさんが怒ってらっしゃる! 悪かったよ、成功したら、ありがたくいただきますよ!」

 暁は登山になんて行かないが、山で遭難しない幸運は田舎ではありがたい。子どもが迷子になって、村人総出で山狩やまがりなんてことがごくまれにあるのだ。
 渋々ながら受け入れ、暁は今日の仕事をこなすことにした。



 それから二日後の朝。
 またもや気絶して寝て終わったことにがっかりしながら、暁は居間で目覚めた。

「ああ、アカツキ。良かった。目が覚めたんだね」

 ひどく心配そうに眉を寄せたエジが、暁を見下ろしてため息をつく。いったい何をそんなにうろたえているのかと驚いていると、エジは床に片膝をつき、フォレスにこうべを垂れる。

「恐れながら、フォレス様。このままでは神庭が復活する前に、アカツキが死んでしまいます。どうか倒れるまで浄化させるのはお控えくださいませ」
「む。どういうことだ、耳長よ」

 フォレスが不機嫌丸出しで問う。

「この三日、アカツキは朝食を食べた後、浄化をして眠り、そのまま一日を終えています。人間は寝て食べれば生きていけるものではないのです。太陽の光を浴び、運動もしなければなりません。それから、寝たきりですと、筋力が落ちるのが早いのです」

 エジは暁の右手を取り、フォレスに見せる。

「ごらんください。アカツキは外仕事などしたことがないのでしょう、王侯貴族のように、はんなりした腕をしていらっしゃいます」

 ――はんなりした腕って何!?

 暁は静かにびびる。

「それがたった三日で、このように骨のごとく痩せてしまわれて!」
「うっせー、元々貧弱なだけだ!」
「威張るところか、貴様」

 言い返す暁に、フォレスが呆れの目を向ける。
 エジにムカついたが、彼の心配は理解できるものだ。一日一食で、あとはほぼ寝ているなんて生活が、人間のリズムに合っていると思えない。

「それに加えまして、アカツキが健やかな体をたもつ努力をすれば、体力が増えて、浄化の能力も上がるのではないかと愚考ぐこういたします」

「……まあ、確かにこやつは貧弱だ。仕事を終える前に、病気で死なれても困るしな」

 意見されて不愉快そうだったフォレスだが、エジの進言に納得した。

「良いだろう。お前がトレーニングしてやるがいい」
「かしこまりました」
「えええ、ちょっと待て! 俺、スポーツは嫌いなのに」

 慌てて暁が割り込むと、エジは苦笑する。

「アカツキ、貧弱なのを気にしているなら、相応の努力をしなくちゃ。子どもでも分かることだよ?」
「ぐはっ。正論で斬りつけられた!」

 胸を押さえ、暁はよろける。しかもさりげなく子ども扱いされた。

「何も、いきなり戦士のようにトレーニングをするわけじゃないよ。しっかり食事して、散歩しよう。森で食べ物の採り方も教えてあげる」

「いきなりスパルタ教官をぶつけてきたりしないだろうな」

「しないよ。だって君には基礎がまったく足りてない。その状態で運動したら、怪我をするだけだよ。安心して、エルフは子どもが少ないから、それぞれに見合った訓練の仕方をするように教わってるんだ。僕は衛士として、たまに子ども達の稽古もしてるから問題ないよ」

「そうだった、エジは見た目詐欺だった」

 十五歳くらいの少年だが、暁よりもはるかに経験があるのだから、エジの言うことはもっともだ。

「もし何かあって、アカツキが一人になることがあっても生きられるように、最低限は教えるからね」
「ひえっ、不吉なことを言うのはやめろよな!」

「でも、もしもがあるかもしれないし。ここにはまだ魔物が出るし、昨日は村に盗賊が来たんだよ。皆で追い払ったけど……軍隊レベルが来られたら、さすがに逃げるしかなくなる」

 暁が寝ている間に、エジが不安がるようなほど、状況が変化したようだ。暁の心臓がバクバクと騒ぎだす。右も左も分からない異世界で放り出されるなんて、コミュ障でもなくても恐ろしいことだ。

「軍隊とは、どういうことだ」

 フォレスが口を挟む。

「周りが魔物の被害にあう中、僕の村はなんとかしのいでいます。それが彼らには、変なことだと映ったようなんですよ。魔物を発生させたのは、僕らの村じゃないかと疑われているようなんです」

「国の調査が入るのか?」

「すでに行政官が来て、注意するように教えてくれたそうです。行政官は僕らが強いのを知っているので、実力の差だと分かっていますが……暴徒と化した者は耳を貸しませんからね」

 二人のやりとりを、暁はぼーっと聞いている。
 ギョウセイカンとはなんだろうか。分からないが、暴徒という言葉には不穏な響きがある。

「まさかと思うけど、国の軍隊がここを攻めるってこと? ここって、エルフの国の中じゃねえの?」

「ここは人間の国だよ。エルフの国はもっと北にあるんだ。僕達の村は、フォレス様を慕って押しかけて、勝手にこの辺に住み始めた信徒だよ」

 押しかけ信徒の自覚はあるらしい。
 フォレスが考え込む。

「確か、リーン王国だったか?」
「フォレス様、それは百年前に滅びましたよ。今はレオニール王国というんです。闇の神を悪と定める、光華こうか教が国教になっているのが問題でして」

「だから魔物を呼び寄せた邪悪な村なら、国が軍隊を差し向けて滅ぼしかねない、と」
「そういうことですね」

 なんだか一気に雲行きが怪しくなった。

「僕達はここでひっそり暮らしているだけで、何も迷惑をかけてはいないのですが、どうも豊かに見えるようでねたまれることがあるんですよ」

 よそ者が嫌いだと言っていたのを、ふと思い出す。だんだんつながってきた気がする。

「外の村ってそんなに貧しいの?」
「うん、そうなんだよ。三十年前くらいにも、疫病がはやったのに、僕らの村は平気だったからいちゃもんをつけられたことがあってね」

 エジはやれやれと首を振る。

「そりゃあ、窓から道端に汚物おぶつを投げ捨ててたら、病気にもなるでしょう。僕らはちゃんと一か所に集めて、肥料にしているよ。尿だって、魔導具を使った浄化システムで環境汚染しないように気を付けてるんだから」

「それを教えてやればいいのに」
「言ったけど、そんな高価なものを使えるかと激怒された」
「もしかして魔導具って高級品?」

「うーん、村にある程度の魔導具なら、魔石をはめこめば使えるシンプルなもので、そこまで高くはないはずなんだけど。売りに行くことはないから、相場が分からないんだよ」

「……うん、たぶんというか、間違いなく高級品だな」

 周りの人々が、ゴールデンハイム村は富裕が集まっていると誤解しているのも納得だ。

「つっくんが魔導具開発しているのはなんでなんだ?」
「ああ、あれは彼の趣味だよ。あれで魔法使いとしては優秀で、たまに冒険に出かけてお金を稼いでは、研究につぎ込んでいるんだ」

「え……」
「何?」
「あの美少女顔で、冒険? え?」

 つっくんが魔法使いというのはイメージにぴったりだが、風が吹いたら飛ばされそうな繊細さがあった。

「アカツキよ、エルフに夢を見るのはいい加減にやめろ」

 フォレスが不憫そうに言った。

「ちゃんと国に税金を納めているのに、ひどいと思わない? おかげで、こんな場所で衛士を雇ってくれているわけだけど」

「税金を払ってるなら、市民権があるんだろ。なんで軍隊が来るんだ?」

「光華教の信徒は過激でね、疑わしい者を捕まえて、拷問ごうもんにかけるんだ。縛った罪人を川に入れて、浮いてきたら死罪、沈んだら無罪だけど溺死できしとかね。捕まったら死ぬのは確定だから、そんなことをするくらいなら、僕らは抵抗するし、村から逃げるよ」

 ぞわぞわと寒気に見舞われる。

「うわーっ。暗黒の中世期、魔女狩りじゃねえか。あれだろ、罪人として訴えた側は、罪人の財産をもらえるとかそういう……」
「アカツキの世界にもあるの? そうだよ」
「ひいいい、嫌でも冤罪えんざいが生まれるやつ!」

 暁は、自分がどれだけぽややんとしていたか、ようやく気が付いた。
 世界史の成績が良いわけではないが、その辺りはアニメやコミックでもよく使われるネタなので、自然と頭に入っている。
 神庭の外は、ろくな法整備もされていない、王侯貴族が優位の暗黒期まっただ中だ。エジの言うように、清潔さも疑われる。病気で死ぬか、暴力で死ぬか。

「怖すぎる! まさにデッドオアアライブ!」

「うるさいぞ、アカツキ。わめくな。――エジよ。お前達は、私の貴重な信徒だ。よほど困ったら神庭で保護してやるから、逃げてくるがいい」

 エジは片膝をつく姿勢から、平伏に変わった。

「ははーっ。フォレス様の慈悲に感謝いたします。しかと村長に伝えます」

 また感動しているよと、暁はエジの見事な土下座を眺める。

「だからアカツキよ、無事に過ごしたかったら、正常な神庭を取り戻さなければならない。もし村人が来たとして、結界に入れなくては意味がないだろう?」
「そうだけどさ……」

「体力をつける努力をしろ! ついでにそのへなっとした精神も鍛えるがいい!」
「一言余計なんだよ!」

 暁は即座に言い返す。
 それからエジと話し合い、朝に〈宝樹〉を一本だけ浄化して、日中は普通に生活して体力を戻し、夕方に二本浄化するスケジュールに決まった。
 様子を見て、時間を分けて本数を増やしていけば、暁に負荷がかからないという見立てだ。

(エジを味方につけられて正解だったぜ)

 気遣いはするくせに、たまに常識外れなフォレスである。エジがちょうどいいバランサーになってくれそうだ。
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