婚約破棄と国外追放を宣言された公爵令嬢、直後に求婚される

紅 蓮也

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本編

第1話 婚約破棄国外追放そして求婚

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「ルシフェノール公爵令嬢サターナ、貴様との婚約を破棄する。」

 ルシフェノール公爵令嬢のサターナは、自国だけでなく他国の王候貴族なども招待されているアルメシア国王の即位三十周年を祝うパーティーで予想外の事態となった。
 会場内はそれまでのお祝いムードで盛り上がっていたが王太子の一言でいっきに静まり返ってしまった。

 招待客たちは王太子であるウィリアム殿下と王太子の側近たちそして婚約者でもないのに王太子にくっついているアルメシア王国が聖女と認定したナババッカ伯爵令嬢のナターシャ。そして王太子から婚約破棄を宣言された婚約者の私に注目している。

「婚約破棄でございますか。理由をお聞かせ頂いてもよろしいでしょうか。」

「そんなの決まっているだろう。王太子である私の婚約者だということをいいことに国が認定した聖女であるナターシャに危害を加えたからだ。」 

「ナババッカ伯爵令嬢のナターシャ嬢は聖女様ですので、名前は存じておりますがお目にかかったのは初めてございますが私が危害を加えたと…… 
 王太子殿下は聖女様と仲がよろしい様に見えますがどのようなご関係なのでしょうか。」

 初めて会ったのに私が危害を加えたなどとこれいかに……
 婚約者がいながら他の令嬢と仲良さげにされているので聞いてみました。どんな関係かは誰から見てもわかりきっていることですけどね。

「嘘をつくではない。ナターシャは王城によく来ている王城にある貴様が会うのが初めてなわけなかろう。
 ナターシャとは真実の愛を見つけたもの同士関係だ。」

 やっぱりそうですよね。王候貴族は政略結婚が当たり前ですからね。真実の愛とか言ってますが婚約者がいるのに他の令嬢とそういう関係になるってことはつまりあれですね。
 招待客の皆様もわかっていたとはいえ、ざわつきはじめましたね。

「私は、王城にはいましたが第一王妃殿下や講師の方々からの王妃教育で忙しかったので一部の方たちとしかお会いしていないのです。
 ですので聖女様とお会いしたのは今日が初めてですわ。
 王太子殿下は婚約者がいながら聖女様とはそういう関係なのですね。政略結婚なので婚約は私も仕方がないと思っていましたし王妃教育も厳しかったですが頑張っていましたが婚約破棄は受け入れましょう。」

「嘘です。私はサターナ様から直接嫌がらせをされました。
 でも婚約破棄を受け入れてくれたので許してあげてもいいですよ。」

「そうかナターシャは優しいな。そしてサターナは婚約破棄は受け入れるのだな。では自身の罪を認めたことだし、処罰せねばならなんな。」

 何言っているんだ?聖女様は嘘だと言って婚約破棄受け入れたから許してあげてもいいとか何故に上から目線なのだろうか……
 婚約破棄は受け入れたが危害を加えたのは認めてない。なぜ処罰されなければ……

「トマス。そなたは罰はどうするのがいいと思う?」

「そうですね。王国法に従えば国外追放ですかね。」

 トマスはラスラカール侯爵令息で私の幼馴染で王妃教育が辛い時にたまに弱音を聞いてもらったりしていたのですが……私の大変さも理解してくれていると思ったのですが、王太子殿下の側近ではありますが何故にそちら側なのですか……

「国が決めた聖女様に危害を加えたのですから国家反逆罪で処刑が妥当かと私は思います。」

「私もだ。」

 騎士団長であるヒュールテッド伯爵の令息であるナイン様が処刑が妥当だと言い出し、魔法師団長であるマリオン侯爵の令息のハリー様がそれに同意されましたが、罰を私に下される罰で盛り上がっているところ悪いのですが、やってもいない罪で処刑とかごめんですわよ。

「あの……婚約破棄は受け入れましたけど……聖女様に危害を加えたことは認めてないですわよ。
 初めて会ったと言いましたのにどうやって私が聖女様に危害を加えたというのです。」

 招待客の皆様は頷いてますね。私と同じ意見のようですわね。
 顔を赤くして怒りを爆発させてしまいそうなのを抑えている方たちもいますね。
 このパーティーの主役ではありますが、主催である国王陛下は玉座に腰掛け成り行きを見守っているだけですけど対処しないのですか……
 招待客の皆様に失礼ですよ。
 第一王妃殿下はお怒りのようですが国王陛下が動かないと立場的に王妃殿下は動けませんからね。

「そんな事どうでもよい。婚約破棄を受け入れたのだから罪を認めたのと同じだ。
 直接嫌がらせをされたのがナターシャの記憶違いでもし本当にナターシャと会っていなかったとしても
 誰かにやらせたのだろう。
 ナターシャが怪我をして私の部屋に来たのは間違いなからな。」

 おいおい……聖女様は婚約者のいる王太子殿下の部屋に行っているのか……

「私がやったとか私がやらせたとかを証明する証拠はあるのですか?
 証拠もなしに罰することは出来ませんよ。」

「「「「それは……」」」」

 王太子殿下も聖女様も側近の三人も何も言えなくなってしまいました。
 やっていないのですから証拠なんてありませんもんね。
 やっと国王陛下が動くみたいですね。

「貴様、今日は我を祝うパーティーなんだぞ。自国だけでなく他国の王候貴族たちも招待しているというのにこんな騒ぎを起こして我に恥をかかせおって、証拠などどうでもよい聖女が危害を加えられたと言っているのだ王国法に従い国外追放にする。
 ついでに父親である宰相のアジェット含めルシフェノール公爵家は娘の仕出かしたことの責任により爵位剥奪の上一族全て国外追放じゃあ。さっさと出ていけ。」

 あらら、王太子を咎めるかと思えば、私だけでなくルシフェノール公爵家の者全てが国外追放ですか……
 国王陛下も王太子殿下と同じようなことを言いましたし、親子そっくりですね。

「アルメシア国王、よろしいかな。」

 言葉を発したのはサウジャール共和国の大統領であるカリスナラド様ですわね。
 サウジャール共和国は以前は君主制で皇帝が君主のドツジャパ帝国という大陸一の強国だったのですが、十年前にカリスナラド様がこれからは皆で国の政ごとを行いより良い国をということで君主制を廃し、共和制としサウジャール共和国となったのだ。

 皇族や貴族は今までの家名を平民は自分たちで家名を考え名乗っている。
 今までは皇族、貴族、平民と身分があったが共和国となり国民と統一された。

 アルメシア国王は帝国が共和国となり平民にも政ごとをやらせるようになってから下にみるようになったりしているのだが国力は増してきており、真似をしようと考えている国もあると聞く。
 因みにカリスナラド様は先ほど怒りを爆発させるのを抑えていた招待客の一人であり、第一王妃殿下の父でもある。

 王位を継げるのは第一王妃殿下との子だけなのですが第一王妃殿下との間になかなか子が出来ずやっと生まれた第二王子がまだ小さいというのもあるが帝国が共和国になったことで国王陛下は第一王妃殿下を下にみて、第二王妃殿下との子である第一王子のウィリアム殿下を王太子にしてしまったんですよね。

「なんでしょうか。カリスナラド大統領。」

「いやな。サターナ嬢が婚約破棄と国外追放になるなら我が息子がサターナ嬢に言いたいことがあるそうでなあ。」

 カリスナラド様がそう言うとカリスナラド様同様先ほど怒りで顔を赤くしていたカリスナラド様の息子であるバルト様が私に近づいてきた。

「お久しぶりです。サターナ嬢。よかったら私の婚約者になっていただけませんか。」

「お久しぶりです。バルト様。いきなりそう言われましても何とお答えしたらいいか……
 婚約破棄され国外追放となる私としては大変ありがたい話ではありますが……」

 最近は王妃教育などで忙しくお会いできませんでしたが、魔法が使える者を得た貴族家の多くはその後は自国の貴族家同士で結婚されているのですが、ルシフェノール公爵家はずっと共和国の者と結婚してきている家の一つなので幼少期はあの頃はまだ帝国でしたしバルト様も皇太子でしたが遊んで頂いた記憶があります。

「すぐに返事を頂かなくても大丈夫です。国外追放になってしまうみたいですし、サウジャール共和国に来ていただければ今はそれだけでいいです。」

「そうですね。あの頃はまだ帝国でしたが楽しい思い出がたくさんありますし、国外追放になりましたからサウジャール共和国に行くのは私としては問題ないです。
 第一夫人のお母様も第二夫人もドツジャパ帝国の公爵令嬢と侯爵令嬢だった方ですし、母国に戻れるのは嬉しいでしょうし、お父様も賛成すると思いますわ。」

 お父様は第二夫人までいるのですが二人とも旧帝国の貴族の方です。
 ルシフェノール公爵家以外にも旧帝国の者と結婚する貴族家はいくつかありますが、お父様同じか第一夫人だけしかいないかもしくは第一夫人は旧帝国の貴族の方で、第二夫人はアルメシア王国の貴族の方って感じですね。

 第一夫人が旧帝国貴族、第二夫人がアルメシア王国貴族の貴族家では継承権があるのは第一夫人の子だけにしているみたいです。
 魔法が使えても旧帝国の血が薄くなってしまうと魔力量少なかったりとか力が弱くなってしまいますから仕方がないですよね。

「もう一ついいかの。」

「何ですかな?」

「アルメシア王国の王族や貴族や民たちでサウジャール共和国に来たい者がいたら共和国で受け入れたいのだがいいかの?」

「構わぬよ。王族は勿論だが貴族も爵位を捨て平民になりたい者や聖女の結界により安全安心な暮らしを捨てたい平民がいるとは思えんがいたら勝手に共和国に連れて行けばいい。」

「そうか。では他国の王候貴族もいる中でのことを反故するわけがないとは思うが念のためにこれに署名してくれんかの。」

 あの紙は魔力を感じるから最近、共和国で開発された魔法契約書とかいうやつじゃないかな。
 第一王妃様やお母様たちからチラッと聞いただけだから詳しくは知らないけど契約書の内容に反したら最悪命がないってヤバいやつ。
 まあ、契約内容を守ればいいだけだから普通は問題ないんだけどね。

「何じゃそれは?」

「これは最近、共和国で開発された魔法契約書といいましてな。
 契約書にサインした者が契約書の内容に反した場合には罰が下るというものですよ。
 今は共和国でした使用されてませんし、契約内容に反して罰を受けたという報告はきていません。
 それに契約違反しなければ問題ないですからね。」

「そうか。そんな物があるのか。罰とはどんなものがあるのだ。」

 問題ないと言われても気になりますよね。
 私も気になってお母様に聞いちゃいましたから気持ちはわかりますわ。国王陛下

「神様に力を貸していただき開発されたものですからね。
 神様が言うには最悪の場合は命を奪われるそうです。」

「とんでもないものではないか。気安く署名できんな。
 ここで契約内容を声に出して読んでもよいか?
 万が一契約違反してないのに私が死んだらカリスナラド大統領が細工したという証拠にもなるだろうしな。」

 疑うことは大事だよね。

「どうぞ。」

 カリスナラド様は特に気にせずそう答えた。
 すると国王陛下が言った通りに声に出して読みはじめた。

「アルメシア王国の者でサウジャール共和国に籍を移したい者をサウジャール共和国は無償で受け入れる。
 それに対してアルメシア王国はその者が籍を移すことを素直に認めること。
 ただし、サウジャール共和国はアルメシア王国の平民を除く王族や貴族の者が本日より十日間以降にサウジャール共和国に籍を移したいと言ってきた者に対しては拒否することができる。
 尚、王族や貴族が王族や貴族の身分を失い平民になったとしても同様である。
 うむ。特に問題ないな。これに署名すればいいのだな。」

「はい。」

 カリスナラド様はよく考えてらっしゃる。
 平民はいつでも受け入れるけど王族や貴族は本日より十日間だけで、それ以降は受け入れ拒否できる。
 それは身分を捨てても変わらない。

 国王陛下もだが考えの甘い者は、籍を移すものなどいるはずないから特に気にしないがもし領地を持つ貴族が籍を移せばそこで暮らす領民も一緒に籍を移す可能性もある。

 王族も貴族も平民とバカにするが平民あっての王族や貴族である。
 平民がいなくなれば物をつくる者も税を納める者もいなくなるのだ。
 今までの暮らしができなくなるだけでなく、国の存亡にもかかわる。

 後になって慌てても王族や貴族は共和国に籍を移そうとしてもカリスナラド様はお怒りのようですので絶対に拒否される。
 平民はいつでも受け入れられるのだから身分を捨ててと考えそうな愚者たちを見越してのこの契約書の内容なのだろう。

 アルメシア王国の王族や貴族の多くはドツジャパ帝国がサウジャール共和国になったことで見下しているが今も変わらず大陸一の強国なのである。
 共和国になったからといって他国も含めアルメシア王国がサウジャール共和国より強国になったわけではないのにアルメシア王国の王候貴族は何を勘違いしているのでしょうか。

 昔はアルメシア王国は魔鉱石を武器に財を成してきましたが先々代の国王の頃から自国の利益しか考えず計画性もなくどんどん魔鉱石を採掘し輸出しているので魔鉱石が採れなくなっているのですが、全ての貴族が魔法を使えるようになり魔鉱石の採掘が底を尽きかけているアルメシア王国と魔鉱石に変わる魔石が見つかりアルメシア王国から輸出が必要なくなったサウジャール共和国。

 ドツジャパ帝国時代から続くアルメシア王国とサウジャール共和国の友好関係にピリオドが打たれるのも近そうですね。
 聖女様もこれからは結界の維持頑張ってくださいね。
 私は疲れたので婚約破棄され国外追放となりましたのでサウジャール共和国に行きますから

 そんなことを考えていると三枚の用紙にカリスナラド大統領と国王陛下の署名が済み魔法契約書だけが光だし消えました。
 何処に消えたのでしょうかね。

「契約内容を忘れてしまっては困るので三枚の用紙は同じ内容であることを確認されて署名していただいたので残り二枚の用紙は普通の契約書ですのでこちらがアルメシア国王側の保管用の契約書になります。」

「わかった。では騒ぎでしらけてしまったのでパーティーはお開きとしよう。
 招待客の皆にはお忙しい中、来ていただいたのに申し訳なかった。
 残り談笑したい方々はここ使っていただいて構わぬ。
 それでは本日は我の即位三十周年のパーティーに来ていただきありがたかったぞ。」

 国王陛下の〆の言葉でパーティーは終了となった。
 サウジャール共和国を含めた他国からの招待客は誰も残らず、私たちも退室した。
 残りそうな者たちは危機感のない王族や貴族だけだろうなと思いなから帰路に着いた。
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