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第漆拾伍話 念願の生魚

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 ヴァスカトール公爵家の屋敷に無事に到着した私たちは、まもなく昼時ということで、食堂に案内された。

「旦那様、奥様。使用人一同、お二人がご無事のお帰りになられて安心いたしました。
 冒険者の皆さん、護衛お疲れ様でした。 ご昼食を用意しておりますので、たくさん召し上がってくださいませ。」

 レオン兄さんと私は、公爵家の一員であるが今は、護衛してきた冒険者の一員でもあるので、冒険者としての扱いをしてくれている。

 そして、皆でテーブルに着くと料理が運ばれてきた。

「王都では、食べることができない魚を生で食べていただこう思い、寿司を用意させていただきました。食べられたことがないでしょうから未成年の方たちの寿司は、さび抜きにしてあり、辛みのあるわさびは脇に添えてありますので、試してみたい場合は、付けすぎに気をつけて、ネタの上に適量乗せ、ネタ側を醤油につけて召し上がってくださいませ。」

 やった~。お寿司だ。待ってました~。生魚~ 生魚~
 まずは、白身魚からだ。これは、タイかな?

「ワサビを少し乗っけて、醤油をつけて、パクっ……美味しい~。」

 今まで食べたお寿司の中で一番美味しい。
 この世界には、魔力があるから魚の美味しさにも影響しているのかな?
 いけない涙が出てきてしまった。また心配されてしまう。

「どうした。アオイ?」

 やはりレオン兄さんに心配されてしまった。

「気を付けろって言われてたのに、わさび付けすぎちゃって、鼻にツーンときたのとお寿司のあまりの美味しさに感動してたら、涙が出ちゃった。てへぇ」

「そうか。喜んでくれてよかった。だがわさびの付けすぎには、気をつれるんだぞ。」

 わさびもいい言い訳に使えたし、わさびは違う意味でもいい仕事をしてくれた(笑)
 お寿司は最高だな~。ヒラメに~マグロに~カンパチ。アジ、ホタテ~に、ガリやお茶を挟んでイクラに穴子~
 私は、お寿司にテンション上がりまくりだ。

「アオイは、寿司を気に入ってくれたか。アナとアイラは、どうだ?」

「美味しいです。」

「初めて食べましたけど、生のお魚って美味しいですね。」

 アナもアイラもお寿司を気に入ったようだ。
 ヒューイットさんとミオさんは、冒険者として依頼で、色んなところに行ったことがあるから食べたことがあるみたいだけど、美味しそうに食べている。
 ヒューイットさんとレオン兄さんは、寿司下駄に並べられたお寿司をもう全て食べ終えて、お代わりしている。

「私もお代わりください。」

「「「私も」」」

 皆、お寿司を堪能して幸せそうだ。

「お寿司もいいけど、お刺身だけも食べたいな。あと煮魚とか。」

「アオイ様は、魚を気に入られたのですね。ヴァスカトール領で暮らす者として嬉しく思います。
 魚が続いてしまいますが、では夕食に刺身と煮魚をお出しするように料理長に伝えておきます。
 夕食前にお酒を飲まれるでしょうから刺身は、いいつまみになりますしね。」

「本当ですか。ありがとうございます。スティーブさん。」

「旦那様、奥様、ノリス様、カール様、それに皆様もそれでよろしいでしょうか。」

「構わん。」

「「「大丈夫です(わ)」」」

「ヴァスカトール領に来たら魚だからな。俺らも構わない。」

 今夜の夕食も魚料理に決まった。お刺身に煮魚も楽しみだな。

「ああ、美味しかったけど、王都ではお寿司食べられないんだよね。
 クランの皆にも食べさせてあげたいな。」

「そうだね。」

 アイラとアナがクランの皆にも食べさせてあげたいと言い出した。

「アイラ、アナ。大丈夫だよ。
 私の収納空間は、時間停止されているからお土産に新鮮な魚を買っていけば、私がお寿司握れるから食べれるよ。
 お寿司じゃなくても、海鮮丼にしたりしてもいいしね。」

「「「「「「海鮮丼?」」」」」

 あれれ~?アイラたちだけでなく、公爵家の皆も?を浮かべて首を傾げているぞ。
 知らないのかな?

「海鮮丼は、どんぶりに白飯か酢飯を盛って、その上に好きな魚介類を何種類か盛り付けて、わさび醤油を全体にかけたり、皿に取った醤油に刺身をその都度つけながら食べたりするんだよ。
 ヴァスカトール領でも無いの?」

「「「「無いな(わね)」」」」

「エビやイカや穴子など天ぷらにして、ご飯の上に盛った天丼はあるがな。」

 お寿司や天丼はあるのに何で海鮮丼がないんだろうか。

「作り方は簡単そうだし、今度、料理長に言って作ってもらおう。」

「私たちは、クランハウスで試してみようね。」

「天丼ってやつも美味しそうね。アオイ作れる?」

「天丼作れるよ。」

 お寿司を食べたばかりだから、今から作ってもらい試食するわけにはいかないからね。
 そうだ。エビやイカとかも輸送の問題で王都ではないから天丼や天ぷらそばやうどんも今度試してみよう。
 そう思いながら、私は皆の話を聞きながら食後のお茶を飲んだ。
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