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第4章 アレグスト帝国編

087 雑談

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#087 雑談

 アレグスト帝国に入ってからはそこそこ魔物に出会うようになった。帝国ではこの辺は辺境にあたるらしく、騎士団が巡回しても一向に減らないとか。

 サイラーグ伯爵のところで帝国の騎士団も加わった。向こうも50名派遣してきたので合計100名の大所帯だ。なぜかメイドも連れてきていたので俺の馬車にはクレア以外にハルという名前のメイドが乗っている。

「ジン様は異世界人なんですよね?異世界ってどんな場所なんでしょうか?やっぱり勇者様が強いって事は凶悪な魔物が闊歩してたりするんでしょうか?」

 好奇心が強いのは良い事だけど、答えれる範囲は決まってるからなぁ。

「いいえ、逆ですよ。俺のいた世界に魔物は1匹もいませんでした。もちろん獰猛な猛獣はいましたがあくまで動物でしたし」

「え、じゃあなんで勇者様はお強いんですか?」

「さあ?女神様のお力というのもあると思いますよ」

「ああ!そうでした女神様が選ばれたお方でしたね!じゃあ、ジン様もお強いんですね?!」

「いや、俺は強くないですよ。ゴブリン1匹倒すのがやっとです」

「え、でもジン様も異世界人なんですよね?」

「ええ、でも勇者じゃありません。魔物と戦う力は勇者達しか持ってませんよ」

「勇者様方はやはり異世界でも強かったんでしょうか?」

「どうでしょう?喧嘩はしてたでしょうけど、人どころか虫も殺した事ないんじゃないでしょうか?」

「もしかして異世界は平和なんですか?」

「まあ魔物がいないという意味では平和でしたけど、この世界は大国が仲がいいですからね。そういう意味では向こうのほうがギスギスしてたかもしれませんね」

 やはりただの異世界人と勇者の区別が出来てないようで、俺にも尊敬の目をむけている。

 俺は今回、公式に異世界人として訪問する事になっている。誤召喚ではなく最初から4人の召喚だったという形にして。ただ、勇者が3人なのは人間側の力不足となっている。誤召喚よりもその方がマシらしい。

 他の国は勇者は3人もいれば十分、それよりも女神様と話が出来る俺が召喚された方が重要だという意見で一致し、晴れて俺の存在が公表されたのだ。召喚を担当したリリアーナさんには罰として白金貨10枚の罰金となった。
 各国はどちらかというと俺を召喚した事で褒美を出したい感じだったが、公式には一部失敗なので罰は必要だったらしい。


「それにしてもこれだけ平野が広がってるのはすごいですね。開拓とかはしないんでしょうか?」

「あ、それはですね、この辺りは魔力だまりが多いらしくて魔物が頻繁に発生するんですよ。なので何度か開拓を試みても失敗したとか。この辺まで麦が育てばパンも安くなるんでしょうね」

「あ、やっぱり帝国の食料は高いんですか?歴史書でしか知らないんですけど、他国からの輸入に頼ってるとか」

「はい。詳しくは知りませんけど、他国の商人から買い取るのが多いそうです。噂では他の国の倍ほどしてるとか。私たちにとっては普通なんで実感はないんですけどね」

 なるほど。生まれた時から高ければ高いとは思わないかもね。でもそれでも生活できるって事は稼ぎも大きいんだろうか。鉱物資源で稼いでるみたいだし、国が補助とかしてそうだな。

「ちなみに冒険者が泊まる宿なんかはいくらくらいですか?」

「冒険者の泊まる宿ですか。うーん、大銅貨7枚ほどでしょうか?詳しくなくてすいません」

 ああ、メイドって住み込みだろうから宿の値段なんて知らないわな。

「ああいや良いんですよ。普段使わないでしょうし。料理とかは特徴があったりするんですか?」

「そうですねー、他国の方からは辛いと聞いたことがありますね。山に辛味のある香辛料が自生してるので辛いのは豊富にあるんですよ」

 なるほど。胡椒とかは少ないけど、山の恵みはあると。

「なら果実とかはどうですか?」

「結構豊富ですよ?リンゴとかは冬でも取れますし、夏はぶどうとかが取れます。土地が痩せてても収穫できるので結構安く買えますよ」

「それは良いですね。じゃあアップルパイとかも美味しそうですね」

「え?果物を焼くんですか?」

「あれ、焼かないんですか?アップルパイおいしいですよ?」

「すいません、もしかしたらあるのかもしれませんけど、リンゴを焼いたのは食べたことがないです」

 なんとリンゴがたくさん取れるのにアップルパイがないとは。俺も作り方は知らないけど、パイが作れるなら上に乗せて蜂蜜でもかけて焼けばおいしいはず。

「なら帝都にいる間に一度くらいは作ってもらいましょうか。俺も作り方は知らないんで料理人任せになりますが」

「あ、でもこれから夏なんでリンゴはないかも」

「ああ、そうですね。じゃあ、ぶどうですか。うーん、ブドウは焼いてもそれほど美味しくないですしね。ジャムくらいでしょうか」

「ジャム?ですか?」

「あれ、ジャムないんですか?」

「なんですかそれは?」

「果物を砂糖で煮込んだものですけど」

「甘い果物をさらに砂糖で煮るんですか?」

「ええ、保存が効くんで便利ですよ。パンに塗ってもおいしいですしね」

 たかが果物を砂糖で煮込んだだけのジャムがないなんて。もしかして果物はそのまま食べるしか方法がないんだろうか?
 あ、砂糖が高いんだっけ。小さなツボ一つで銀貨何枚もした気がする。ジャムは大量に砂糖が必要だから超高級スイーツになりそうだな。


 そんな雑談としながら途中で街に寄りながら帝都に向かうのだった。

ーーーー
ハンバルニ王国ではお茶会で普通に食べてましたが、帝国では珍しいです。砂糖がとても高いので。
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