元おっさんの幼馴染育成計画~ほのぼの集~

みずがめ

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野球しようぜ!⑤(小学五年生)

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 身近で見ると本当に大きい体だ。
 キャッチャーをやっている姿からでも大きいとは思っていたけど、打席に立った田中くんは雰囲気も相まって見た目以上に大きく感じる。
 一つ下の学年である森田も大きい体だったものだが、田中くんはそれ以上である。学年的に考えても、彼が学校で一番大きい体躯の持ち主なのだろう。本当に小学生かってくらいでかい。
 いかにもかっ飛ばしそうな見た目をしている。否応なく警戒心が跳ね上がった。
 ツーアウトなんだ。厳しいところを攻めていこう。
 本郷の全力投球。迫りくる球を、田中くんは軽々と打った。

「ファール!」

 引っ張られた打球はラインの外側を通過する。というかかなり飛ばされた。この河川敷のグラウンドはそう広いわけでもない。軟球とはいえホームランもあり得る。
 しかし、打たれた本郷は委縮するどころか口の端を上げてみせた。好戦的な笑みにしか見えない。

「ファール!」

 続く球は内角を攻めた。フルスイングされ、真後ろへと弾かれる。
 ツーストライクに追い込んだ。でも、タイミングが合っているようにも思える。
 一回ボール球を要求するか? 二球とも振ってきているし、打ち気を逸らした方がいいだろう。
 そう思うのに、本郷があまりにも楽しそうな顔をしているもんだから、そのまま真っ向勝負させてやろうとミットを構えてしまった。
 結果は、敗北である。
 打球は綺麗に左中間を真っ二つにした。打った瞬間に走り出していた一塁ランナーの坂本くんが本塁ベースを踏んで同点に追いつかれた。打った田中くんは二塁ベースで止まる。
 鮮やかなタイムリーツーベース。俺はタイムをかけて本郷のもとへと駆け寄った。

「なあ高木」

 俺が声をかけるよりも早く、本郷が口を開いた。

「野球も、けっこう面白いもんだな」

 そう言って、心底楽しそうに笑った。本郷の清々しい態度にスポーツマンというものを見た気がした。

「だけど、打たれるのもここまでだ。もう打たせねえから、しっかり捕ってくれよな相棒!」
「おうよ!」

 わざわざ元気づけにマウンドに行ったってのに、逆にこっちが激励された気分だ。
 こういうところが本郷のすごい部分なんだろうな。勝負事では前向きなのが味方の士気を上げてくれる。単純だけどさ、言葉をかけられて俺もちょっとやる気が上がってきた。
 打たれたショックで落ち込んでもおかしくない場面で、言葉通りに後続をしっかり抑えてくれた。同点で二回の攻防へと移る。次は俺達の攻撃だ。

「みんなお疲れ様っ!」

 ベンチに戻れば葵ちゃんが出迎えてくれる。みんなにタオルを渡したりして甲斐甲斐しい。すっかりマネージャーが板についていた。そんな彼女も一応助っ人枠である。

「トシくん、私気になったことがあるんだけど」
「気になったこと?」
「うん。ここから見ていて、ずっと気になっていたの」

 真面目な顔をする葵ちゃん。プレーを見ていて気付いたこと……。もしかして、癖か何かに気づいたってことか?
 俺の内心を肯定するかのように葵ちゃんが小さく頷く。俺は黙って続きを促した。

「打った時、どうしてみんなあっちに向かって走るの?」

 葵ちゃんは手をくるっと回しながら疑問を訴えた。俺は真顔になった。
 どうすれば点が入るのかという以前に、基本的な走塁のルールすらわかっていなかったらしい。葵ちゃんなりに考えた作戦として、いろんな塁に走った方が相手をかく乱できるのでは、と提案されてしまった。
 どうやら、ベンチにいる時間は葵ちゃんへの説明タイムにもなりそうだ。
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