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1.その格好はいけません
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俺が生まれ育った村はなんともさびれたものである。
山や川に囲まれて、自然豊かと言えばそうなのだろうが、華やかな都とは縁遠かった。
そもそも物理的な距離が遠すぎた。一番近い町に行くだけでもそれなりの旅支度が必要なほどに。
人口は少ないものの、普通に住むだけなら問題なんかない。俺だって、別に村を嫌ってるわけじゃないんだ。
だけど、この村にもたまに商人や吟遊詩人が訪れるのだ。そして語るは華やかな都や勇ましい冒険譚。村の子供たちは夢を知った。
こうなれば成人した子供たちが将来をどう選択するかは自明の理である。
「テッドーー!! ついに今日! 今日という日が来たぞ! これで私も十五歳、晴れて大人の仲間入りだーー!!」
元気な大声が我が家を揺らす。近所の子供……いや、大人のお出ましだ。
出迎えに出てみれば、まず目立つ金髪が目に入る。それから勝気な目と目が合ってしまった。見るからに柔らかそうな唇の端が上がる。
「フィーナ、獣みたいに大声を上げるのをやめろと何度も言……って」
「そんなこと言ってー。テッドも私の誕生日を祝いたいだろう? 十五歳になった私は自由を得た! さあ、いっしょに冒険者になろう!」
子供のように騒がしいが、十五歳から成人として認められる以上、目の前の女性を大人として見てやらねばならないだろう。
もともと騒がしいフィーナという少女。まだまだガキンチョみたいな性格なのだが、外面だけなら見目麗しい女性である。
みずみずしい肌は血色が良く、同年代の中でも成長が早いようで、肉づきのある立派な女の体は村の男どもの注目を集めている。本人はそんな下品な視線など意に介した様子はないが。
それでも、だとしても……、その格好はないだろ!
「フィーナ! お前なんて格好しているんだよ!」
「へっへーん。気づいた?」
得意げにはにかむフィーナ。どうやら事の重大さをわかっていないようだ。
フィーナはご機嫌な調子で、その場でくるりと一回転してみせた。金髪がキラリと舞い、むき出しになっている肩へと落ちる。
「このビキニアーマーは魔法が付与されててね、軽いのに防御力がぐーんと高くなってるんだ。すごいでしょ? これから冒険者になるんだからってお父さんがプレゼントしてくれたの!」
そう、フィーナが装備しているのはビキニアーマーなのである。
はっきり言って胸と股間しか守られていない防具である。それ以外に体を覆っているものは何もなく、フィーナのみずみずしくもさらなる成長を期待させる肌が惜しげもなくさらされていた。
なぜ防具なのに肌の露出があるのか。製作者の意図は不明である。もしかしたら魔法防御を円滑に行うためには肌の露出が必要不可欠なのかもしれない。んなバカな。
この際理由なんてどうでもいいよ。これじゃあ痴女じゃん。防御力がどれだけ高かろうが、社会からは守ってくれないよ。
このままフィーナが旅立って冒険者になってしまったら……。うん、故郷が痴女を輩出した村として名を残してしまいそうだ。
これでも近所の優しいお兄さんとしてフィーナと付き合ってきた。このまま旅立たせてしまうのは忍びない。つーか恥ずかしい!
ここは年上として、妹分の暴挙を止めてやらねばなるまい。
「フィーナ、今すぐそれを脱ぎなさい」
「へ? テッド? どうしたんだ急に?」
「いいから! その格好はダメだ。すぐに脱ぎなさい」
困惑しているところ悪いが、こればかりはしっかり注意してやらないとな。優しいだけが兄貴分の役割ではない。
「で、でも……」
渋っている。父親からプレゼントされた祝い品だ。それも高価なものだろう。惜しむ気持ちもわかるが、村から痴女を出すわけにはいかない。
それに、中身はどうあれフィーナの見てくれはいいのだ。野蛮な冒険者に絡まれでもしたらと考えると気が休まらない。
本人のためにもビシッと言ってやろう。
「嫌がる気持ちがわからないわけじゃない。だがなフィーナ、俺の気持ちもわかってほしい。だから……脱いでくれ」
「~~!」
フィーナの顔が真っ赤になる。ようやく恥じらいをわかってくれたのだろう。これが十五歳。大人の仲間入りだ。
「わ……かった。テッドがその気になってくれたなら……その、嬉しい……。わ、私も大人になったんだからな!」
俺の気持ちがわかってくれたらしい。よかったよかった。
しかしフィーナ。ここで予想外の行動に出た。
いきなり「えいやっ!」と叫ぶと同時にビキニアーマーをカチャカチャいじり始めたのである。
間もなく派手な音を立ててビキニアーマーが床へと落下した。そうなればフィーナを守るものは本当に何もなく、豊満な肌色が目の前に広がった。
固まる俺。顔を赤くしたまま震えるフィーナ。
「何? うるさいんだけど──」
そして物音に反応した妹が、俺とフィーナを視認した。
……俺、なんか間違えたかなぁ?
山や川に囲まれて、自然豊かと言えばそうなのだろうが、華やかな都とは縁遠かった。
そもそも物理的な距離が遠すぎた。一番近い町に行くだけでもそれなりの旅支度が必要なほどに。
人口は少ないものの、普通に住むだけなら問題なんかない。俺だって、別に村を嫌ってるわけじゃないんだ。
だけど、この村にもたまに商人や吟遊詩人が訪れるのだ。そして語るは華やかな都や勇ましい冒険譚。村の子供たちは夢を知った。
こうなれば成人した子供たちが将来をどう選択するかは自明の理である。
「テッドーー!! ついに今日! 今日という日が来たぞ! これで私も十五歳、晴れて大人の仲間入りだーー!!」
元気な大声が我が家を揺らす。近所の子供……いや、大人のお出ましだ。
出迎えに出てみれば、まず目立つ金髪が目に入る。それから勝気な目と目が合ってしまった。見るからに柔らかそうな唇の端が上がる。
「フィーナ、獣みたいに大声を上げるのをやめろと何度も言……って」
「そんなこと言ってー。テッドも私の誕生日を祝いたいだろう? 十五歳になった私は自由を得た! さあ、いっしょに冒険者になろう!」
子供のように騒がしいが、十五歳から成人として認められる以上、目の前の女性を大人として見てやらねばならないだろう。
もともと騒がしいフィーナという少女。まだまだガキンチョみたいな性格なのだが、外面だけなら見目麗しい女性である。
みずみずしい肌は血色が良く、同年代の中でも成長が早いようで、肉づきのある立派な女の体は村の男どもの注目を集めている。本人はそんな下品な視線など意に介した様子はないが。
それでも、だとしても……、その格好はないだろ!
「フィーナ! お前なんて格好しているんだよ!」
「へっへーん。気づいた?」
得意げにはにかむフィーナ。どうやら事の重大さをわかっていないようだ。
フィーナはご機嫌な調子で、その場でくるりと一回転してみせた。金髪がキラリと舞い、むき出しになっている肩へと落ちる。
「このビキニアーマーは魔法が付与されててね、軽いのに防御力がぐーんと高くなってるんだ。すごいでしょ? これから冒険者になるんだからってお父さんがプレゼントしてくれたの!」
そう、フィーナが装備しているのはビキニアーマーなのである。
はっきり言って胸と股間しか守られていない防具である。それ以外に体を覆っているものは何もなく、フィーナのみずみずしくもさらなる成長を期待させる肌が惜しげもなくさらされていた。
なぜ防具なのに肌の露出があるのか。製作者の意図は不明である。もしかしたら魔法防御を円滑に行うためには肌の露出が必要不可欠なのかもしれない。んなバカな。
この際理由なんてどうでもいいよ。これじゃあ痴女じゃん。防御力がどれだけ高かろうが、社会からは守ってくれないよ。
このままフィーナが旅立って冒険者になってしまったら……。うん、故郷が痴女を輩出した村として名を残してしまいそうだ。
これでも近所の優しいお兄さんとしてフィーナと付き合ってきた。このまま旅立たせてしまうのは忍びない。つーか恥ずかしい!
ここは年上として、妹分の暴挙を止めてやらねばなるまい。
「フィーナ、今すぐそれを脱ぎなさい」
「へ? テッド? どうしたんだ急に?」
「いいから! その格好はダメだ。すぐに脱ぎなさい」
困惑しているところ悪いが、こればかりはしっかり注意してやらないとな。優しいだけが兄貴分の役割ではない。
「で、でも……」
渋っている。父親からプレゼントされた祝い品だ。それも高価なものだろう。惜しむ気持ちもわかるが、村から痴女を出すわけにはいかない。
それに、中身はどうあれフィーナの見てくれはいいのだ。野蛮な冒険者に絡まれでもしたらと考えると気が休まらない。
本人のためにもビシッと言ってやろう。
「嫌がる気持ちがわからないわけじゃない。だがなフィーナ、俺の気持ちもわかってほしい。だから……脱いでくれ」
「~~!」
フィーナの顔が真っ赤になる。ようやく恥じらいをわかってくれたのだろう。これが十五歳。大人の仲間入りだ。
「わ……かった。テッドがその気になってくれたなら……その、嬉しい……。わ、私も大人になったんだからな!」
俺の気持ちがわかってくれたらしい。よかったよかった。
しかしフィーナ。ここで予想外の行動に出た。
いきなり「えいやっ!」と叫ぶと同時にビキニアーマーをカチャカチャいじり始めたのである。
間もなく派手な音を立ててビキニアーマーが床へと落下した。そうなればフィーナを守るものは本当に何もなく、豊満な肌色が目の前に広がった。
固まる俺。顔を赤くしたまま震えるフィーナ。
「何? うるさいんだけど──」
そして物音に反応した妹が、俺とフィーナを視認した。
……俺、なんか間違えたかなぁ?
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