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31.千夏ちゃんの変化
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──あれから大変だった。
千夏ちゃんの家の前であれだけ騒いでいたのだ。
「これは一体なんの騒ぎだ!?」
彼女の両親に気づかれてもおかしくない。千夏ちゃんのお父様とお母様の登場に、今までとは違った緊張が走った。
「何? 何があったのよ健太郎!?」
さらに隣の家から大迫の両親も出てきた。そういえばお隣さんだったもんな。
ここで前に出たのは千夏ちゃんだった。
彼女はオブラートに包みつつ事情を説明した。大迫が変に反論するかと冷や冷やしたけれど、黙って千夏ちゃんの話を肯定していた。
千夏ちゃんの両親はもちろん、大迫の両親も話を信じてくれた。さすがは千夏ちゃんだ。信頼度が全然違うね。
「うちの子がそんなに迷惑をかけていただなんて……。ちーちゃんも、あなたもごめんなさいね。また謝罪に伺わせてください。でも今は、健太郎に説教をさせて」
大迫の母親は律儀な人だった。
千夏ちゃんへの謝罪はともかく、俺は別に被害に遭ったわけじゃないから遠慮したのだけど、また今度謝罪に伺うと引かなかった。
大迫は父親に引きずられながら家の中へと消えていった。このことを親に説教されると思うと、年頃の男子にとっては地獄のような苦しみかもしれない。
「それで、君が……千夏の彼氏なのかい?」
「は、はいっ。佐野将隆と申しますお父様!」
「お、お父様?」
「あっ、いや……」
準備も何もなく、成り行きで彼女の両親に紹介されてしまった。唐突なごあいさつに、俺も何を言ったのかはっきりとは覚えていない。
覚えているのは彼女の両親に紹介されている間も、千夏ちゃんに抱きつかれていたということだけだ。
そのおかげなのか、しどろもどろになる俺を、千夏ちゃんの両親は温かい目で見ているように感じた。
とにもかくにも、これで一件落着したのであった。
※ ※ ※
その後、千夏ちゃんに変化があった。
「私達が付き合っていることを隠すのはもうやめましょう」
と、千夏ちゃんが言い出したのだ。
「本当にいいの?」
「うん……今まで私のワガママに付き合わせてごめんね。これからは、マサくんのことを……胸を張って私の彼氏です、って言いたいの……」
そう言い切って、千夏ちゃんはぼぼぼっと顔を沸騰させた。
可愛かったので、もちろん抱きしめてキスをした。あったかくて甘い味がした。
※ ※ ※
そんなわけで、俺と千夏ちゃんが付き合っているということがあっという間にクラス中に広まった。
「マサってさぁ」
「ん?」
「杉藤さんと付き合ってるって話、本当なの?」
「本当だよ」
隣席女子からの質問に、俺は力強く頷いた。
千夏ちゃんが俺の彼女……。それを堂々と言えることのなんと快感であることか……。
今までは友達の恋人自慢に「この野郎っ」という気持ちが少なからずあったものだけど、自分が同じ立場になるとすごくよくわかる。すれ違うだけの見知らぬ人にさえ「可愛い千夏ちゃんは俺の彼女なんだぜ」とウザ絡みしたい気分なんだもんな。
「へぇー、やったじゃん」
「応援してくれていたもんな。ありがとうよ」
「てかさ、本当はもっと前から付き合ってたでしょ?」
隣席女子はにまにまと笑っていた。
なんだこの既視感は。以前、友達グループに千夏ちゃんと付き合っていることが見抜かれていた時の雰囲気と似ている。
「二人して態度に出過ぎだもん。わかりやすすぎてこっちが甘酸っぱい気持ちになっちったっての」
「そ、そんなに態度に出てた?」
「出てた出てた」
「マジかー」
俺は隠してたつもりだったんだけどな。身近な人にはわかってしまうものらしい。
「で? 杉藤さんのどんなとこが好きなのよ」
「え、それ聞いちゃう? けっこう語るけど、聞いてくれちゃう?」
「うわー、マサってばノロケがうざいタイプだったかー」
「そういうことはせめて俺が語ってから言えよ」
せめて千夏ちゃんの可愛いところ一〇〇個くらい言わせてほしい。俺が満足するにはその倍を語りたいところなんだけどね。
「マサくん」
千夏ちゃんに声をかけられて姿勢を正す。
「マサくんのお弁当を作ってきたけど……良かったのよね?」
「うんっ。千夏ちゃんの手作り弁当を食べるのが俺の夢だったんだよ」
「も、もうっ……からかわないでよっ」
「からかってないよ。本気で言ってる」
「~~っ」
恥ずかしくなっちゃったのか、千夏ちゃんは顔を赤くした。昼休みがとても待ち遠しくなった。
次の授業のチャイムが鳴ったので、千夏ちゃんはぺこりと頭を下げて、早足で自分の席へと戻った。
「愛妻弁当かぁ。なんていうか……マジで杉藤さん可愛くなったね」
「だろ。元から可愛いからな」
「いや、態度がさ。初々しい新妻って感じじゃん」
新妻……。やべえ新婚生活を想像しちゃうだろ。
先生が授業を始める。隣席女子は小声で続けた。
「あれは尽くすタイプだね。……いろんな意味で」
「ん? どういう意味だよ?」
隣席女子のにまにま笑顔が濃くなった。
「杉藤さんは、男を幸せにする女ってことよ」
千夏ちゃんの家の前であれだけ騒いでいたのだ。
「これは一体なんの騒ぎだ!?」
彼女の両親に気づかれてもおかしくない。千夏ちゃんのお父様とお母様の登場に、今までとは違った緊張が走った。
「何? 何があったのよ健太郎!?」
さらに隣の家から大迫の両親も出てきた。そういえばお隣さんだったもんな。
ここで前に出たのは千夏ちゃんだった。
彼女はオブラートに包みつつ事情を説明した。大迫が変に反論するかと冷や冷やしたけれど、黙って千夏ちゃんの話を肯定していた。
千夏ちゃんの両親はもちろん、大迫の両親も話を信じてくれた。さすがは千夏ちゃんだ。信頼度が全然違うね。
「うちの子がそんなに迷惑をかけていただなんて……。ちーちゃんも、あなたもごめんなさいね。また謝罪に伺わせてください。でも今は、健太郎に説教をさせて」
大迫の母親は律儀な人だった。
千夏ちゃんへの謝罪はともかく、俺は別に被害に遭ったわけじゃないから遠慮したのだけど、また今度謝罪に伺うと引かなかった。
大迫は父親に引きずられながら家の中へと消えていった。このことを親に説教されると思うと、年頃の男子にとっては地獄のような苦しみかもしれない。
「それで、君が……千夏の彼氏なのかい?」
「は、はいっ。佐野将隆と申しますお父様!」
「お、お父様?」
「あっ、いや……」
準備も何もなく、成り行きで彼女の両親に紹介されてしまった。唐突なごあいさつに、俺も何を言ったのかはっきりとは覚えていない。
覚えているのは彼女の両親に紹介されている間も、千夏ちゃんに抱きつかれていたということだけだ。
そのおかげなのか、しどろもどろになる俺を、千夏ちゃんの両親は温かい目で見ているように感じた。
とにもかくにも、これで一件落着したのであった。
※ ※ ※
その後、千夏ちゃんに変化があった。
「私達が付き合っていることを隠すのはもうやめましょう」
と、千夏ちゃんが言い出したのだ。
「本当にいいの?」
「うん……今まで私のワガママに付き合わせてごめんね。これからは、マサくんのことを……胸を張って私の彼氏です、って言いたいの……」
そう言い切って、千夏ちゃんはぼぼぼっと顔を沸騰させた。
可愛かったので、もちろん抱きしめてキスをした。あったかくて甘い味がした。
※ ※ ※
そんなわけで、俺と千夏ちゃんが付き合っているということがあっという間にクラス中に広まった。
「マサってさぁ」
「ん?」
「杉藤さんと付き合ってるって話、本当なの?」
「本当だよ」
隣席女子からの質問に、俺は力強く頷いた。
千夏ちゃんが俺の彼女……。それを堂々と言えることのなんと快感であることか……。
今までは友達の恋人自慢に「この野郎っ」という気持ちが少なからずあったものだけど、自分が同じ立場になるとすごくよくわかる。すれ違うだけの見知らぬ人にさえ「可愛い千夏ちゃんは俺の彼女なんだぜ」とウザ絡みしたい気分なんだもんな。
「へぇー、やったじゃん」
「応援してくれていたもんな。ありがとうよ」
「てかさ、本当はもっと前から付き合ってたでしょ?」
隣席女子はにまにまと笑っていた。
なんだこの既視感は。以前、友達グループに千夏ちゃんと付き合っていることが見抜かれていた時の雰囲気と似ている。
「二人して態度に出過ぎだもん。わかりやすすぎてこっちが甘酸っぱい気持ちになっちったっての」
「そ、そんなに態度に出てた?」
「出てた出てた」
「マジかー」
俺は隠してたつもりだったんだけどな。身近な人にはわかってしまうものらしい。
「で? 杉藤さんのどんなとこが好きなのよ」
「え、それ聞いちゃう? けっこう語るけど、聞いてくれちゃう?」
「うわー、マサってばノロケがうざいタイプだったかー」
「そういうことはせめて俺が語ってから言えよ」
せめて千夏ちゃんの可愛いところ一〇〇個くらい言わせてほしい。俺が満足するにはその倍を語りたいところなんだけどね。
「マサくん」
千夏ちゃんに声をかけられて姿勢を正す。
「マサくんのお弁当を作ってきたけど……良かったのよね?」
「うんっ。千夏ちゃんの手作り弁当を食べるのが俺の夢だったんだよ」
「も、もうっ……からかわないでよっ」
「からかってないよ。本気で言ってる」
「~~っ」
恥ずかしくなっちゃったのか、千夏ちゃんは顔を赤くした。昼休みがとても待ち遠しくなった。
次の授業のチャイムが鳴ったので、千夏ちゃんはぺこりと頭を下げて、早足で自分の席へと戻った。
「愛妻弁当かぁ。なんていうか……マジで杉藤さん可愛くなったね」
「だろ。元から可愛いからな」
「いや、態度がさ。初々しい新妻って感じじゃん」
新妻……。やべえ新婚生活を想像しちゃうだろ。
先生が授業を始める。隣席女子は小声で続けた。
「あれは尽くすタイプだね。……いろんな意味で」
「ん? どういう意味だよ?」
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