脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~

みずがめ

文字の大きさ
16 / 43

15.髪は大切にしてあげて

しおりを挟む
「お帰りなさいませご主人様! ……って祐二様だ。おーい琴音ちゃーん、祐二様来たよー!」

 琴音ちゃんがバイトをする日を狙ってメイドカフェへと遊びに行く。そんなことを続けていたら他のメイドさんに顔を覚えられてしまった。

「あっ、祐二様。お帰りなさいませ」

 他のメイドさんが俺のことを「祐二様」と呼ぶもんだから、琴音ちゃんもその呼び方に慣れてきたみたいだ。まあ最初は琴音ちゃんが呼んでいたのを他のメイドさんがマネしたからなんだけどね。
 学校では「先輩」、メイドカフェでは「ご主人様」。どちらも扱われ方として申し分ない。むしろ二度おいしいのでもっとやってくれ!
 俺の専属メイドとして扱われている琴音ちゃんが席へと案内してくれる。
 俺とは知り合いと説明しているようで、手が空いている時は琴音ちゃんが接客してくれる。メイドさん公認とか、この特別扱いは嬉しいね。

「最近雨ばっかりで嫌になるよねー」

 会話の定番、天気の話。天気デッキは最強です。

「梅雨なんですからしょうがないですよ。でも湿度が高いのは確かに嫌ですね。髪がまとまらないですし」

 琴音ちゃんは自分のツインテールを撫でる。いつも通りのバッチリツインテール。苦労知らずのサラサラヘアーに見えるのは、彼女がそれだけ努力しているという証なのか。

「お姉ちゃんはそんなことないんですけどね。いつも髪の毛サラサラで惚れ惚れしちゃいますよ」

 それブーメランでは? 彼女のサラサラヘアーに俺が惚れ惚れしちゃってるよ。

「ふぅん。サラサラツインテールの琴音ちゃんがそんなこと言いますか。もっさり頭の俺への宣戦布告と見た」
「え、い、いえ祐二様の髪のことは別に……」

 とか言いつつ視線が俺の頭へと注がれる。
 小爆発したみたいな惨状。これでもおしゃれに気を遣ってワックスつけてみたんだぜ? なのにどうしてこうなった……。

「……祐二様の髪、ちょっと伸びてます?」
「ん? まあ、そろそろ切らなきゃかな」

 前髪を摘まんでみると眉毛にかかるくらいの長さになっていた。後ろはもっと伸びてるように感じる。そろそろ切り時か。
 おしゃれさんはこまめに美容院に行くのかね。俺の場合は伸びたと思ったら行く、って感じ。そう感じるのに二、三か月はかかる。

「あたし、切りましょうか?」
「え?」
「祐二様の髪、整える程度でよければですけど」

 彼女から髪をカットしようかと提案された。
 髪は長い友という。もしくは女の命とも。とにかく人にとって髪は大切な部分である。
 それを彼女から触れるという。大事なところを触られるだなんて……ドキドキするね。

「じゃあ、お願いしようかな……」
「はい! ではまた予定を話し合いましょうね」

 笑顔でビシッと敬礼された。なぜに? そんなツッコミは野暮なのでしないけどな。
 敬礼から流れるように奥へと引っ込んでいく琴音ちゃん。だがすぐに戻ってきた。

「も、申し訳ありません! ご注文を聞くのを忘れていました……」

 うん、ここはメイドカフェだもんね。琴音ちゃんのためにも売上に貢献しようか。それで今のうっかりをなかったことにしておくれ。


  ※ ※ ※


 突然だが、俺は父親と一軒家で二人暮らしをしている。
 母親は俺が幼少の頃に他界している。父親はいっしょに住んでいるとはいっても、仕事が忙しくて顔を合わせるのが珍しいほどだ。
 実質一人暮らししているのとさほど変わらない。ちょっと学園もののラノベ主人公っぽくてテンション上がってた時期があったが、美少女と同居するという未来が微塵も見えないので平静を保てるようになった。

 な・の・に・だ!

「お、お邪魔しますっ!」

 琴音ちゃんが俺の家にやってきた。夢でも幻でもない。これは真実である。紛うことなき現実なのだ。
 俺の髪を切ってくれると、琴音ちゃんは言ってくれた。
 ドキドキしながらお願いしたはいいものの、問題は場所だ。
 さすがに琴音ちゃんの家にお邪魔するわけにはいかない。路上でカットするのは変なパフォーマンスに思われそうだし何より恥ずかしい。公園も同じく。というか外はやめてくださいと言われてしまった。
 で、俺の家という話になった。
 彼氏彼女とはいえ、家である。抵抗されるかと思って口にしたってのに、琴音ちゃんは名案です、と言わんばかりの笑顔で了承した。了承してしまったのである。
 この子警戒心とかちゃんと働いてんのかな? そんな心配をしながらも、本日彼女を家に招き入れてしまった。
 当然のように父親は仕事で留守だ。つまり二人きり……。若い男女が二人きりなのである!
 もってくれよ俺の理性。自分のことだってのに願わずにはいられない。神頼みしたくなるほどに、自分が信用できなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...