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22.学園のアイドルと放課後デート(嘘)
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「会田くん、放課後……少し付き合ってほしいのだけれど……いいかしら?」
放課後になってすぐ、隣の藤咲さんからそんなことを言われてしまった。
いや意味わからんし。突然のお誘いに脳がフリーズする。
頭を整理する。
俺と藤咲さんは友達ではない。放課後二人でどこかへお出かけしたこともない。そもそも彼女のプライベートを何一つ知らないのだ。
「えっと、『みんな』でどこかに遊びに行くお誘いかな?」
「いいえ。私と会田くん、『二人』だけで、よ……」
なあにこの状況?
意味深だと感じるのは俺の自意識過剰か。今までになかったことだ。何かあるに違いないが、あり得ない状況すぎて考えがまとまらない。
「な、なぜ藤咲さんがあんな奴なんかに……っ」
「彼氏を作るどころか男子を遊びに誘うことすらなかったはずなのに……」
「もしかして勝負して友情が芽生えちゃった的な? あははー……、んなバカな!」
俺の戸惑い以上に教室中がパニックを起こしていた。
ざわざわどころではない騒ぎである。学園のアイドルという立場はこんなことでも注目されてしまうらしい。
「いいよ。とにかく教室から出よう」
「そうね。昇降口まで急ぎましょう」
小声で素早くやり取りする。面倒になりそう、という気持ちは一致したらしい。
とりあえず話を聞いてから判断しよう。今日は琴音ちゃんはバイトだ。時間はある。
昇降口へと向かいながら、藤咲さんが俺に何の用があるのかと考える。
実は俺にほのかな恋心を……。なんて思春期男子みたいな勘違いは起こさない。一回振られてるし。
思いつくのは本日の水泳勝負。なぜ勝負を仕掛けてきたのかと気になったとか? いやいや、気にはなるかもだけどそんなことで貴重な放課後の時間を潰したりしないだろう。
昇降口へとたどり着く。俺は藤咲さんに向かって口を開いた。
「俺に用があるんだろ? 早く言ってくれよ」
それがわからないとドキドキしてしょうがない。このドキドキは甘酸っぱい意味ではなく、わけわからん状況の恐怖からである。
藤咲さんは辺りを見回す。放課後になってすぐとはいえ、下校しようとする生徒がそれなりの人数いた。
「静かに話ができる場所に行きたいわ」
これ勘違い狙ってんのかな? だが耐性を持っている俺には通用しない。華麗に無効化する。
靴を履き替えた藤咲さんが「ついてきて」というものだから素直に後を追う。我ながら従順だな。
「どこまで行くんだ?」
「駅前の喫茶店でどうかしら?」
さらっと喫茶店が選択肢に出てくるんだ。女子は喫茶店でおしゃべりするものなのだろうか? 俺はメイドカフェ以外の喫茶店には行ったことがない。
スタスタと歩いて目的地へと向かう。競歩かな?
藤咲さんが俺という男子と二人で歩いているってのに校内ではあまり注目されなかった。
まあ俺は距離を取ってましたからね。隣り合って歩くとか、藤咲さん相手に無理だって。
そんなわけで、学園の敷地から出ても一定の距離を保っていた。後ろからだと流れる黒髪が綺麗ですね。美少女はどんな角度からでも綺麗って得だよ。
「会田くん? そんなに離れているとはぐれてしまうわ」
藤咲さんが振り返る。滑らかな動きで黒髪が舞った。男を虜にする美貌が向けられる。
彼女は本当に得だなと思う。
でもそれは間違った印象なんだとも感じた。たぶん、琴音ちゃんと比べてしまったからだ。
「子供じゃないんだからはぐれたりしないよ」
まあそれを装って逃げてもいいかなと思ったのは事実なんだけども。
藤咲さんが案内してくれた喫茶店は、前に俺と琴音ちゃんが映画を観に行ったところからすぐ近くだった。
本来なら映画を観て、喫茶店でお茶をしながら感想を言い合うって感じの場所なのだろうか。あの時は遅い時間になってしまったが、次の機会があるのならデートプランに組み込んでみよう。
喫茶店に入る。落ち着いた暖色と静かで心地のいい音色が出迎えてくれた。パステルカラーとキュンキュンするBGMに慣れていただけに、想像以上の大人っぽさに圧倒される。
藤咲さんは慣れたように目立たない端っこの席に座った。俺もその向かいに座る。
おおっ! まるであの学園のアイドルとデートしているみたいだ! やべえよすげえよ!
……と、普段の俺ならとりあえずはしゃいでしまう状況ではあるのだが、目の前の藤咲さんからピリピリとした緊張感が伝わってくる。余計なことをせず黙っておく。
「突然こんなところまで付き合わせてごめんなさい」
そう言って彼女は頭を下げた。
カースト上位者が殊勝な態度を見せると、俺のような者は恐縮してしまうものである。
「大丈夫。大丈夫だから頭を上げてくれ。まず用件を聞かなきゃ反応に困る」
「大丈夫」の連呼に俺焦ってんだなと感じた。言ってることは間違ってないはずだし、問題ないよな、うん。
藤咲さんは「そうよね」と顔を上げた。
俺の目の前で小さく深呼吸。それで意を決したようで、真剣な眼差しで俺を射抜いてきた。
「琴音のことで、話があるの」
ここでギクリとした俺は悪くない。
俺と琴音ちゃんが付き合っているとは知らないはずだ。彼女とも公言しない方がいんじゃね、とすでに話し合った。藤咲さんには弁明だってした。
なのに俺に琴音ちゃんの話? 嫌な予感しかしない。
「まずはこれを見てちょうだい」
怯む俺なんぞ知らないとばかりに、藤咲さんは話を先へと進める。
彼女は鞄から何かを取り出した。
透明な保存バッグ? 密封された中身を見て、思わず目を見開く。
テーブルの上に置かれたそれは、紛れもなくメイド服だったのだから。
放課後になってすぐ、隣の藤咲さんからそんなことを言われてしまった。
いや意味わからんし。突然のお誘いに脳がフリーズする。
頭を整理する。
俺と藤咲さんは友達ではない。放課後二人でどこかへお出かけしたこともない。そもそも彼女のプライベートを何一つ知らないのだ。
「えっと、『みんな』でどこかに遊びに行くお誘いかな?」
「いいえ。私と会田くん、『二人』だけで、よ……」
なあにこの状況?
意味深だと感じるのは俺の自意識過剰か。今までになかったことだ。何かあるに違いないが、あり得ない状況すぎて考えがまとまらない。
「な、なぜ藤咲さんがあんな奴なんかに……っ」
「彼氏を作るどころか男子を遊びに誘うことすらなかったはずなのに……」
「もしかして勝負して友情が芽生えちゃった的な? あははー……、んなバカな!」
俺の戸惑い以上に教室中がパニックを起こしていた。
ざわざわどころではない騒ぎである。学園のアイドルという立場はこんなことでも注目されてしまうらしい。
「いいよ。とにかく教室から出よう」
「そうね。昇降口まで急ぎましょう」
小声で素早くやり取りする。面倒になりそう、という気持ちは一致したらしい。
とりあえず話を聞いてから判断しよう。今日は琴音ちゃんはバイトだ。時間はある。
昇降口へと向かいながら、藤咲さんが俺に何の用があるのかと考える。
実は俺にほのかな恋心を……。なんて思春期男子みたいな勘違いは起こさない。一回振られてるし。
思いつくのは本日の水泳勝負。なぜ勝負を仕掛けてきたのかと気になったとか? いやいや、気にはなるかもだけどそんなことで貴重な放課後の時間を潰したりしないだろう。
昇降口へとたどり着く。俺は藤咲さんに向かって口を開いた。
「俺に用があるんだろ? 早く言ってくれよ」
それがわからないとドキドキしてしょうがない。このドキドキは甘酸っぱい意味ではなく、わけわからん状況の恐怖からである。
藤咲さんは辺りを見回す。放課後になってすぐとはいえ、下校しようとする生徒がそれなりの人数いた。
「静かに話ができる場所に行きたいわ」
これ勘違い狙ってんのかな? だが耐性を持っている俺には通用しない。華麗に無効化する。
靴を履き替えた藤咲さんが「ついてきて」というものだから素直に後を追う。我ながら従順だな。
「どこまで行くんだ?」
「駅前の喫茶店でどうかしら?」
さらっと喫茶店が選択肢に出てくるんだ。女子は喫茶店でおしゃべりするものなのだろうか? 俺はメイドカフェ以外の喫茶店には行ったことがない。
スタスタと歩いて目的地へと向かう。競歩かな?
藤咲さんが俺という男子と二人で歩いているってのに校内ではあまり注目されなかった。
まあ俺は距離を取ってましたからね。隣り合って歩くとか、藤咲さん相手に無理だって。
そんなわけで、学園の敷地から出ても一定の距離を保っていた。後ろからだと流れる黒髪が綺麗ですね。美少女はどんな角度からでも綺麗って得だよ。
「会田くん? そんなに離れているとはぐれてしまうわ」
藤咲さんが振り返る。滑らかな動きで黒髪が舞った。男を虜にする美貌が向けられる。
彼女は本当に得だなと思う。
でもそれは間違った印象なんだとも感じた。たぶん、琴音ちゃんと比べてしまったからだ。
「子供じゃないんだからはぐれたりしないよ」
まあそれを装って逃げてもいいかなと思ったのは事実なんだけども。
藤咲さんが案内してくれた喫茶店は、前に俺と琴音ちゃんが映画を観に行ったところからすぐ近くだった。
本来なら映画を観て、喫茶店でお茶をしながら感想を言い合うって感じの場所なのだろうか。あの時は遅い時間になってしまったが、次の機会があるのならデートプランに組み込んでみよう。
喫茶店に入る。落ち着いた暖色と静かで心地のいい音色が出迎えてくれた。パステルカラーとキュンキュンするBGMに慣れていただけに、想像以上の大人っぽさに圧倒される。
藤咲さんは慣れたように目立たない端っこの席に座った。俺もその向かいに座る。
おおっ! まるであの学園のアイドルとデートしているみたいだ! やべえよすげえよ!
……と、普段の俺ならとりあえずはしゃいでしまう状況ではあるのだが、目の前の藤咲さんからピリピリとした緊張感が伝わってくる。余計なことをせず黙っておく。
「突然こんなところまで付き合わせてごめんなさい」
そう言って彼女は頭を下げた。
カースト上位者が殊勝な態度を見せると、俺のような者は恐縮してしまうものである。
「大丈夫。大丈夫だから頭を上げてくれ。まず用件を聞かなきゃ反応に困る」
「大丈夫」の連呼に俺焦ってんだなと感じた。言ってることは間違ってないはずだし、問題ないよな、うん。
藤咲さんは「そうよね」と顔を上げた。
俺の目の前で小さく深呼吸。それで意を決したようで、真剣な眼差しで俺を射抜いてきた。
「琴音のことで、話があるの」
ここでギクリとした俺は悪くない。
俺と琴音ちゃんが付き合っているとは知らないはずだ。彼女とも公言しない方がいんじゃね、とすでに話し合った。藤咲さんには弁明だってした。
なのに俺に琴音ちゃんの話? 嫌な予感しかしない。
「まずはこれを見てちょうだい」
怯む俺なんぞ知らないとばかりに、藤咲さんは話を先へと進める。
彼女は鞄から何かを取り出した。
透明な保存バッグ? 密封された中身を見て、思わず目を見開く。
テーブルの上に置かれたそれは、紛れもなくメイド服だったのだから。
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