脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~

みずがめ

文字の大きさ
34 / 43

33.心から彼女に脅されたい(終)

しおりを挟む
 サラサラの亜麻色の長い髪をツインテールにした後輩。健気で可愛くて、とても繊細でたくましい、俺の彼女。
 それが藤咲琴音である。
 最初は、美少女と付き合う思い出が作れたらいい、そんな程度の軽い気持ちだった。わりとゲスな考えである。
 だが、実際に付き合ってみたら楽しくて、彼女との日々を捨て去るのが惜しくなってしまった。なるほど、恋人を作ってリア充になりたがる奴が多いのも納得だ。

「……」

 黙って琴音ちゃんの返事を待つ。
 たぶん十秒も経っていないってのに、もう心が焦ってしょうがない。
 男は忍耐が大切だ。焦る男はみっともない。明鏡止水の精神だ!
 そんな内心が読まれたのか、琴音ちゃんがくすりと笑う。

「……メイドカフェでバイトして気づいたんですけど、あたしって人が喜んでくれることが好きなんですよ」

 メイドとして働いた琴音ちゃん。
 彼女の接客に心がこもっていることは知っている。何度も通って見てきたからな。他の客の要望に笑顔で応えていたのを見てもいた。ちょっと嫉妬心が芽生えてしまってもいた。
 琴音ちゃんのご奉仕精神は本物だ。きっとバイトしている時はわだかまりとか何もかもを忘れていたに違いない。そう思わせてくれる笑顔だったから。

「でも今は、誰も彼もじゃなくて、祐二先輩が喜んでくれるのが一番です」
「えっと……」
「だから、ですね……」

 少しだけ言い淀み、でも次の瞬間にははっきりと言ってくれた。

「こちらこそ……これからも恋人として、よろしくお願いしますね」

 琴音ちゃんが満面の笑顔になった。彼女自身、とても嬉しそうだ。

「い、いいのか?」
「はい?」

 琴音ちゃんはとてもいい子だ。俺には勿体なさすぎるほどに。
 そう考えると今さらながら不安が押し寄せてきた。

「正直俺は琴音ちゃんに釣り合わないと思う……。顔がいいわけじゃないし、得意なことだってない……。琴音ちゃんならもっと、脅しなんかもちろんしないすげえいい男が言い寄ってくるだろうし──」
「なんでそこで自信なさげなんですか!?」

 いや、だってさ……。わかるだろ? いやわかんねえか。俺だって繊細だってことだ。
 本当にいいのかなって。脅迫から始まった関係だし。間違った関係からは正しい答えは出ない気がしてきたんだよ。

「祐二先輩はいつも通りでいいんですよ。当たり前の顔をして変なことを言う。普通に恥ずかしがられるとこっちまで恥ずかしくなるじゃないですか」
「は、恥ずかしがってなんかないわっ」

 恥ずかしがってはいない……が、複雑な男心をわかってほしいものだ。
 琴音ちゃんはじーっと俺を見つめて、ぽん、と手を叩いた。

「そっか。祐二先輩には脅しが必要なんですね」
「え、何言って──」

 琴音ちゃんは元運動部である。つまり身体能力が高いのだ。
 純粋培養の帰宅部である俺に勝ち目なんぞなかった。もう反射速度が全然違っていたね。

「ていっ」

 そのかけ声と同時に終わっていた。
 琴音ちゃんは素早く俺に接近した。そして、かけ声とともに唇にふにゅんと柔らかい感触が広がった。
 さらにはパシャリッとシャッター音。琴音ちゃんの手にはスマホがあり、写真を撮られたのだと理解する。

「……え?」

 琴音ちゃんの顔が離れていく。……顔?
 接近していた琴音ちゃんの顔。唇に当たった柔らかい感触。そしてシャッター音。この三つのヒントで謎はすべて解けた!

「俺……キスされちゃいました?」
「……しちゃいました」

 真っ赤な顔の琴音ちゃん。彼女の初々しい反応が事実だと教えてくれた。

「証拠もバッチリです!」

 見せられたスマホの画面には、俺が琴音ちゃんにキスをされた瞬間がくっきり映し出されていた。
 油断しきった俺の顔。そして真っ赤な顔で目をつむっている琴音ちゃんの顔。なんともまあ、締まらないファーストキスである。

「こ、これを誰かに見せられたくなければですね……ああ、あたしの彼氏になってください!」

 まさかの脅迫だった。
 よく考えなくても脅しにはなっていない。この写真に俺にとっての不都合は何もない。
 なんとも脅し下手な彼女だ。まあ、そういうところも好きなんだけどな。

「ああ、これからもよろしくな。俺の彼女」

 彼女の手を取って、満面の笑みを浮かべて言ってやった。もう笑顔が止まらなかったね。
 琴音ちゃんは真っ赤な顔のままで、恥ずかしそうに、でも嬉しそうにしてくれた。

「はいっ。祐二先輩……大好きです!」

 本当に可愛くて健気で繊細でたくましい女の子だ。
 彼女が琴音ちゃんだったから、俺はこの幸せを大切にしたいと心から思ったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...