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殺されそうな皇帝
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『そのあたりの話。貴方と別れるまでに、ちゃんと出来なかったよね。あの時はいろんなことが重なって、私はすぐ皇城に連行されてしまったから』
「陛下。そんなことより、今は……」
慌てて繕ったものの、無駄だった。
『ねえ、青波。貴方は六年前、私に術をかけたでしょう。そのおかげで、私は頑丈な身体を得ることになったんだ。だから、簡単には死なないって知っているはずだ』
「申し訳……」
『いいって! 謝らないで。責めているわけじゃないんだ』
膝をついて謝罪しようとしたら、ぴしゃりと春霞に止められた。
『むしろ感謝しているんだ。あの時、貴方は私を救ってくれた。まあ、少しばかり、普通と身体の作りがおかしいんじゃないかなって、思うことはあっても、貴方に対して怒るなんて、絶対に有り得ないよ。それに、六年も経ってしまったけど、私のことが気になって、貴方もわざわざ後宮まで会いに……』
「いいえ。私はただ、貴方様に渡してしまった家宝を……ですね」
『へっ?』
「…………家宝を、回収に来ただけで」
『は? 何、それ?』
顔を上げたら、血走った目で睨まれていた。
……怖い。
舌の根も乾かないうちから、怒っているではないか?
「陛下も覚えていらっしゃると思いますが、別れの時に、私が貴方様にお渡しした環首刀。あれ、祖父に訊いたら、我が家の家宝だったらしくて」
『へえ。……で? それを返せと。貴方は私に命令しに来たわけ?』
「滅相もない。うちの怪しげな家宝を、畏れ多くも皇帝陛下のお手元にいつまでも置いておくべきではないと」
『遠路遥々、後宮まで乗り込んできて、それが目的って。青波は私のこと、どうでも良かったの?』
「違いますよ。当然、心配しております。しかし、それが身近にある方が、陛下に禍が降りかかるのではないかと、気が気でなく……」
『今、まさに私が幽体になっている件とか?』
「そんなところです。もしかしたら、刀の効力かもしれません。刀に宿っている力が持ち主である私のところに導いた可能性もあります」
などと、もっともらしく、言い放ってみたが……。
元々、あの刀は青波が持っていなければ、あまり意味のないものだ。
「天冩刀」と呼ぶらしい。
仰々しい名前だが、瞬家の血を継ぐ者でなければ、ただの鈍な剣だ。
実際、青波も二か月前、祖父に話を聞くまでは、家宝という認識はなかった。
正直に話すと、ややこしくなりそうなので、青波はもしも直接、春霞と話す機会があったら、絶対に誤魔化そうと決めていた。
「ちなみに、陛下。私のことは、誰かにお話ししたりしていませんよね?」
『はっ?』
「ほら、側近とか、お妃様とか。いらっしゃるじゃないですか」
『もしかして、青波。妃のことを気にしているの?』
「なぜ?」
春霞は現在、三人の妃を娶っている。
そのくらい後宮で働く前から、青波も知っていた。だけど、今、春霞が嬉しそうな理由が分からない。
「まさか。私はただ単に、こちらに私のような術者がいないか、気になっただけで。あの刀が術者とか、側近の方や、お妃様などに渡ってしまうと、面倒だな……と」
『……最低』
春霞はがくりと肩を落とした。
『青波。私はここにいる人間を誰も信用していないよ。妃なんてもっての他だ。元々、私は後宮なんて、大嫌いなんだから』
「いや、別に、陛下が後宮を好きでも、嫌いでも、私はどうでも……」
『大嫌いなんだって!』
「はあ」
そんな事情、知りたくもないから、青波は白けた気持ちで、流そうとした。
きっと春霞は幼馴染に妻の存在が知れることが気恥ずかしくて、むきになって嘘を吐いているのだろう……と。
しかし、次の春霞の一言は強烈だった。
『……私ね、病気じゃなくて。誰かに殺されそうなんだよ』
「陛下。そんなことより、今は……」
慌てて繕ったものの、無駄だった。
『ねえ、青波。貴方は六年前、私に術をかけたでしょう。そのおかげで、私は頑丈な身体を得ることになったんだ。だから、簡単には死なないって知っているはずだ』
「申し訳……」
『いいって! 謝らないで。責めているわけじゃないんだ』
膝をついて謝罪しようとしたら、ぴしゃりと春霞に止められた。
『むしろ感謝しているんだ。あの時、貴方は私を救ってくれた。まあ、少しばかり、普通と身体の作りがおかしいんじゃないかなって、思うことはあっても、貴方に対して怒るなんて、絶対に有り得ないよ。それに、六年も経ってしまったけど、私のことが気になって、貴方もわざわざ後宮まで会いに……』
「いいえ。私はただ、貴方様に渡してしまった家宝を……ですね」
『へっ?』
「…………家宝を、回収に来ただけで」
『は? 何、それ?』
顔を上げたら、血走った目で睨まれていた。
……怖い。
舌の根も乾かないうちから、怒っているではないか?
「陛下も覚えていらっしゃると思いますが、別れの時に、私が貴方様にお渡しした環首刀。あれ、祖父に訊いたら、我が家の家宝だったらしくて」
『へえ。……で? それを返せと。貴方は私に命令しに来たわけ?』
「滅相もない。うちの怪しげな家宝を、畏れ多くも皇帝陛下のお手元にいつまでも置いておくべきではないと」
『遠路遥々、後宮まで乗り込んできて、それが目的って。青波は私のこと、どうでも良かったの?』
「違いますよ。当然、心配しております。しかし、それが身近にある方が、陛下に禍が降りかかるのではないかと、気が気でなく……」
『今、まさに私が幽体になっている件とか?』
「そんなところです。もしかしたら、刀の効力かもしれません。刀に宿っている力が持ち主である私のところに導いた可能性もあります」
などと、もっともらしく、言い放ってみたが……。
元々、あの刀は青波が持っていなければ、あまり意味のないものだ。
「天冩刀」と呼ぶらしい。
仰々しい名前だが、瞬家の血を継ぐ者でなければ、ただの鈍な剣だ。
実際、青波も二か月前、祖父に話を聞くまでは、家宝という認識はなかった。
正直に話すと、ややこしくなりそうなので、青波はもしも直接、春霞と話す機会があったら、絶対に誤魔化そうと決めていた。
「ちなみに、陛下。私のことは、誰かにお話ししたりしていませんよね?」
『はっ?』
「ほら、側近とか、お妃様とか。いらっしゃるじゃないですか」
『もしかして、青波。妃のことを気にしているの?』
「なぜ?」
春霞は現在、三人の妃を娶っている。
そのくらい後宮で働く前から、青波も知っていた。だけど、今、春霞が嬉しそうな理由が分からない。
「まさか。私はただ単に、こちらに私のような術者がいないか、気になっただけで。あの刀が術者とか、側近の方や、お妃様などに渡ってしまうと、面倒だな……と」
『……最低』
春霞はがくりと肩を落とした。
『青波。私はここにいる人間を誰も信用していないよ。妃なんてもっての他だ。元々、私は後宮なんて、大嫌いなんだから』
「いや、別に、陛下が後宮を好きでも、嫌いでも、私はどうでも……」
『大嫌いなんだって!』
「はあ」
そんな事情、知りたくもないから、青波は白けた気持ちで、流そうとした。
きっと春霞は幼馴染に妻の存在が知れることが気恥ずかしくて、むきになって嘘を吐いているのだろう……と。
しかし、次の春霞の一言は強烈だった。
『……私ね、病気じゃなくて。誰かに殺されそうなんだよ』
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