【完結】淫獄の人狼ゲームへようこそ

荒巻一青/もふモフ子

文字の大きさ
4 / 154
一日目

清水日香里という女

しおりを挟む
「はい、かしこまりました。それではお部屋に、ご案内いたしますね。」

 最上さんはそう言い、扉を開ける。
 すると、女性の「ひゃあっ!」という叫び声と共に、誰かが転がるように中へ入ってきた。

「大変申し訳ございません!お怪我は……。」
「えへへ。大丈夫です。むしろ大きな声を出してしまって、恥ずかしい。」

 駆け寄る最上さんに、女性は照れ臭そうに笑った。
 長くて艶のある髪を後ろで束ねている。整った顔に、くりんとした大きな瞳が印象的だ。

 女性は部屋の中へ入ると、俺を――いや、俺の後にいた拓兄を真っ先に見た。

「拓人先輩!書類、見つけてきましたよ!」

 「もう!探すのに苦労しました!」と、拗ねたように頬を膨らませる彼女に対し、拓兄は「日香里、ごめんね。ありがとう。」と女性から書類を受け取った。
 ようやくそこで俺たちの存在に気づいたその女性は、「あら?」と首を傾げた。

「もしかして、先輩がよく話してる、従兄弟の?」
「そうそう。」

 拓兄が、俺と学斗の肩に手をのせた。

「紹介するね。俺の従兄弟の、八城学斗とアキラ。学斗がお兄ちゃんで、アキラが弟。アキラは今年の春に俺たちと同じ大学に入学するんだ。」
「同じ大学ってことは、私の後輩になるってことね!」

 女性はパッとひまわりのような笑みを浮かべた。

「私、清水日香里しみずひかり。拓人先輩と同じ、柳生先生の研究室に所属しているの。よろしくね、アキラ君!学斗君!」

 差し出された手は、女性特有のまろやかさと、きめ細かな肌の質感に溢れたものだった。
 拓兄が女の人を下の名前で呼び捨てにするなんて、今まで聞いたことがない。

 ――嫌な予感がする。

「拓兄がお世話になってます!清水先輩。」

 俺は日香里さんの手を取り、何でもないように笑顔を顔に貼り付けた。
 一方の学斗は、出された手を握ることもなく、もごもごと「……どうも。」と言うだけだったが、清水先輩は「よろしくね!」と特に嫌な顔ひとつしなかった。

 明るい雰囲気の可愛らしい女性だ。
 拓兄の横に並んでも、遜色ないくらいに。

「……おい、アキラ。行くぞ。」
「え、あ、学斗!じゃあ、拓兄、また後で!」
「あぁ。」

 学斗がそそくさと部屋を出たため、俺も慌ててそれに続いた。
 ふと部屋の方を振り返ると、清水先輩は笑いながら、軽く拓兄の腕を叩いていた。それに対し、拓兄は清水先輩に何か耳打ちしている。

 その光景を見て、俺は心がざわつくのを感じた。


***


 屋敷は三階建てで、一階には大広間や応接室が、二階には客間が複数あるそうだ。
 最上さんに案内された部屋は二階の一番奥の角部屋だった。広い客室は二人で泊まるには贅沢すぎるほど豪華な調度品や家具が置かれていたが、どこか安らぐような温かみがある。

「では、何か御用がございましたらお呼びください。」

 最上さんはそう告げると、すぐに部屋を出ていった。
 俺は早速窓を開けて、外の様子を確認した。
 雷鳴は次第に遠退いているが、雨は未だに強い。

「泊めてもらえて、ラッキーだったな。この雨じゃ、やっぱり山道は危険だっただろうし。」

 俺はベッドにカバンを放り、そのまま寝転がった。
 家のベットでは体験できない、身体全体が沈む感じが心地いい。

「あぁ。」

 学斗は、ベッドに腰かけているものの、どこか心ここにあらずという感じだ。
 そして、たまに俺の様子を見るようにちらりとこちらを見る。俺が目が合うとすぐに視線を逸らすけれど、その頻度は明らかに多い気がした。

「なぁに?さっきからチラチラ見て?」

 俺の言葉に学斗はびくりと身体を揺らした。
 そして、もごもごと口を動かし、そして何かを決心したかのように小さく息を吐くと、真剣な顔でじっと俺を見据えた。

「お前……あの、清水さん、のこと……。」
「あぁ、あの先輩?何?美人すぎて、好きになっちゃったわけぇ?」
「ば……っ!んなわけあるか!」

 学斗は顔を真っ赤にして、俺を睨んだ。
 俺は笑みがこぼれた。

「第一印象から、めっちゃいい人そうだったね。良かったわ。大学で困ったら、清水先輩に助けてもらえそう。」
「……お前が困ることなんて、あるのかよ。」
「あるかもしれないじゃん!あと、顔も結構可愛かったよね。スタイルもいいし。」

 愛されるために生まれてきた、とでもいうような恵まれた容姿だった。
 性格も快活そうで、明るく、誰からも好かれるような女性。

「あ……アキラ……。」

 まだ何か言いたそうな学斗が続きを言う前に、俺は口を開いた。

「……お似合いだったなぁ。拓兄と、あの先輩。」

 俺はごろんと寝返りを打った。
 窓を叩く雨粒の音が、静かな部屋に響いている。

「……そんなことねぇよ。別に。」

 俺よりもお前のほうが泣きそうな声出しているのが面白いね。

 でも、学斗。
 お似合いじゃないと困るだろ。
 誰も付け入る隙がないくらい、完璧なカレカノじゃないと、困るだろ……。

「今晩泊まること、親に連絡しておいたほうがいいかな?」

 俺が話題を変えるためにそう言うと、学斗もホッとしたように顔を緩めた。

「どうせ連絡したところで、あの人たち、見ないだろ。それより、お前明日、徹と遊びに行くって話していなかったか?」
「やべ!むしろ徹に連絡しておいたほうが良いか!」

 幼馴染の秋谷徹あきたにとおると明日遊びに行く約束をしていたが、この調子だといつ帰れるのか見当もつかない。
 〈初瀬山邸〉に行くことは事前に徹に話していたため、『今晩雨で帰れそうにないわ~。いつそっちに着くか分からないから、明日の遊びは一旦保留で!』とLINEを送っておいた。
 徹はあまりLINEのメッセージを確認するタイプではない。
 早めに気づいて欲しいけれど……。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...