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二日目
「私も特殊な役割持ちなんです!」②
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「私の役割、【霊媒師】だったわ。」
「【霊媒師】?」
「そ。何でも『追放』された人間の役割を調べられるみたいだけれど、これってあまりメリットないわよね?」
本来の人狼ゲームで【霊媒師】は、人狼に殺された人間の役割を確認することができる。
しかし、俺たちが参加しているこのゲームではもちろん死者は出ない。『追放』される人も、場合によっては出ないこともあるから、【霊媒師】の存在意義はそれほど大きくない。
「一応、【霊媒師】の能力で高橋さんの役割を調べてみたけれど、【村人】だったわ。でしょうねって感じ。」
「そうだったのですか。」
相槌をうつ柳生教授。
そこへ、ワゴンに美味しそうな朝食をのせた最上さんが来て、一度話題が途切れた。
最上さんが来ると、テーブルに妙な緊張がはしる。
「お食事をお持ちいたしました。」
そう言って最上さんは、俺たちに料理を並べていく。
白米に味噌汁、焼き魚といった定番の和食がテーブルに並べられた。
彼のテキパキとした手つきを見ながら、先程の藤山さんの発言について考えてみる。
正直、藤山さんが本当に【霊媒師】なのかどうかは判断がつかない。【霊媒師】程度の役割なら、周囲を納得させるためのそれらしい理由を並べるのも簡単そうだ。
朝食を並べ終えた最上さんは特に何の反応も返さず、淡々とその場からいなくなった。
「あ、あのっ!」
突然、清水先輩が挙手した。
「日香里、どうした?」
拓兄が不思議そうに尋ねると、清水先輩は「えっと……。」と何やら言いづらそうにしていたが、やがて意を決して口を開いた。
「その、実は……私も特殊な役割持ちなんです!」
学斗はぎょっと目を見開いた。
拓兄や柳生教授も驚いている様子から、彼らも初耳なのだろう。藤山さんは少し眉を動かし、清水先輩の方をじっと見ていた。
「私の役割は【聖職者】です!な、何なら、スマホの画面を見せても構いません!」
――マジかよ。
俺は心の動揺が表れないよう、必死に表情を作った。
本気か?
本気でこの女、【聖職者】なのか?
清水先輩はいつでも画面を相手に見せられるようにか、スマホを取り出し、どこか挑戦的な目で藤山さんを見る。
「藤山さん、何で役割をそう簡単に暴露したんですか?自分は村人側だってアピールしたかったんですか?もしかして……人狼側なんじゃないですか。」
「もしかして清水さん、あなた、私を疑っているの?」
はぁ、と藤山さんはため息をついた。
「別に疑われても構いやしないわ。正直、人狼ゲームなんてどうでもいいもの。」
「じゃあ、何で!」
「言ったでしょ?このゲームの勝敗なんてどうでもいいから、自分の役割を言ったのよ。あとはどうぞ、好きにしてくださいってね。……はぁーあ。私、ここで食べないほうが良さそうね。空気を悪くして申し訳なかったわ。」
彼女はそう言ってテーブルを立った。
「おや、朝食は?」
「あとであの執事に運んでもらいますので、お気になさらず、教授。では。」
そう言って彼女は広間から出ていった。
嵐のようにやってきて、また嵐のように去っていった――清水先輩の心をかき乱して。
「日香里、今の話……。」
「うん。ごめんなさい、拓人先輩。今の今まで黙ってて……。」
「いや、こうして打ち明けてくれて、ありがとう。」
そう言って、拓兄は清水先輩の手に自分の手を重ねた。
「拓人、先輩……。」
「【聖職者】が日香里で良かった。日香里なら、その能力を正しく使ってくれると信じられる。」
【聖職者】。
村人側のリーダーとなりうる存在で、【人狼】の最大の敵である。
「俺も、良かった。清水先輩が【聖職者】で。」
「あ、アキラ君……。」
「昨日まで襲われたらどうしようって不安になってたけど……先輩が【聖職者】だって分かって、すげぇ安心した。清水先輩を中心に、俺たちが団結すれば、何とかなるんじゃね?」
ふわっと、本当に安心したかのような笑みを浮かべて、清水先輩を見つめる。
清水先輩はそんな俺を見て、ぐっと何かを堪えるかのように唇を噛み、そして、「うんっ!」と力強く頷いた。
「皆と一緒なら、きっと私たち、大丈夫だよ!こんなゲーム、さっさとクリアして、皆で帰ろう!」
「そうだな。日香里の言う通りだよ。」
「拓人先輩……。」
拓兄と笑い合う清水先輩を、俺はニコニコと微笑みながら見つめる。
いやぁ、本当に良かった。
こんな馬鹿が、【聖職者】で。
【聖職者】。
村人側のリーダーとなりうる存在で、【人狼】の最大の敵。
早めにその正体を自ら暴露してくれて助かったよ。
これで心置きなく、【聖職者】を潰し、【人狼】が村人たちを支配する計画が立てられる。
清水先輩。
あんたから拓兄を奪い返すために、最高のショーを俺自ら準備してあげるよ。
だから、それまで楽しみに待っているといい。
――拓兄の腕の中で、ね。
「【霊媒師】?」
「そ。何でも『追放』された人間の役割を調べられるみたいだけれど、これってあまりメリットないわよね?」
本来の人狼ゲームで【霊媒師】は、人狼に殺された人間の役割を確認することができる。
しかし、俺たちが参加しているこのゲームではもちろん死者は出ない。『追放』される人も、場合によっては出ないこともあるから、【霊媒師】の存在意義はそれほど大きくない。
「一応、【霊媒師】の能力で高橋さんの役割を調べてみたけれど、【村人】だったわ。でしょうねって感じ。」
「そうだったのですか。」
相槌をうつ柳生教授。
そこへ、ワゴンに美味しそうな朝食をのせた最上さんが来て、一度話題が途切れた。
最上さんが来ると、テーブルに妙な緊張がはしる。
「お食事をお持ちいたしました。」
そう言って最上さんは、俺たちに料理を並べていく。
白米に味噌汁、焼き魚といった定番の和食がテーブルに並べられた。
彼のテキパキとした手つきを見ながら、先程の藤山さんの発言について考えてみる。
正直、藤山さんが本当に【霊媒師】なのかどうかは判断がつかない。【霊媒師】程度の役割なら、周囲を納得させるためのそれらしい理由を並べるのも簡単そうだ。
朝食を並べ終えた最上さんは特に何の反応も返さず、淡々とその場からいなくなった。
「あ、あのっ!」
突然、清水先輩が挙手した。
「日香里、どうした?」
拓兄が不思議そうに尋ねると、清水先輩は「えっと……。」と何やら言いづらそうにしていたが、やがて意を決して口を開いた。
「その、実は……私も特殊な役割持ちなんです!」
学斗はぎょっと目を見開いた。
拓兄や柳生教授も驚いている様子から、彼らも初耳なのだろう。藤山さんは少し眉を動かし、清水先輩の方をじっと見ていた。
「私の役割は【聖職者】です!な、何なら、スマホの画面を見せても構いません!」
――マジかよ。
俺は心の動揺が表れないよう、必死に表情を作った。
本気か?
本気でこの女、【聖職者】なのか?
清水先輩はいつでも画面を相手に見せられるようにか、スマホを取り出し、どこか挑戦的な目で藤山さんを見る。
「藤山さん、何で役割をそう簡単に暴露したんですか?自分は村人側だってアピールしたかったんですか?もしかして……人狼側なんじゃないですか。」
「もしかして清水さん、あなた、私を疑っているの?」
はぁ、と藤山さんはため息をついた。
「別に疑われても構いやしないわ。正直、人狼ゲームなんてどうでもいいもの。」
「じゃあ、何で!」
「言ったでしょ?このゲームの勝敗なんてどうでもいいから、自分の役割を言ったのよ。あとはどうぞ、好きにしてくださいってね。……はぁーあ。私、ここで食べないほうが良さそうね。空気を悪くして申し訳なかったわ。」
彼女はそう言ってテーブルを立った。
「おや、朝食は?」
「あとであの執事に運んでもらいますので、お気になさらず、教授。では。」
そう言って彼女は広間から出ていった。
嵐のようにやってきて、また嵐のように去っていった――清水先輩の心をかき乱して。
「日香里、今の話……。」
「うん。ごめんなさい、拓人先輩。今の今まで黙ってて……。」
「いや、こうして打ち明けてくれて、ありがとう。」
そう言って、拓兄は清水先輩の手に自分の手を重ねた。
「拓人、先輩……。」
「【聖職者】が日香里で良かった。日香里なら、その能力を正しく使ってくれると信じられる。」
【聖職者】。
村人側のリーダーとなりうる存在で、【人狼】の最大の敵である。
「俺も、良かった。清水先輩が【聖職者】で。」
「あ、アキラ君……。」
「昨日まで襲われたらどうしようって不安になってたけど……先輩が【聖職者】だって分かって、すげぇ安心した。清水先輩を中心に、俺たちが団結すれば、何とかなるんじゃね?」
ふわっと、本当に安心したかのような笑みを浮かべて、清水先輩を見つめる。
清水先輩はそんな俺を見て、ぐっと何かを堪えるかのように唇を噛み、そして、「うんっ!」と力強く頷いた。
「皆と一緒なら、きっと私たち、大丈夫だよ!こんなゲーム、さっさとクリアして、皆で帰ろう!」
「そうだな。日香里の言う通りだよ。」
「拓人先輩……。」
拓兄と笑い合う清水先輩を、俺はニコニコと微笑みながら見つめる。
いやぁ、本当に良かった。
こんな馬鹿が、【聖職者】で。
【聖職者】。
村人側のリーダーとなりうる存在で、【人狼】の最大の敵。
早めにその正体を自ら暴露してくれて助かったよ。
これで心置きなく、【聖職者】を潰し、【人狼】が村人たちを支配する計画が立てられる。
清水先輩。
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だから、それまで楽しみに待っているといい。
――拓兄の腕の中で、ね。
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