【完結】淫獄の人狼ゲームへようこそ

荒巻一青/もふモフ子

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五日目

黒幕

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【side:八城アキラ】
 最上雅史は相変わらず無感情な目をして、扉の前に立っていた。
 その背後には最上さんを連れてきた学斗が、通せんぼをするかのように立ち塞がっている。まぁ、ここまで来たら最上さんも逃げ出しはしないだろうけど。
 
「ずっと違和感がありました。」
「……。」
「最初の違和感は、『芸術(artistic)』を使った時だ。ゲームの参加者にこの『特殊カード』は効果を発揮するのに対して、なぜか最上さんにも効果が発揮された。『透明化(invisible)』も同様だった。しかも、使われていることにあんたは気づいていない様子だった。」

 最上さんの眉がぴくりと動いた。
 俺は更に続ける。
 
「おかしいだろ。ゲームマスターなら、わざわざ自分の立ち位置を『特殊カード』の効果内に入れる必要はない。であれば、導き出される結論は一つだ。――最上雅史、あんたもこの【人狼ゲーム】の参加者の一人だってことだ。」
 
 大体にして、ゲームマスターの設定を取り入れるのなら、それなりのゲームリメイクが必要だ。
 しかし、洗脳・催眠の技術を極めた初瀬山勇次郎が亡き今、この【人狼ゲーム】の設定を好き勝手に変えられるとは、到底思えない。
 
 ましてや最上雅史は初瀬山勇次郎に支配される側だった人間だ。
 自分に反乱されては困るから、初瀬山勇次郎が最上に対して洗脳・催眠の技術を教えたなんて、考えにくいだろう。
 
「では次に考えるべきことは、あんたは何で俺たちに偽ってまで、このゲームに参加したかってことだ。」
「……勝ちたかったんでしょう、このゲームに。」

 御堂がぼそりと言った。
 
「どうしても勝ちたい理由があったから、そんなズルしたってところでしょう。」
「あれれ?御堂さん、もう分かっちゃった~?」

 御堂は目を細め、俺の方を睨んだ。
 
「えぇ。何で私にさっさと【魅了】をかけないで、こうして拘束しているのかを考えれば、自ずと答えは出ます。」
「ほうほう、なるほど。」

 探偵なだけある。
 でも、せっかくだから答え合わせは俺がやりたい。
 
「というわけで、最上さんにはどうしてもこの【人狼ゲーム】に勝ちたい理由がありました。それは何か!」

 そこで関連してくるのが、ゲームバランスの歪さだ。
 【人狼】にとって都合良く手に入れられる『特殊カード』。
 あれは【人狼】の勝利を導くものではない。
 【人狼】に初瀬山勇次郎のコレクションを探させ、彼の記憶を読み取らせ、次第に人格を初瀬山勇次郎で染め上げていく――。
 
「あんたは欲しかったんだ。初瀬山勇次郎の人格を有した、新たな【人狼】をな。」

 最上さんが狙っていたのは、【人狼】を初瀬山勇次郎に書き換えることだった。
 
「最終的には自分が【人狼ゲーム】の勝利者となって、自分好みのご主人様を手に入れる――それがあんたの望みだったんだろ。」

 最上さんは肯定も否定もしなかった。ただ、俺の話を黙って聞いていた。
 暴くなら、最後まで暴いてみせろってか。
 俺は内心、ため息をついた。こうしてペラペラと自分の考えを披露するのは俺の趣味ではないのに。
 
「……続けます。ここで新しい疑問が生まれてくる。じゃあ、最上さんの役割は何だってね。ずっと人狼側と村人側の戦いを傍観しているだけで、最後に勝利を掠め取ることができる、そんな都合のいい役割なんてあるのか。――それが、たった一つだけある。」

 さて、そもそも人狼ゲームが世間で広まったのはここ二、三十年の話だ。だから、初瀬山勇次郎が最初に行った遊戯は、狼は出てくるものの、【人狼ゲーム】の要素はほとんどなかった。
 しかし、ときが進むにつれ、初瀬山勇次郎は世間で行われている人狼ゲームの要素を徐々に取り入れていった。
 
「ここ最近の人狼ゲームの発展はめざましい。俺もよく知らない役割が何十も生まれている。」

 その中にあるんだよ。
 人狼側でもない、村人側でもない。
 第三勢力となる、役割――。
 
「最上さん、あなた――【妖狐】ですね?」

 【妖狐】は、【人狼】もしくは【村人】が勝利条件を満たした時、もし生き残っていれば、無条件で勝利を手に入れられるという第三勢力である。
 【妖狐】は【人狼】の攻撃が効かない、厄介な相手だ。
 ただし、唯一【妖狐】を攻撃できる役割がある。
 
「み、ど、う♡」

 新田が御堂のスマホを取り出し、彼に突きつける。
 
「これで、最上のことを占ってくれ♡」

 そう、【占い師】だ。
 【占い師】に正体を暴かれることによって、【妖狐】は敗北する。
 もし、先に御堂を【魅了】し、人狼側に引き込んでいたら、俺たちの負けは確定していた。唯一の対抗手段である【占い師】の役割が変更されてしまっていたからな。
 
 俺が全部説明する前から分かっていた御堂は、自分が何を求められているのかも、理解しているはずだ。
 
「というわけで、御堂さん。取引といきましょう。ここで最上さんを占って下さい。そうしたら、新田さんを解放してあげます。」
「もし、断ったら……?」
「貴方の目の前で、新田さんを犯します。お望みとあれば、学斗と二人でやりましょうか?」
「ははっ……私に、選択肢なんて、存在しないじゃ無いですか……。」

 えぇ、その通り♡
 
「で、でもさぁ。そもそも【人狼ゲーム】のアプリに最上さんの名前なんて表示されていないだろ?どうやって、最上さんを選ぶんだ?」

 今まで黙っていた学斗がもっともな疑問を口にした。
 それに対して、ふふっと笑い声が漏れた。
 最上さんだ。
 
「学斗様、心配は御無用です。御堂様が私に対して占いをすると宣言すれば、それで占いは行われたと認識されます。」
「えっ!?ちょ、えぇ……?」

 まさか最上さん本人から説明されると思っていなかったのか、学斗は目を白黒させ、おろおろと俺と御堂の間に視線を行ったり来たりさせた。
 
「御堂さん。」
「……えぇ、分かっていますよ。」

 御堂は、諦めたように笑った。
 そして、自分の側で俺のちんぽを求めてハァハァ言っている新田の方を見た。
 
「新田さん、もうちょっとだけ我慢してて下さいね。」

 御堂は、最上さんに視線を向ける。
 
「【占い師】として、最上雅史、貴方を占います。」
「かしこまりました。」

 最上さんは自分のスマホを操作する。
 やがて、ピコン、ピコンと部屋の中にあるスマホの通知音が鳴った。
 
『占いの結果、最上雅史は【妖狐】だと分かりました。』
『おめでとうございます。【妖狐】は正体を【占い師】に明かされたことによって――。』
 
「『追放』、されます……?」

 俺は慌てて、最上さんの側に向かおうとする。
 やられた!この男、何も喋らずに自分だけ【人狼ゲーム】からリタイアするつもりだ!

「も、最上さんっ!?」

 学斗が最上さんを抱き起こす。
 しかし――。

「い、意識なーーーいっ!!!」

 学斗の悲鳴のような声が、部屋に響き渡った。
 
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