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六日目
ハッピーエンド?
しおりを挟む嗅ぎ慣れたカレーの匂いに、起きたばかりの徹はふらふらと広間へ続く廊下を辿る。
匂いにつられて、広間から厨房へ入ると、自分の父親が大きな鍋の中をゆっくりと混ぜていた。
「……それ。」
透の声に、最上はぴたりと動きを止める。
「母さんのシーフードカレーと、匂いが一緒なんだけど。」
「……食べて、みるか?」
最上は無表情のまま、徹にカレー皿を差し出した。
中には白く輝く米と、シーフードがふんだんに入ったカレーが入っている。
「記憶を掘り起こして作ったものだから……。美味くはないかもしれない……。」
それだけ言って、また最上は鍋の中身をかき回す。
徹はスプーンを手に取り、恐る恐るそれを口に運んだ。
そして、ゆっくりと咀嚼する。
少し辛すぎる気もしたが、味付けは本当に母親の作るものと同じで、胸の奥がじわっと熱くなるような味がした。
そのまま無言で一口目を食べ終えると、二口目以降は一気にかき込むようにして食べた。
カレーが無くなるまで、沈黙が続いた。
最後のひと口を飲み込むと、徹はスプーンを投げ出したまま最上を見る。
「まぁ、大体一緒だよ。母さんのと。」
「そうか……。よく作ってくれたんだ。隣りで作り方も教えてくれて……。」
「そう。」
「母さんは、元気か?」
「別にあんたがいなくたって元気だよ。二人しかいなかったら、二人で支え合って生きてきた。」
「……すまない。」
皿の上にスプーンを置き、徹は立ち上がる。
「そうやって謝って、罪の意識があるなら、さ。」
もごもごと言葉を濁して、徹は視線を彷徨わせた。
「どうせこの屋敷だって誰かのものになるわけだし、もう帰ってこれるんじゃねぇの……家に。」
最上は驚いたように目を見開く。
そして、少しだけ口角を上げた。
「あぁ。一緒に帰るよ。お前と。」
最上は、はっきりとそう言った。
彼はゆっくりと徹の方を振り返る。
その表情は相変わらず無表情で、何を考えているのか全くわからないが、不思議と先程よりすっきりとした表情をしているようにも思えた。
「……あっそ!家に帰って、母さんに何発もぶたれりゃいい!」
徹はそれだけ言うと、くるりと背を向ける。
その頬は少し緩んでいた。
【side:八城アキラ】
――かくして、初瀬山勇次郎がかけた最上家の呪いは解け、俺の大事な幼馴染である徹は、父親との長年の確執に決着をつけることができた。
そして、俺が勝者となって、【人狼ゲーム】は終わりを告げる。
人々にかけられた催眠は解け、それぞれあるべき場所へ戻る。
ハッピーエンド!
これ以上ないってほど、最高の末だ!
だから、もうこの幸せな結末で幕を閉じたいと言うなら、ここで読むのは終わりにした方がいい。
これから先にあるのは、蛇足だ。
しかも、かなり悪趣味だ。
それでも読み続けるというのなら気をつけて。
――この先には、ふしだらで、卑猥で、救いようのない話しかないのだから。
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