【完結】淫獄の人狼ゲームへようこそ

荒巻一青/もふモフ子

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七日目

「拓人先輩を、皆を、解放して!」

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【side:清水日香里】

 藤山さんを『追放』した。
 藤山さんが本当に『追放』されて、意識のない状態になったのかどうか、確認はしていないけれど。

 藤山さんにもう嫌なこと言われる心配はなくなったけれど、何だろう。心の奥底がぞわぞわする。
 でも、大丈夫だよね?
 皆が彼女に投票したってことは、やっぱり私の選択は間違っていなかったってことだよね?
 藤山さんを『追放』したことで、拓人先輩も少しは安心してくれるよね? 

 そう。だって、藤山さんは私たちを、もしかしたら拓人先輩を狙っていたのだから、これは正当防衛だ。
 だから、何も間違っていない。
 間違っていない、はずなのに……。

 ぶるりと背筋に悪寒が走る。
 気のせいだと私は頭を振って、足を動かす。

 拓人先輩、どこかな?
 拓人先輩に癒してほしい。
 拓人先輩にキスしてもらって、抱きしめてもらって――。

 朝食会場である広間に行くと、皆が揃っていた。

「おはようございます、清水さん。」

 柳生教授。

「おや、おはようございます。」

 御堂さん。

「おっす。」

 新田さん。

「あ、先輩。おはようございます。」

 学斗くん。

「おはようございます、清水様。」

 最上さん。

「えっと、清水、さんでしたっけ?おはようございます。」

 徹くん。

 そして――。

「ぶじゅるっ♡ぶじゅるっ♡んぶっ♡んんん~~っ♡」
「はぁ~♡ほら、拓兄♡口開けて♡まだまだ回数は残っているんだからね♡」

「…………………………は?」

 ――拓人先輩とアキラくんが、キスをしていた。

「んっ♡アキラぁっ♡じゅるっ♡」

 拓人先輩は、いやらしい音を立てて舌を絡ませながら、どこか蕩けた表情でアキラくんを受け入れている。
 彼の頬は赤く染まり、顔は物欲しげに上を向いていた。

「ふふ♡拓兄♡ほら、俺の唾液あげるよ♡」

 アキラくんが目を細めて拓人先輩の顔を見ては、また舌を絡ませ合い、唾液を交換するようにディープキスをする。
 何度も何度も角度を変えながら繰り返される淫らなキスに、拓人先輩の身体がビクビクと震える。

 なに、あれ。
 男同士で、なんで、あんな。

 なんで、拓人先輩は気持ちよさそうな顔で、アキラくんとキスしているの?

「じゅるっ♡んんっ♡ちゅぱっ♡……あ、清水先輩!おはようございます!」

 アキラくんが、私に気づいた。
 その瞬間、拓人先輩はハッとして我に返る。
 そして、恥ずかしそうに顔を逸らした。

「えっと……おはよう……日香里。」

 どちらのかも分からない唾液によって、拓人先輩の唇は扇情的に濡れていた。
 妖艶。卑猥。淫ら。そんな言葉が頭の中に浮かんできた。

 なんなの、これ。

 なんでみんな、当たり前のようにご飯食べているの?

「何で……何でキスなんか、しているんですか……?」

 動揺しすぎて、声が出ない。
 何とか振り絞った声は、自分でも驚くほど震えていた。

「何でって、家族だからですよ?」

 アキラくんが言った。
 『家族』という単語を強調して話すアキラに、胸騒ぎを感じる。

「朝、昼、晩。一日に三回、家族でディープキスするのは『常識』ですから。ね?拓兄?」
「あ、あぁ……。」

 拓人先輩は、歯切れ悪く答えた。
 その目はどこか虚ろで、私を見ているようで見ていない。

「その、この屋敷に来てからずっとしていなかったから、回数が溜まっていて……。」
「だから、できるときにしないと、溜まっていく一方でしょ?ね、拓兄?」
「う、うん……っ。」

 アキラくんが、くすくす笑っている。
 瞬間、ゾッとした寒気が背中に走る。
 アキラくんの瞳が私を射抜いた。
 まるで獲物を狩る時の肉食獣のようなまなざしだ。

「どうしたんです?そんなところに突っ立ってないで、朝ごはんを食べましょうよ?【聖職者】様?」


 瞬間、私は全てを理解した。
 あぁ……。

 アキラくんが、【人狼】だったんだ――。

 二人がキスしていても、他の皆は何も気にしていないで、平然と会話しているということは……。

「やめてぇっ!」

 私は、思わず叫んでいた。

「清水さん?」

 柳生教授が私を見る。
 他の皆も一斉にこちらを見ていた。
 視線が痛いくらいに突き刺さる感覚に陥る。

 気持ち悪い。気持ち悪い!
 ずっとずっと私たちを騙していたくせに、本当に心配そうな表情を浮かべている!

 もう、【人狼】の手下になっているくせに……!

「拓人先輩を、皆を、解放して!」

 私は、アキラくんを睨みつけながら叫んだ。
 拓人先輩の目が驚いたように見開くのが見える。
 アキラくんは、じっと私を見てから微笑んだ。

「やだなぁ!解放だなんて!……皆、好きで俺に支配されているのに。」
「違う!こんなの、おかしいよ!」

 必死に訴えても、アキラは私を嘲笑うだけだった。
 まるで子どもをあやすような優しい口調が逆に不気味だ。

「アキラ?どういうことだ?解放だなんて……。」

 拓人先輩の言葉に、私はハッとした。
 拓人先輩はまだ完全に【人狼】に支配されているわけではないんだ!

「拓人先輩!アキラくんは【人狼】です!先輩以外、皆【魅了】されてる!」
「……………え?」

 拓人先輩は、困惑したような声を出し、周囲を見渡すけれど、皆何も言わない。

「先輩、逃げて!!」
「う、嘘だよな?アキラ。【人狼】だなんて……。」
「拓兄。」

 アキラくんは、拓人先輩の頬にそっと手を添えた。

「安心して、拓兄。俺は【人狼】だけど、これは全部拓兄のためなんだ。あの女に誑し込まれて、可哀想な拓兄。俺が全部、全部、上書きしてあげるからね♡」
「な、何を……!」

 拓人先輩はアキラくんの手を振り払い、後ずさる。

 アキラくんが、スマートフォンを取り出す。

「……っ!?」

 私の体は石になったみたいに、動かなくなった。

 一方、拓人先輩の体はぐらりと傾いて、アキラくんの方へ倒れ込む。それをアキラくんはしっかりと抱き留めた。

「清水先輩って、本当に良い環境でこれまで過ごされてきたんでしょうねぇ。」

 良い環境?
 何を言っているの?

「もちろんすべてが順風満帆とはいかないでしょうけど、小中高と進み、お金の心配もせずに大学にも進学しできているのは、十分恵まれた環境にあると思いますよ。」

 不意に、心臓を掴まれたみたいに、どきりとした。
 確かに喧嘩することもあるけれど、私達家族は仲が良い。生活に困ったことはないし、学校でうまくいかないこともあることにはあったけれど、それより皆でワイワイと楽しく過ごした思い出のほうがはるかに多い。

「ご両親から愛情を注がれて成長してきたのが、あなたの言動から見て取れます。困ったことがあれば、すぐに誰かにすがりつくところは鼻につきますが、まぁ、普段の明るい様子を鑑みるに、そういうところも愛嬌ってやつなんですかねぇ?」

 馬鹿にするように鼻で嗤う。

「あなたの敗因は、二つ。一つは俺の大事な拓兄に手を出したこと。そして、もう一つは、俺より人生経験が薄っぺらくて、人の奥底まで見通す力がなかったこと。的外れの人を疑って、柳生教授や学斗を疑わず、自ら動こうとしなかったあなたに【聖職者】の役割はもったいなかったね。まぁ、そのおかげで俺はたくさん美味しい思いをさせてもらっているけれど♡」

 【人狼】はぺろりと唇を舐めて、意識を失った拓人先輩の頬に舌を這わせる。
 真っ赤な舌が拓人先輩の頬を這いずり回るのを、私はだた見ていることしかできない。

「今日で【人狼ゲーム】は終いだ。最後は、終わりにふさわしい舞台を俺たちみんなで作っていきましょうね♡……せっかくだから、清水先輩には特等席を準備してあげますよ。」

 ――だから、最後まで楽しんでいってください♡

 八城アキラはそう言って、拓人先輩の首筋に食らいついた。
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