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第一章:第三師団の陥落
それぞれの『命令書』②
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翌朝、団長室は今までにないくらいの緊張感に包まれていた。
いつものように、ハインリヒは中央のデスクにおり、左右のソファにシュタイン、フィオナ、そしてブラックの姿がある。
彼らは黙って、終夜が来るのを待っていた。
彼らが望んでいなくとも、『シュウヤを入れて、朝のミーティングは必ず行う』ことは決定事項であり、逆らうことなどできずにいた。
そして――。
「おはようございまーす!」
“普段と変わらない姿”のケニーが勢いよく入ってきた。
「け、ケニー!?」
驚いたブラックが少し腰を浮かせ、声を上げる。
「んだよ、ブラック。そんなびっくりして。まだミーティングの時間前で、遅刻じゃねぇだろ?」
「い、いや、そうじゃなくてだな……。」
隊服に身を包み、髪をセットし、どこからどう見ても『仕事モード』のケニー。昨日、この部屋で繰り広げられた悪夢のような出来事なんて無かったかのような彼の姿に、ブラックは戸惑ってしまう。
「変なブラック。顔色も悪いし、大丈夫か?」
逆に心配される始末だ。
「あ、ああ……問題ない。」
「そっか。ならいいけど。」
そう言って、ケニーは定位置であるブラックの隣に座る。
その様子を黙って見ていたハインリヒやシュタイン、フィオナも内心は困惑した。
しかし、彼らが何かケニーに問うよりも先に、再び扉が開く。
「すみません。遅れました。」
何食わぬ顔で終夜が現れた。
「皆さん、偉いですねぇ。ちゃんと僕が来るまでミーティングを始めるのを待っていてくれたんですね。」
ニコニコと笑みを浮かべながら、終夜は彼らのもとへ歩いてくる。
「では、早速始めましょうか。」
「……あぁ。」
ハインリヒは悔しさや怒りを表情に出さないよう必死になりながら、返事をした。
ケニー以外の四人は油断なく、終夜を見据える。
「シュウヤ、こっち♡俺の隣、座ってよ♡」
「うん。ありがとう、ケニー先輩。」
終夜がケニーの隣に腰を下ろす。
すると、ケニーは終夜にぴったりとくっつくように身を寄せて終夜の右腕を抱きしめた。終夜もそんな彼を邪険に扱うことなく、ケニーの腰に手を回して受け入れる。
「……。」
シュタインは眉根を寄せた。だが、昨日の性奴隷の状態よりかはマシだと思ったのか、ハインリヒに目配せするに留めて、何も言わなかった。
こうして、ようやく『朝のミーティング』が始まった。
「さて、ミーティングを始める。まずは、任務の報告を。」
「はい。」
最初に手を挙げたのはフィオナだった。
「闇ギルドに関する調査が終了したから、その報告をするわ。第五師団の力も借りて、調べ上げた結果、人身売買と違法な薬物の取引を行っていることがわかったわ。」
「なるほど。それで、その組織のアジトは?」
「既に我々が抑えている。」
今度は、シュタインが口を開いた。
「構成員は全部で5名。全員捕まえた。」
「それは上々だな。あとはシュタインとフィオナに任せる。他には?」
「はーい。俺から。」
ケニーが手を挙げた。
「俺は違法カジノに潜入して、脱税の疑いがある経営者を調べていたんだけど、オーナーがなかなか現れなくてね。代わりに裏帳簿を発見したてきた。」
「へぇ。ボクのところにいない間に、そんなお仕事していたんですね。」
「へへ♡俺、優秀だからね♡もっと褒めてくれていいんだぜ、シュウヤ♡」
ケニーはデレデレと甘えた声を出すと、頭をぐりぐりと終夜の肩に押しつける。
「ケニー先輩、えらい、えらい。」
終夜が優しくケニーの頭に手を置く。
「あっ♡シュウヤの手、気持ちいい♡もっかい撫でて?♡」
「いいえ、終わりです。ミーティング中ですからね。」
「ん♡じゃあ、あとで♡」
「はいはい。」
まるで恋人同士の甘いやりとりを見せつけるような終夜とケニーの雰囲気を断ち切るように、ハインリヒは「それで、他には?」と話を進める。
「ないのであれば、今朝のミーティングはここまでにーー。」
「おっと。ハインリヒ団長。『大事な報告』がまだ、終わっていませんよ?」
(『大事な報告』だと?)
ハインリヒは終夜の言葉を聞いた途端、きりきりと頭の奥が痛み始めた。次第に目は霞み、思考は鈍くなっていく。
「ほ……報告が……ある……。」
夢見心地のまま、ハインリヒは言葉を紡いだ。
「昨日……シュタインと指のノック音と動きによって……シュウヤの盗聴を警戒しながら……彼への、対抗策を……考えた……。」
「ハインリヒ!」
シュタインの悲鳴のような声が上がる。しかし、ハインリヒの耳には届かない。
「何を焦るのです、シュタイン副団長?『今朝のミーティングでは、昨日あった出来事を包み隠さず、オナニーしながら報告しなければならない』。そうですよねぇ、ハインリヒ団長?」
「あぁ……その通りだ……。」
そして、『包み隠さず報告することは、とても気持ちがいい』ことも、昨日の『命令書』のせいで、ハインリヒの無意識の中に刷り込まれてしまっていた。
ハインリヒは報告を続けながら、自分のペニスをズボン越しに触り始める。
「はぁ……っ、シュタインと話し合ったのは……っ♡他の仲間に……、助けを、求めること……っ、……ふ、ぅっ♡」
ハインリヒの息が荒くなり、頬が紅潮していく。
「……っ、こ、これなら……っ、ん♡き、禁止されている……精神的、肉体的攻撃には、あ、当たらない……と、考えた……っ、……ん、うぅっ♡」
「確かに、そうですね。」
終夜が納得したように相槌を打つ。
ハインリヒは、ペニスの形を確かめるようにゆっくりとなぞっていく。
「だが、問題なのは……どうやって、彼らに助けを求めるか……だ……ぁ、ん……♡」
終夜が頷く。
「そうですよね。下手にボクに会わせてしまったら、あなた方の二の舞いになってしまう。」
「そ……そうだな……♡だから、まずは……♡帰還命令を出し……♡」
「ふむふむ。」
「っ♡はぁっ♡れ、レオルの、所属する……きょ、教会に♡身を、隠してもらおうと……♡」
「教会?何でそんなところに?」
「そ、それは……っ♡」
ハインリヒは言い淀む。彼の残り少ない理性が、ストップをかけたのかもしれない。
しかし、それも一瞬のことだった。
「ハインリヒ団長――『包み隠さず報告すれば、もっと気持ち良くなれます』よ。」
終夜の言葉に、ハインリヒは抗えなかった。
「は、はいぃ♡」
返事をした瞬間、彼の手の動きが激しくなった。
「うぉっ♡ウォテヌス神の……ごっ♡ご加護さえ、あれば♡しゃ、しゃいみんがん、も、ふせげる♡と♡」
「ハインリヒ!もうやめろ!」
シュタインは叫んだ。だが、その声は虚しく部屋に響くだけだった。ハインリヒの手は止まらない。それどころか、ますます激しく動いていた。
シュタインはギリリと歯ぎしりする。
「なるほど、ご加護ねぇ……。」
(ウォテヌス神への信仰心は、そこまで厚いのか……。まぁ、まずボクにとっては何の障害でもないだろうけど。)
でも、その信仰心を利用して、そのお仲間二人を楽しくお出迎えするプランが、早速終夜の頭の中で構築されていく。
「報告ありがとうございます、ハインリヒ団長。それじゃ、もう『イッていいですよ』。」
途端、ハインリヒの体が大きく跳ね上がった。
「ぉ゛あっ♡♡あ゛あ゛ぁーーっ♡♡♡」
びゅく♡びゅく♡と、白濁液がハインリヒのペニスから飛び出した。それは床まで届いて白い水溜りを作る。
何度か痙攣したハインリヒは、下半身を露出させたまま、ぐったりとソファにもたれかかった。
(あぁ……気持ち良かった♡オナニーをしながら……包み隠さず、報告すると、こんなに、気持ちいいなんてぇ……♡あたまのなかが♡からっぽに、なりそう……♡)
「ぅ、あ……♡」
じょろ♡じょろろろろ♡♡
彼は、焦点が合っていない目のまま、放尿していた。アンモニア臭が立ち込め、じわじわと団長椅子に尿が染み込んでいく。
終夜は「お漏らしするほどよかったんですね、団長?」と言って微笑んだ。
「団長、すげぇイキっぷり!気持ち良さそうだったな!」
ケニーが無邪気に笑う。ハインリヒの痴態を何とも思っていないその様子に、シュタインとフィオナは戦慄を覚えた。
「それで、次の報告は?順番的に、副団長か?」
「……っ。」
(……抗えない、か。)
シュタインはきつく目を閉じ、意を決して、ゆっくりと口を開いた。
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