サメック! モンスター転生しちゃったけど白髪ギザ歯サメ魚人美少女が嫁になった

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サメ少女、タラサ

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 二人の女性が逃げていくのを見送り、サメックは胸ビレで器用に口の周りの血を拭うと、笑い声をあげる。

「はははははっ! ざまぁみろ! ダンジョンの中でまでパコパコ楽しみしやがってハーレム野郎が!」

 サメックの口からは流暢な人の言葉が飛び出した。
 彼の正体は、ユウシャと同じく異世界から転生した人間だ。
 前世は普通の地球人だったが事故により死亡し、その際、異世界の神の力で転生してもらうことになった。
 転生先であるこの世界は、同じように地球から転生してくる魂が多く活躍してユウシャとして称賛を浴びる世界とのことで、サメックは自分も同じく英雄になることを楽しみにしていたのだが、

「普通のユウシャは今のヤツみたいに女連れで楽しく冒険してるってのに! なんで俺はこんな暗いダンジョンの奥で冒険者を食い殺す生活をしなきゃいけないんだ!」

 ユウシャは見ただけでわかるというものではなかったが、サメックには食べた者のステータスの一部を得る能力があり、それによってケイスケもユウシャであるというデータを把握する事ができた。

「俺だってまともなユウシャに転生して、可愛い女の子と、もっとこう……!」
「もっと……なにするの?」
「か弱いお姫様を助けて惚れられたり、ツンデレ女騎士とケンカしたり、ケモミミ娘に部族の掟で結婚を迫られたり……」
「やけに具体的だねぇ」
「そりゃあ男のロマンが……って」

 ふっと我に返り、サメックは慌てて胴を捻るように振り返る。と、目の前に見知らぬ少女が座っていた。

「に、人間っ!?」

 大きく身体を反るようにして宝箱ごと飛び跳ねたが、相手をよく見てから警戒を解く。
 服というには心もとない布を巻いただけの格好で、露出した皮膚は一部青く、首筋にエラ穴が並んでいたり、青みがかった白髪の隙間から飛び出た耳も形状が人間のそれとは大きく違う。

「じゃないな……魚人か?」
「そう、私はタラサ。サメの魚人ね。サメ仲間なんだし仲良くしましょ」

 そういってタラサが笑うと、口の中にずらりと並んだ鋭い牙が覗く。
 魚人のような人間と近い姿を持つ亜人種は、この世界では蛮族と呼ばれている。
 蛮族は人とモンスターの中間と言われ、人間たちと常に敵対しているというわけではないが、一部を除けば友好的とも言い難い。
 また蛮族とモンスターも必ずしも仲が良いわけではなくそれぞれの場合による。
 完全にモンスター扱いされているゴブリンも蛮族の一種だ。
 目の前の少女は彼と争うつもりはないらしいことは、その態度からもすぐにわかった。というより、タラサは最初から地面に座り込んだまままったく動こうとしない。

「このダンジョンに魚人なんて居たんだな」
「ううん、私は外から来たの。村が戦争に巻き込まれて、それからー、ま、いろいろあってね」

 そう言われて改めてよく見ると、身体を覆う布切れはところどころ破けほつれ、彼女の身体にも小さな傷がいくつもついていた。

「やだ、そんなにジロジロ見ちゃって、私の身体にコーフンしちゃった?」

 わざとらしく身体を捻ってしなをつくってみせるタラサだが、そのプロポーションはあまり豊かとは言えない。どちらかといえば泳ぐのに適したフラットな体型だった。

「子供のくせにマセたこと言ってんじゃねえ。それよりちょっと背中みせてみろ」

 ため息交じりで呟いたサメックは胸ビレで器用に彼女の肩をつかんで後ろを向かせる。

「あ、これは村から逃げる時にね、えへへ」

 タラサの背中には小さい切創があった。かなり鋭い物、おそらくは人間の剣や槍などの刃物でつけられたものだ。激しく出血するほど深くはないが、血はじわじわと垂れ続けている。
 集落からダンジョンの中まで、こんな傷を負った状態でやってきたのだとしたら、かなりの血を失っているはずである。
 サメックはヒレを傷の前にかざして小さく呪文を唱えた。

「ヒール」
「えっ、えっ!? なに!?」

 背中の傷があっという間に閉じていき、ついでに他の細かな擦り傷や打ち身も消えていく。
 急に痛みが引いていったことに驚き、タラサは自分の背中を見ようと首を捻ったり手で触ったりして確かめる。

「あなた、治癒魔法が使えるの!? サメなのに!?」
「魚種差別だ」
「だって攻撃スキルとか魔法を覚えてるサメは結構いるけど、治癒魔法ができるサメなんていないよ」
「他の補助魔法とか生活魔法なんかも使えるぞ」
「ほんとに!?」

 銀のような青のような不思議な色の瞳を輝かせ、タラサはサメックに詰め寄った。

「じゃあじゃあっ、クリエイトウォーター使える!?」
「お、おう……」

 タラサの勢いにたじろぎつつ、サメックは近くの壁にヒレをかざすと、そこに魔力の光が走って魔法陣を描きだした。
 魔法陣が完成すると、その中からどっと勢いよく水が飛び出してくる。

「きゃーっ!! やったあ!!」

 黄色い声をあげ、タラサは頭から水流に飛び込んでいった。
 そして、くるくるとその場で踊るように回りながら全身で水を受け止める。
 水は十秒程度出たところで勢いを緩め、完全に止まると魔法陣も消えた。

「……っはー! 生き返ったぁ!」

 髪を軽くかきあげると、タラサは満面の笑顔でサメックに飛びついた。

「ありがと! 命の恩人だよ!」
「あーはいはい、まだ傷を塞いだばかりなんだからあまり動くなよ」

 びしょ濡れのまま抱きついてくる少女に鮫肌を少し赤面させつつ、ぶっきらぼうに言って引き剥がし、宝箱のフチに座らせる。

「そうだ、しばらく一緒に居てあげる」
「は? なんでそうなるんだ?」
「助けてもらった恩を返したんだよ」
「……本音は?」
「えー、いまのも本音だよ。強いから守ってもらえそうかなって思わないでもないけど」
「それだけじゃねえだろ」
「えへへー……魔法のおかげでお水に困ることは無さそうだよね」
「貯水タンク扱いすんな!」
「でもでも、こぉんな美少女サメと一緒にいられるんだから良いでしょ?」
「自分で言うな自分で」

 タラサは濡れた頬を擦り寄せつつ、ギザギザの歯を剥き出してイタズラっぽい笑みを浮かべる。

「さっき可愛い女の子とイチャイチャしたいって言ってたじゃん。そしてここには水も滴る良いオンナ♪」
「それは言ったがロリはノーサンキューだ、胸をあとひとまわり、いやふたまわりは大きくしてから来い」

 自分を指差してにっこり笑うタラサに、にべもなく言い放つサメック。

「はぁー!? 胸がデカイ女なんかみんなバカばっかりでしょーが! あんな脂肪の塊のなにがいいのさ!」
「とりあえずデカイのが揺れるだけで心が癒やされる」
「ぐぬぬぬ……」

 だが、タラサはめげることなく。

「私まだ成長期だもん! そのうちでっかくなってやるから待ってなさい!」
「へいへい、頑張れよ」
「抱えるくらいデカイおっぱいになってやるんだから!」
「いやお前そこまで……ハァ……」

 サメックはそれ以上何も言う気が起きず、大きな溜息を吐いた。
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