サメック! モンスター転生しちゃったけど白髪ギザ歯サメ魚人美少女が嫁になった

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禁術

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 はじまりの迷宮はいくつかの穴で地上とつながっている。
 その穴のうち、大きな通路につながっていて人が入りやすい形状の穴は、冒険者がよく使う入り口となっており、その目の前には拠点となる砦が築かれている。
 砦といっても冒険者達が集まる野営地から発展した程度のもので、簡易な木造の小屋が何軒か建っている以外には柵と物見台があるだけ。
 主な用途は冒険者がダンジョンに挑む直前の準備、あるいは脱出した後の休憩。他にも稀にダンジョン内から出てしまったモンスターが町に向かう前に討伐するための見張りも兼ねている。

「誰か!」

 たったいまダンジョンから戻ってきた冒険者のパーティが、悲痛な声を上げて近くに居る者にすがりついた。

「高位の治癒魔法を使えませんか!? お礼は払いますから……!」

 それは先刻、サメックが食い損なった男のパーティだった。女の背に負われた男はすでに動かず、誰の目にも手遅れであることは明らかだった。
 泣き崩れる女たちから気まずそうに顔をそらす他の冒険者たち。
 誰もが知らん顔を続ける中、一人の男が軽薄そうな笑みを浮かべながら近づいていく。

「冒険者がダンジョンに挑んで殺されるなんざ日常茶飯事だぜ。死体が地上まで帰りつけただけでも運が良いってもんだ」

 その言葉に女たちは涙に濡れたままの目で男をきっと睨みつける。

「へっへっへ、怖い顔すんなって。良い話を教えてやるからよぉ」
「良い話……?」

 地面にへたり込む女……アマンテのの目の前にしゃがむと、男は声を潜めてささやく。

「死んだ人間を生き返らせる方法があるんだよ」

 男のささやきにアマンテは顔色を変え、しかしすぐに首を振る。

「そ、そんなものあるわけが……!?」
「もちろん、一般には知られてねえ禁術ってやつだ。本当はこんな話をするのも危険なシロモノだが、あんたたちの態度次第じゃ詳しいことを教えてやってもいいぜ?」

 そんなことをのたまいつつ、アマンテの肩に馴れ馴れしく手を置いて男は舌なめずりする。
 男が求めているのがどういうことなのか、即座に理解したアマンテたち三人は顔を見合わせる。

「ど、どうしよう……」
「……彼が生き返るなら」
「ちょっと! 嘘に決まってるでしょ!」
「でも、もしかしたら……可能性があるなら……」

 だが、彼女たちが悩んでいるうちに、近づいてくる大きな影があった。
 巨大な何かは、アマンテたちのカラダを見ながらニヤニヤ笑っていた男の背後で止まった。

「な、なんだ!?」

 不意に影が差したことに驚いて振り返ると、しゃがんでいる男の目の前に大きな胸があった。
 あまりに大きな膨らみのせいで、その上にあるはずの顔が覗い知れない。
 思わず口笛を吹いた男だったが、次の瞬間、とてつもない衝撃に襲われて悶絶した。衝撃の出どころが自分の股間であることに、しばらく気づくことが出来なかった。
 目の前の巨乳の持ち主が、彼の股間を蹴り上げたのだ。

「な、なにしやが……」

 あまりの痛みに口の端からよだれを垂らしながら、股間を押さえて地面を転がる。
 そんな男に、さらに追い打ちがかけられる。
 男の上に女が背負っていた革製の背負い鞄を落とした。
 そのサイズがとんでもない大きさで、中に人間が数人は詰め込めそうなサイズだ。
 そして、その巨大な鞄はパンパンに膨らんでおり、とんでもない量の荷物が詰まっている。

「ぎぇっ……!?」

 そんなものに押しつぶされた男は、悲鳴すらまともにあげられず呻いた。

「な、なんだよこれ……重すぎんだろうが、このままじゃ死んじまう……! 早くどけろ!」
「えー、別に死んじゃってもいいんじゃないですか? 生き返る方法があるんでしょう?」

 白々しくすっとぼけた声で言いつつ、荷物を落とした女が言う。

「そ、それは……」
「ほらほら、早く教えて下さいよ。きちんと死んだ後で生き返らせてあげますから」
「そんなもん、ウソに決まってんだろうが!」

 男の焦りを帯びた返事を聞いて、アマンテたちは苦々しい表情で唇を噛む。

「やっぱり……っ」

 女が荷物をひょいと持ち上げて横にどかし、慌てて立ち上がった男は、その荷物女が自分より頭ひとつ以上背が低いことに気づく。
 その小柄さではとてもこの大荷物を持ち上げられるようには見えない。だが、その頭部には角が生え肌は全身浅黒く、手指や爪が爬虫類に似たソレだ。
 半眼で男を見やるその瞳は、縦に裂けて銀色に光っている。

「ば、蛮族か……?」
「見た目はこんなだけど、元は普通の人間ですよ」
「そ、そんなこと言われて信じられるか! この化け物め!」
「化け物……」

 異形の少女……トレラがピクリと表情を変える。
 怒らせてしまったかと男はたじろぐが、トレラの浮かべた表情は笑顔だった。

「ふ、ふひひ……化け物に見えますか? モンスターっぽいですか、わたし?」
「え、お、おう……?」

 予想外の反応に戸惑う男に、トレラは上機嫌で語りかける。

「この体はね、禁術を使ったんです。正真正銘、本物の禁断の魔術ですよ」
「なっ……なんてことしてんだてめえ!? 禁術を自分に使うなんて……」
「それはもちろん、愛するモンスターと一つになるため……!」

 男には、なにが「もちろん」なのかはさっぱりわからなかったが、トレラがやべーやつだということははっきりとわかった。

「く、クソッ、付き合ってられるか!」

 そんな捨て台詞を吐き、男はすごいスピードで逃げ去っていった。
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