サメック! モンスター転生しちゃったけど白髪ギザ歯サメ魚人美少女が嫁になった

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モンスター大好き少女、トレラ

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 前略、お神様。
 光の神だか邪神だか知りませんが、サメックにしてくれやがったことに関しての恨みは否応にも募るばかりです。
 来る日も来る日もハーレム野郎を食い殺す生活にうんざりしていましたが、今日は別路線でヤバさが炸裂しております……――



「GRRR――!?」

 モンスターの骨を組み合わせて作られた禍々しい棍棒がサメックの鼻先を掠める。ブオンと空を切る音が通り過ぎ、風が鮫肌を撫でていった。
 のけぞった姿勢から立て直す暇もなく、続けて繰り出される縦振りを横に飛んで躱す。
 距離を取ったところでサメックはかいてもいない冷や汗を拭い相手を観察する。
 浅黒い肌、頭部には角、手の肌や爪は爬虫類に似ている。蛮族かと思われる異形の少女である。
 自身よりも大きな革鞄を背負っており、そのせいで動きは鈍い。だがそれは重さのせいではなく、ダンジョンの通路がふさがってしまいそうなくらいの巨大さのせいで壁や天井に擦れて動きを阻害されているせいだった。それさえなければすでに棍棒の一撃を食らっていたかも知れない。
 恐ろしい。その高い身体能力もそうだが、やたらと輝いている銀色の眼が謎の気迫を感じさせた。

「サメの弱点は衝撃……刃物よりも鈍器のほうが有効です」

 ぶつぶつと独り言をささやきながら、少女が再びサメックへと迫る。
 彼女の言う通り、鮫肌は刃先を滑らせる防刃の効果があるが、衝撃を防ぐのにはほとんど役に立たない。そればかりか、サメには肋骨が存在していない。
 一般的な魚類は硬骨魚類と呼ばれ肋骨が内臓を囲んで守っているのだが、軟骨魚類であるサメは肋骨が無く、叩かれると内臓にダメージが直接届いてしまう。

「GAA!」

 少女の棍棒攻撃を紙一重で躱しながら宝箱で殴りつけてみるが、避けられるか棍棒で受け止められてしまい、お互いにクリーンヒットは無い。
 これはもう殺すつもりで反撃しないといけないか、いやしかし……とサメックが迷っていると、戦いながら異形の少女が語りかけてきた。

「初心者とはいえユウシャを何人も食い殺したと聞いていましたが、こんなものですか? 本当はもっと強いんじゃないですか? もっと力を見せてください!」

 言葉が通じると思っているわけではなく、半分独り言のようで少女はぶつぶつと囁きながら戦い続ける。
 宝箱を叩きつけてもまたガードされる、だがその脇からヒレで叩くと、少女の肩に小さなキズが付き、赤い血がじんわりとにじんだ。

「ふひひ、いいですね……でも、噛みついてはくれないんですか? あんまり美味しそうには見えませんか? ちゃんと人間ですから美味しいかも知れませんよ?」
「GRR……?」

 攻撃をくらったというのに少女はヒートアップしてきたようで、瞳に宿る銀光がいや増していく。
 そして頬を赤く染めた恍惚の表情で、足をもじもじと擦り合わせながら両手を広げて叫ぶ。

「私を食べて! ふひ、そうしないと私があなたを食べちゃいますよ! 一緒になりましょう! さあ混ざりあって一つに!」
「へ、変態だーっ!?」

 思わず叫びながら宝箱サマーソルトで少女を突き飛ばして飛び退く。
 と、少女は尻もちをついて、ぽかんとした顔でサメックを見ていた。

「……いま、喋りましたか?」
「う、うん、喋りましたよ……?」

 なぜか釣られて敬語で返事をしてしまう。

「そんな見た目で実は蛮族とかだったりします?」
「いや、残念ながらモンスター……だと思う」

 少女は呆けた表情のまま棍棒をその場に捨て、鞄をおろした。
 そして、何も持っていないことを示すように両手を前に出して開いて見せる。

「へ……?」
「戦いはやめて、お話をしても構いませんか?」
「ああ、それは俺としても願ったりなんだが……」

 急な態度の変化に戸惑い、相手の真意をさぐりながら頷くサメック。

「モンスターは邪神の魔力によって意思を操られ人間を襲うことを強制されています。こうして理性的に話ができるモンスターなんて普通はいないはずなんですが……あなたは一体何者ですか?」
「名前は……種族名はサメック、でいいのかな。一応中身は異世界の人間だからユウシャみたいなもの……のはずなんだが」
「そ、それでは、人間からモンスターに転生したと……!?」

 何故かさっき以上にテンションブチ上げ状態の少女は、手をワキワキと怪しげに蠢かせながら、ジリジリとサメックに近づいていく。

「ふひ……か、カラダに触ってもいいですか? ちょっとだけ……ふひひひ」
「えぇと……ちょっとだけよ?」

 武器は持っていないはずの少女から異常なプレッシャーを感じつつサメックが許可するとほぼ同時、少女がとてつもないスピードで飛びかかってきた。

「ふひひ!」
「ぬおお!?」

 逃げる暇もあればこそ。サメックは為すすべもなく抱きしめられ、全身を撫で回され頬ずりされる。

「すごいすごいすごいすごい! こんなことしても反撃されない! ふひ、ふひひ! 邪神様、素晴らしい出会いに感謝します!」
「ああああなんかすごいモノが当たってる……! お、落ち着け! 離れ……なくてもいいけどとりあえず落ち着け!」

 サメックは強引に振りほどくでもなく困ったように声をあげる。
 戦っている最中も実は気になっていた、少女のたわわな胸が押し付けられ、ムニムニとその柔らかさを鮫肌に感じさせる。それを自分から引き離すことは彼には出来なかった。

「……どういう状況?」

 ちょうどその時、宝箱のフチからタラサが顔を出して、半目でサメックを見る。
 彼女は宝箱の中の謎空間に隠れており、サメックの動きが落ち着いたので出てきたのだった。

「ちょっとー、なんでサメックに抱きついてるの!」
「蛮族? いま宝箱の中から出てきましたか?」

 タラサに強引に引きはがされ、少女のカラダというか胸が離れていく。
 名残惜しそうな顔をするサメックの脇腹をタラサはふくれっ面でつついた。

「あなたは誰? 蛮族っぽいけど」
「蛮族から見てもそう思いますか? ふひひひ……」
「う……ねぇこの人ヤバくない?」

 何故かやけに嬉しそうに口元を緩めて笑う少女に、タラサはしかめっ面で呻く。

「ふひ……失礼しました、私の名前はトレラ。こう見えて人間ですが、禁術を使うことでこの姿になることが出来ました」
「……禁術って?」
「禁術というのはですね!」

 サメックが何気なく聞き返した言葉に素早く反応し、鼻が触れるほどの距離まで迫るトレラ。

「一般的な魔法は正式には光の神の力を用いる精霊魔法と呼ばれるもので、それとは対象的に邪神の力を用いる黒魔術が現代では禁術と呼ばれています。人間は光の神に属するため邪神の魔力は使えませんが、邪神の眷属であるモンスターの魔力を引き出して使うことで禁術を使えます。私の場合は特に自分の肉体にその魔力による強化を施すことで肉体そのものに邪神の力を付与してモンスターに近づくことに成功したのです」
「あー……ええと、わかった、ありがとう」

 早口にまくしたてられ、ほとんど理解する間もなかったが、サメックは追求しても面倒になると判断した。

「そんなものを使って捕まったりしないのか?」
「神官に見つかったら邪教徒として捕らえられて処刑でしょうね」
「でしょうねってこともなげに……」
「上手く逃げていますので。同じ道の仲間も居たりしますし」
「こんな頭のネジがぶっ飛んだ連中が他にもいるのか……」
「ところでサメックさん、お願いがあるんですけど……えーとですね……」

 トレラは両手の指を遊ばせつつ、もじもじと落ち着かない様子で言い淀む。
 彼女は落ち着くように一つ深呼吸すると、意を決したように顔を上げ勢いよく一言。

「私と結婚してください!」
「なんかちょっと予想はできてたけどいきなりだな!」
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