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モーニングセットにドリンクバーが付いているけれど、立ち上がって取りに行く気力があまりない。松並の顔をまっすぐみるのも気が引けて、窓の外とテーブルの上に視線を行き来していると、お茶でいい? と松並が立ち上がった。窓の外は、もう正式に朝だ。これから仕事に行くような人も見える。
「昨日はネットカフェにいたんですけど、夕飯あんまり食べてなくておなか空いちゃった」
松並の前に運ばれてきた和風モーニングセットは、ご飯に味噌汁、塩サバに目玉焼きにベーコン、ソーセージにサラダ、小鉢まで付いている。いつもは軽く、なのに。
「朝からそんなに食べれますか」
「食べれますよ、これくらい。今日は仕事もないし」
「……朝は米派ですか」
「うん、米が好き。和食の方が良いってわけじゃないんだけど」
「焼肉の時は白飯ですか?」
「えー、石焼ビビンバでもいいし、なんだっけ。雑炊みたいなやつ。澤野さんは?」
「僕は冷麺ですね」
「麺かあ」
洋風モーニングセットのスクランブルエッグをフォークで上手くすくえない澤野を見て、松並がはにかむ。トーストの上にジャムとバターを両方塗ると、いいなあ、なんて言って笑う。
「……ちょっと面倒な人だったでしょう」
「え?」
「佐藤。甘えたというか、構ってもらいたがりというか」
「ええ、あー……? はい」
なめらかには発せない澤野の返事に、あの人ちょっと人見知りだから、と返ってくる。
「バームクーヘンをいただきました」
「あれでしょ、米粉の。メープルと栗と焼きりんご味のセット。佐藤の会社で販売してるやつ」
「あ、そうなんですか。……好物、揃ってますね」
そうだね、と松並は小さく返事をして。ゆっくりと咀嚼しながらと食べ続ける。
鎧のように固く自分を覆っていた眠気のことを、忘れていたことに気が付いた。身体が軽いわけではないけれど、眠くないし眠りたくない。まだ醒めていたい。
「行かないから、安心して」
「え?」
「佐藤のとこ。家、まだ全然住んでていいからね」
そうか。気付きもしなかった。澤野はやわらかなパンの耳を噛みながら、正座をしていた時の強ばった身体を思い起こす。松並が安心して家に帰ってこれるように、佐藤を帰すことばかり考えていた。自身のその後のことなんて、ちっとも。
半身を眠りに浸しながら口の中に詰めていた食事は、義務感に駆られてのものだったけれど。今この瞬間に、舌で歯で味わっているものは、ずっと確かなものだ。
「美味しかった」
と松並は、いつもの量の倍以上の朝食を食べ終えてはにかんだ。昨日まで知っていた松並とは、違う人のように思えるけれど。相変わらず真水のようだ。
「バームクーヘン、好きなだけ食べていいよ」
え? と澤野が顔を上げると、僕は食べないからと松並は言う。
「悪いことしたなって思って受け取ってたけど。それはあまりに無責任だったってわかったから」
ファミレスの店内にいるとよくわからなかったけれど、外に出ると晴れている。頭上を覆う首都高のせいで朝なのに随分暗いが、見上げると隙間に完璧に近い青空が見える。
「こんなによく晴れてるのにこれから寝るなんて、贅沢だね」
松並はそう言って笑った。
「昨日はネットカフェにいたんですけど、夕飯あんまり食べてなくておなか空いちゃった」
松並の前に運ばれてきた和風モーニングセットは、ご飯に味噌汁、塩サバに目玉焼きにベーコン、ソーセージにサラダ、小鉢まで付いている。いつもは軽く、なのに。
「朝からそんなに食べれますか」
「食べれますよ、これくらい。今日は仕事もないし」
「……朝は米派ですか」
「うん、米が好き。和食の方が良いってわけじゃないんだけど」
「焼肉の時は白飯ですか?」
「えー、石焼ビビンバでもいいし、なんだっけ。雑炊みたいなやつ。澤野さんは?」
「僕は冷麺ですね」
「麺かあ」
洋風モーニングセットのスクランブルエッグをフォークで上手くすくえない澤野を見て、松並がはにかむ。トーストの上にジャムとバターを両方塗ると、いいなあ、なんて言って笑う。
「……ちょっと面倒な人だったでしょう」
「え?」
「佐藤。甘えたというか、構ってもらいたがりというか」
「ええ、あー……? はい」
なめらかには発せない澤野の返事に、あの人ちょっと人見知りだから、と返ってくる。
「バームクーヘンをいただきました」
「あれでしょ、米粉の。メープルと栗と焼きりんご味のセット。佐藤の会社で販売してるやつ」
「あ、そうなんですか。……好物、揃ってますね」
そうだね、と松並は小さく返事をして。ゆっくりと咀嚼しながらと食べ続ける。
鎧のように固く自分を覆っていた眠気のことを、忘れていたことに気が付いた。身体が軽いわけではないけれど、眠くないし眠りたくない。まだ醒めていたい。
「行かないから、安心して」
「え?」
「佐藤のとこ。家、まだ全然住んでていいからね」
そうか。気付きもしなかった。澤野はやわらかなパンの耳を噛みながら、正座をしていた時の強ばった身体を思い起こす。松並が安心して家に帰ってこれるように、佐藤を帰すことばかり考えていた。自身のその後のことなんて、ちっとも。
半身を眠りに浸しながら口の中に詰めていた食事は、義務感に駆られてのものだったけれど。今この瞬間に、舌で歯で味わっているものは、ずっと確かなものだ。
「美味しかった」
と松並は、いつもの量の倍以上の朝食を食べ終えてはにかんだ。昨日まで知っていた松並とは、違う人のように思えるけれど。相変わらず真水のようだ。
「バームクーヘン、好きなだけ食べていいよ」
え? と澤野が顔を上げると、僕は食べないからと松並は言う。
「悪いことしたなって思って受け取ってたけど。それはあまりに無責任だったってわかったから」
ファミレスの店内にいるとよくわからなかったけれど、外に出ると晴れている。頭上を覆う首都高のせいで朝なのに随分暗いが、見上げると隙間に完璧に近い青空が見える。
「こんなによく晴れてるのにこれから寝るなんて、贅沢だね」
松並はそう言って笑った。
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