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第十五話
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真紀はわざとじらすように、ブラウスのボタンを時間をかけて外していく。
修平はそんな彼女を、寝床に横たわったまま見上げていた。口を開くことも、身動ぎをすることもなかった――いや、したくてもできなかった。まるで金縛りにあったかのように、体がまるで言うことをきかない。
やがて真紀は下着まですべて脱ぎ捨て、綺麗な白い裸体を修平の前に晒した。次に彼女は屈み込み、今度は彼の衣服を脱がし始めた。修平はされるがままになっていた。
――二人ともが、生まれたままの姿となった。
真紀は修平のペニスを口に含み、歯と舌で適度な刺激を与えながら唾液で湿らせた。そうして自らの中に、彼のものを招き入れた。彼女の中に、修平のペニスが埋まっていく。
動けない修平に代わって、真紀が体を動かし始めた。初めはゆっくり、段々と早く――彼女の動きに合わせて、湿った音が聞こえてくる。
動きが激しくなるにつれて、真紀の喘ぎ声もまた、大きくなっていった。怒張して、敏感になった修平のペニスはいまや少し肉壁に擦れただけでも、凄まじい快感が脳へと駆け上がる。
修平と真紀は、同時に絶頂に達した。彼の白濁液が、真紀の体内に熱く迸る――ドーパミンの過剰分泌のせいか、二人の体が一つに溶け合うような錯覚を起こした。
脱力した真紀は、繋がったまま修平の上にうつ伏せになった。汗で濡れた彼女の長い髪が、修平の体に張り付いている。
真紀の体温と彼女の匂い、そして彼女の吐息を、修平は肌に感じた。
幸福感に身を包まれているうちに――修平の意識は急速に薄れていった。
――目を、覚ました。
眩しい日差しが、とうに夜が明けていることを修平に知らせている。それでもしばらくは状況に頭の方がついていかず、呆けた表情で天井を見つめていた。
室内のどこにも、真紀の姿はない――どうやら自分は今まで夢を見ていたらしいと、ようやく得心がいく。
それにしても、ただの夢とも思えないほど生々しい夢だった。
――ふと修平は、自分が全裸のままで眠っていたことに気付いた。昨夜は確かに衣服を着ていたはずだ。
はっとして、股間に手をやる――ぬめりとした感触がある。間違いなく精液の残滓だった。
あれは夢じゃなかったのだろうか――いや、常識的に考えてもそんなことはありえないと、すぐに分かる。
そもそも夢に出てきた真紀は、傷一つない綺麗な白い肌をしていたが、現実の彼女は利樹の暴力で全身が痣だらけだ。
だが本当に、あれはただの夢に過ぎなかったのだろうか。
《夢魔は理想的な異性の姿で現れる》――かつて、桐村はそんなことを言っていた。修平にとっては、真紀の存在がまさにそうだった。
「……馬鹿馬鹿しい」
苦笑して、修平は寝床から起き上がった。
「お客さん、大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが……」
出会うなり、桐村は驚いた様子で言った。
「ご心配いりません……少し体が怠いだけです」
答えて、作り笑いをしてみせる。
「昨夜、変な夢を見たんですよ。きっとそのせいもあるんでしょう」
「ゆ、夢……?」
心配させまいと口にした言葉だったが、桐村にとっては逆効果だったようだ。
「……どんな夢を見たんです?」
「ど、どんなって――」
夢の内容まで言えずに修平が口籠っていると、桐村の表情はますます険しいものに変わった。
「お客さん……お客さんはすぐにでも、この町から出るべきだと思います」
桐村の口からは意外な台詞が飛び出した。
「どうしてですか? ただの夢で、そんな大袈裟な――」
「大袈裟ではありません」
いつになく強い口調で、桐村は続けた。
「このままだとお客さん……死んでしまいますよ?」
修平はそんな彼女を、寝床に横たわったまま見上げていた。口を開くことも、身動ぎをすることもなかった――いや、したくてもできなかった。まるで金縛りにあったかのように、体がまるで言うことをきかない。
やがて真紀は下着まですべて脱ぎ捨て、綺麗な白い裸体を修平の前に晒した。次に彼女は屈み込み、今度は彼の衣服を脱がし始めた。修平はされるがままになっていた。
――二人ともが、生まれたままの姿となった。
真紀は修平のペニスを口に含み、歯と舌で適度な刺激を与えながら唾液で湿らせた。そうして自らの中に、彼のものを招き入れた。彼女の中に、修平のペニスが埋まっていく。
動けない修平に代わって、真紀が体を動かし始めた。初めはゆっくり、段々と早く――彼女の動きに合わせて、湿った音が聞こえてくる。
動きが激しくなるにつれて、真紀の喘ぎ声もまた、大きくなっていった。怒張して、敏感になった修平のペニスはいまや少し肉壁に擦れただけでも、凄まじい快感が脳へと駆け上がる。
修平と真紀は、同時に絶頂に達した。彼の白濁液が、真紀の体内に熱く迸る――ドーパミンの過剰分泌のせいか、二人の体が一つに溶け合うような錯覚を起こした。
脱力した真紀は、繋がったまま修平の上にうつ伏せになった。汗で濡れた彼女の長い髪が、修平の体に張り付いている。
真紀の体温と彼女の匂い、そして彼女の吐息を、修平は肌に感じた。
幸福感に身を包まれているうちに――修平の意識は急速に薄れていった。
――目を、覚ました。
眩しい日差しが、とうに夜が明けていることを修平に知らせている。それでもしばらくは状況に頭の方がついていかず、呆けた表情で天井を見つめていた。
室内のどこにも、真紀の姿はない――どうやら自分は今まで夢を見ていたらしいと、ようやく得心がいく。
それにしても、ただの夢とも思えないほど生々しい夢だった。
――ふと修平は、自分が全裸のままで眠っていたことに気付いた。昨夜は確かに衣服を着ていたはずだ。
はっとして、股間に手をやる――ぬめりとした感触がある。間違いなく精液の残滓だった。
あれは夢じゃなかったのだろうか――いや、常識的に考えてもそんなことはありえないと、すぐに分かる。
そもそも夢に出てきた真紀は、傷一つない綺麗な白い肌をしていたが、現実の彼女は利樹の暴力で全身が痣だらけだ。
だが本当に、あれはただの夢に過ぎなかったのだろうか。
《夢魔は理想的な異性の姿で現れる》――かつて、桐村はそんなことを言っていた。修平にとっては、真紀の存在がまさにそうだった。
「……馬鹿馬鹿しい」
苦笑して、修平は寝床から起き上がった。
「お客さん、大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが……」
出会うなり、桐村は驚いた様子で言った。
「ご心配いりません……少し体が怠いだけです」
答えて、作り笑いをしてみせる。
「昨夜、変な夢を見たんですよ。きっとそのせいもあるんでしょう」
「ゆ、夢……?」
心配させまいと口にした言葉だったが、桐村にとっては逆効果だったようだ。
「……どんな夢を見たんです?」
「ど、どんなって――」
夢の内容まで言えずに修平が口籠っていると、桐村の表情はますます険しいものに変わった。
「お客さん……お客さんはすぐにでも、この町から出るべきだと思います」
桐村の口からは意外な台詞が飛び出した。
「どうしてですか? ただの夢で、そんな大袈裟な――」
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「このままだとお客さん……死んでしまいますよ?」
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