Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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ダンジョンアタッカー。

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「……説明ありがとうございました。何も分からないので助かります」

「いえいえ。僕は優子さんとナイト君のファンですから、お役に立てたなら嬉しいですよ。院内でも自慢しまくれますから」

「なんか、私なんかにファンが居るって、ムズムズしますね…………。あ、さっき言ってたゴブリンに銃が効かないってお話しは?」

「ああソレですか。ではもう少しだけ説明を続けましょう」

 迷宮事変から一年。人類は様々なことを研究した。

 その一つがダンジョン由来の新エネルギー、『魔力』について。

 要は、私がダンジョンでずっと蒼炎の『燃料』だと思ってたものが魔力であり、ダンジョン由来のモンスターやアイテムは例外無く魔力が宿っている。

 そして、魔力を持つ全ては魔力を持たない全てからの干渉に対して著しい耐性を持つ。

 だからダンジョンから出て来たゴブリンには、魔力が伴わない銃弾が効かない。いや、効きづらい。

 それこそ耐性を無視出来るほどに威力の高い大型の銃火器や大砲、爆弾なんかを使わなければモンスターが倒せないのは、迷宮事変を乗り越えた人類の常識となっている。

 銃より殴った方が良いのは、魔力が無い武器より魔力を持った人間が生身で殴った方が、干渉力の関係でダメージが高いから。

 ちなみに誰でもそうなる訳じゃなく、ダンジョンに潜った事がある人間に限定される。ダンジョンに潜った人は例外無く魔力を体に宿すらしい。

 覚醒者やレベルアップを経験した人間ほど効果的なんだそうで、ただダンジョンに行けば良いってものでも無いそうだけど。

 にもかくにも、モンスターを倒すには魔力が重要で、魔力が無い人間はモンスターに対して無力に過ぎる。それが今の常識。

「ダンジョンに入った瞬間から人間はレベル1になるので、僅かながら魔力が宿るって言うのが現在の研究結果みたいですね」

「…………だからナーくんが、銃も効かないゴブリンを相手に戦えたんですね」

 ナイトが死んだ時の事を思い出す。

 銃で撃っても死なないような化け物を相手に、あれだけのゴブリンを殺してから死んだナイト。

「そうですね。…………あと、魔力は感情に影響される性質があるらしいので、ナイト君があれだけのゴブリンを殺してみせたのは、優子さんを絶対に守るって覚悟に起因した結果だと思いますよ」

 そう言われて、胸が苦しくなった。

 ずるい。そんな、不意打ちは止めて欲しい。泣いてしまう。

「…………ナイト、ナイトっ、きて」

「わう?」

 堪らなくなって、お父さんとお母さんに撫でくり回されるナイトを呼ぶ。

 つぶらな瞳で私を見て、ベッドの上をもすもすと歩くナイトを抱き締める。

 私のせいで死んでしまったナイト。炎で姿を作ってるのに、もう温もりも感じなくなってしまった私の騎士様ナイト

「ありがとう……、ごめんね」

「わん!」

 また涙が出て来た私の額を、「もういいの!」と肉球でポスっと叩くナイト。

 そうだよね。ナイトは、お礼が欲しくて戦った訳じゃないんだ。謝って欲しい訳じゃないんだ。

 ああ本当に、ナイトは騎士様ナイトだ。

「…………ナイト、大好きだよ」
 
「わふっ!」

 ナイトの頭が良くなったからなのか、それとも蒼炎で繋がってるからなのか、ナイトの気持ちがよく分かる。

 純粋で、無垢で、この世の何よりも綺麗だった。

 多分、私がダンジョンで捨てたそれを、ナイトが拾ってくれたんだね。

「……私、ナイトと結婚する」

「わぅっ!?」

「結婚しよ?」

「わんわんわん!」

 ナイトに「ダメダメダメ!」って言われた。なんで? ナイトは私のこと嫌いなの?

「…………ナイトになら、娘を任せられるな。……いやしかし、ナイトも息子なわけで、俺はどうすれば………」

「あなた。そもそもナーちゃんは幽霊になってしまったのよ? 結婚出来ないわ?」

「ッ!? そ、そんな……」

「いやあの、浅田ご夫妻様、問題はそこじゃないと思いますが…………」

 わちゃわちゃする浅田家をお医者さんが苦笑いして窘める。

「いやでも、相続先として選んで事実婚は出来たはずだ!」

「あ、そこまでガチのお話しになると僕じゃ無理ですね。弁護士さんに相談してください」

「わんわんわんわんわんわん!」

「ほら、ナイト君も困ってますよ? これ多分、ダメダメって言ってますよね?」

 多分いまこの場で一番冷静な浅田家のメンバーはナイトである。ナイトってば常識人だ……。いや常識犬?

「さて、あとはどうせですから、ダンジョンアタッカーとここ一年で変わった日本についても話しますか。これでだいたい終わりですね」

「あ、よろしくお願いします」

 吠えながらうにゃうにゃと暴れるナイトを抱っこしながら、私はお医者さんの話しを聞く。このお医者さんはとてもいい人だ。殺そうとして本当にごめんなさい。

「説明した通り、今の人類はダンジョンへ積極的な行動が推奨される情勢です。しかも迷宮事変は災害としての規模が大き過ぎて、世界中の軍隊も日本の自衛隊も、手が足りません。同じ色のダンジョンなら影響し合うと言っても、その影響は極微量。銅級ダンジョンは優子さんが完全攻略したおかげで余裕はありますが、それでもそれぞれのダンジョンを直接攻略するのが一番ヒートゲージ減少の効率が良いんです」

 可能な限りそれぞれのダンジョンを直接攻略するべき仕様。だけど人類には戦える人材が足りない。

 しかし、民間人とはいつの世も呑気なもので、世界がそんな状況で四苦八苦してるにも関わらず、高額で売れるダンジョンドロップや、物語の主人公にでもなれそうなファンタジーを前にした民間人は「ダンジョンを一般公開せよー!」と騒ぎ出す。

 だから、各国政府は開き直った・・・・・

「そんなに騒ぐなら、勝手に潜って勝手に死ね。世界各国はそう決めたんですね。幸いダンジョンは入口だけが国土にありますが、ダンジョン内部はいわゆる異世界のようなもの。つまり国土じゃないので、国の法は適用されません。ダンジョン入口の管理以外全部の責任を放り出したとして、本来は誰も文句言えないんですよ」


 そして産まれた新しい職業、迷宮攻略者ダンジョンアタッカー

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