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ぶん殴られる。
しおりを挟む魔法の実在を保証する文字が、他ならないDMに書かれてる。これはとんでもない爆弾だ。
魔力の存在が根付いた世界だけど、ネットを見ると未だに魔法の存在は確認されてない。
強いて言うなら私が使う蒼炎など、覚醒者のスキルが魔法なんじゃ無いかと目する研究者も居るくらいで、つまり現在『魔法っぽいナニカ』が出来る人類は、世界でもまだギリギリ二桁しか居ない覚醒者だけ。
そんな世界に、『魔法の媒体に使えると確約された金属』の存在。そんな情報を投下したら、…………どうなるのか。
わ、私には責任が取れない…………。
媒体に使えるって事は、少なくとも何かの道具に素材として使うわけで、なら普通に考えるとその道具さえあれば魔法が使えると考えられる。
魔石発電事情を加速させるかも知れない高魔力伝導率に続き、『誰でも魔法を使えるようになるかも知れない金属』なんて付加価値、ヤバいなんてもんじゃない。
これだけでも気を失いそうだったのに、まだ爆弾は残ってる。
これ、『あらゆる金属との親和性が高く、合金にすると素材にした金属によって様々な性質を生む』らしい銅竜の鱗さん? ほ、本当に勘弁して下さいませんかね?
だって、それってつまり、地球上のあらゆる金属と合金に出来て、『地球上に新しい金属が生まれる』って事でしょ?
…………この爆弾のヤバさが分からない子供で居たかった。
子供に戻りたい。純真で無垢なあの頃の私に戻りたい。
一年前の普通の子供だった浅田優子に戻りたい。切実に戻りたい。
しかも、しかもさ、『様々な性質を生む』って何?
既にこの鱗がとんでもない性質を、『特殊能力』と言っても過言じゃない性質を持ってるのに、新しい性質を生んじゃうの?
それってなに、この鱗みたいな『特殊能力』紛いの性質なの? 普通の金属みたいに『軽くて硬い』とか『腐食に強い』とか、そんな性質じゃなくて、新しい『特殊能力』が生まれちゃう可能性があるの?
合金に使える金属素材の数だけ? 特殊能力が? 増えちゃうの?
「………………もう一年くらい気絶してたい」
「わん」
死んだ目をした私の中から蒼炎を纏って出て来たナイトに、「ダメだよっ」って怒られた。とても辛い。
待ってよ。待ってください。お願いします。本当に待って欲しい。
私は確かに、ダンジョンでレベルアップして頭が良くなったよ?
たぶんステータスに表示されない精神とかも成長させられてて、もう子供みたいな感性は無くなっちゃったよ?
でもさ、それでも私はまだ八歳なんだよ。七歳で迷宮事変に巻き込まれて、気が付いたら一年経ってた八歳の子供なんだよ。
中身が子供じゃなくても、間違いなく私は子供なんだよ。
「こんな子供に爆弾背負わせないでよバカァ……」
「わふぅ……」
ナイトが「ドンマイ」って言ってる気がする。重量級の爆弾はそんなに軽い慰めじゃ背負えないんだよナイト…………。
しかも、悲しいことに、銅竜の鱗が一番ヤバいってだけで、他にもチラホラとヤバいブツがインベントリに眠ってる。
あのね、一番だろうと二番だろうと、爆弾は爆弾なのだ。
…………誰か助けて。
「こんなの、いったい幾らになるの…………」
世界を変えてしまうかも知れない未知の金属。こんなの個人や企業じゃなくて国が争うレベルだ。
億どころか兆が動きそうな核爆弾が、私のインベントリに沢山眠ってる。
『ブロンズフィニールの鱗×30』
三十個ある。核爆弾が三十個もある。ホントに誰か助けて。
「…………骨とかも似たような爆弾だしなぁ」
☆
名称:ブロンズフィニールの頭骨。
ブロンズフィニールの頭蓋骨。
骨でありながら金属の性質を持ち、含有する魔力量によって魔力遮断性と硬度が上昇する。
内包魔力量が飽和すると魔力反射性質が発生する。
☆
☆
名称:ブロンズフィニールの背骨。
ブロンズフィニールの身体を支えた背骨。
骨でありながら金属の性質を持ち、高い魔力蓄積性を誇る。
さらに背骨が含有する髄液は常に魔力を産み続ける性質を持つ。
☆
……しかもこれ、ドロップアイテムなんだよね。
それとダンジョンで倒したモンスターの死体は別で、下手すると二重取り出来ちゃうよねコレ。
いや違うのかな? あの時は消し炭にしちゃったから、全部ドロップしたのかな?
素材を剥ぎ取ったら、ドロップも減るのかな?
「どうなんだろう。私基本的にモンスターは消し炭にしてたからなぁ、比較が難しい」
食べる時は火力抑えてたし、斧が手に入ってからは叩き斬ってたから死体も残ってたけど、その時だってインベントリとかDMとか知らなかったから、比較のしようが無い。
殺したモンスターの数なんて覚えてないし、ドロップ率の比較なんて殺す度にインベントリを確認しないと無理だ。分かりっこない。
「んー、その辺の情報も調べれば良いのかな」
そう思った私はアイズギアに魔力を送って操作を初めて、インターネットブラウザの検索エンジンを立ち上げた。
「おねーちゃんッッッ…………!」
すると、病室の扉が「すぱーんっ!」って物凄い勢いで開いて、一年ぶりに聞く家族の声が聞こえた。
「……マーちゃ--」
「おねーちゃんのバカァァァァァアアアアッッ……!」
「んげフッ!?」
病院に飛び込んで来た私の妹、浅田 真緒は私の顔を確認した瞬間、ビックリするくらいの跳躍でベッドに飛び込んで来て、その小さなお手々で私の横っ面を思いっきりぶん殴った。
そう、私、何故かぶん殴られた。
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