Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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情報端末の扱い。

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「ん、浅田さん。それは腕時計ですか?」

 みんなからの歓迎を心から喜びながら、同時に凄まじい嫌悪感を乗り越えて臨む一年ぶりの授業。

 教壇に経つのはこのクラスの担任の先生で、算数を受け持つ林太郎先生だ。

 林先生はとても太っててお腹がポヨポヨだけど、その代わりに優しくて落ち着いてる、人気の男性教師だ。

 先生は私を見付けると、ポヨポヨのお腹を揺らしながら私の無事を凄く喜んでくれた。

 その後、『朝の会』とこの学校では呼んでいる、いわゆるHRホームルームで出席確認と伝達事項を伝えて、今日は一時間目からちょうど算数なので、このまま林先生が授業を行う。

 しばしの十分程の準備時間を経て林先生の授業が始まったのだけど、暇だった入院期間中、アイズギアを使ってネットの教材を漁って多少の勉強をした今の私には、まぁ暇な時間である。

 もう既に九九も覚えきってしまった。今更二桁の足し算引き算をノートに書くのも億劫で、少し流し気味に授業を受けてる。

 そんな中、私は林先生にアイズギアの本体について言及された。

「あ、ごめんなさいっ。これ腕輪型の情報端末なんです。外すの忘れてました……。先生に預けた方が良いですよね?」

 アイズギアの専用コンタクトレンズは魔力を利用した液晶のような物で、目に優しく涙を保持して網膜を保護する造りになっている。

 一度装着したらつけっぱなしで過ごしても問題無い新技術が使われているので、付けたまま寝ても大丈夫なのだ。コンタクト用の目薬も要らない。

 本体の腕時計に見える腕輪も軽くて着け心地が良く、しかも操作感がSF映画のホログラムチックなので、情報端末を持ちっぱなしだって言う意識が薄かった。

 なので付けたままなのを忘れて授業を受けていたわけだけど、学校ではスマートフォンを初めとしたあらゆる情報端末の持ち込みは禁止だったはずで、私は怒られるかなと思いながら腕輪を外そうとした。

「あーいや、大丈夫だよ。そっか、浅田さんは一年ぶりだから、新しい校則は知らないのか。外さなくて良いから、そのまま付けてなさい」

「……ふぇ? えっ、付けたままで良いんですか?」

「うん。迷宮事変からこっち、特に浅田さん自身は端末を持ってなかったから凄まじい苦労をしただろう? だから今は、子供でも授業中でも、情報端末の所持を咎めない方針になってるんだよ」

 なんと、ここにも私が影響を及ぼした新ルールが…………。

「え、でも、もうダンジョンは…………」

「浅田さん」

 確かに端末無しでダンジョンに落とされるのは不幸に過ぎるけど、迷宮事変も終わってそんな危険もほとんど無くなったのに、いくらなんでも心配しすぎじゃないか、そう思って口を開いた私は、林先生に名前を呼ばれて遮られる。

「浅田さん。確かに迷宮事変から一年も経って、それ以降の新しいダンジョンは、浅田さんが発生させた銀級ダンジョン一つだけだ。それ以外には新しいダンジョンの発生は認められず、子供たちがダンジョン発生の崩落に巻き込まれる危険性はほとんどゼロだと言っていい」

 そう、端末無しで迷宮に落ちる不幸は、迷宮が新しく生まれないと発生しえない事故なんだ。

 だから、私がダンジョンの攻略をしまくる訳でもないなら、五層の突破に手こずってる今の人類では 、子供でも端末を持たせておく程の警戒が必要だとは思えない。

 だけど、私のそんな浅い考えを指摘するように、林先生は少しの間授業を止めてお話しを聞かせてくれた。

「でもね、浅田さん。そもそも迷宮事変なんて災害その物が、予想の埒外らちがいにあるものなんだよ? 一体誰が二度目の迷宮事変が起こらないと保証してくれるんだい? もう一度、それこそ今この瞬間にでも、大量の銅級ダンジョンが新しく発生しないなんて、誰にも分からないんだよ?」

 林先生にそう言われて、私はハッとした。

 全くもってその通りだ。迷宮事変から一年、ダンジョン事情も安定してきて落ち着いたらしいから勘違いしてたけど、そもそも迷宮事変が意味不明なファンタジー災害だったんだ。

 そのメカニズムも分かってない迷宮事変が、多くの死者を出した未曾有の災害が、どうして二度目が無いなんて言えるんだろうか。

 超常的な存在が作り出したダンジョンとDM。人類はそれを推定『神』の仕業と断定してるのに、その神が気まぐれに二度目の迷宮事変を起こさないなんて、誰にも保証出来ない。

 もしかしたら今この瞬間も、この教室の床が崩落してダンジョンに落とされる可能性だってゼロじゃない。

 何から何まで、先生の言う通りである。

「…………目から鱗です」

「ふはっ、浅田さんは一年前とだいぶ変わってしまったね。少し大人びたよ。でも言葉のチョイスが微妙に下手かな?」

「あー、えっと、レベルアップの影響で、頭の性能も上がってまして……。この場合、目から鱗は間違いですかね?」

「いや、そう間違っても無いけどね」

 私は一年ぶりの授業で、一発目から学ばされた。

 ほら、やっぱりいくら頭が良くなったって、私はたかが八歳の子供なんだ。学校で学べる事なんて山ほどある。

 二度目の迷宮事変を警戒して携帯端末の所持を禁止する校則を変える。その事に対して浅はかな考えを返した私は、間違いなくまだ子供だ。

 よかった。まだ私は子供で居られる。林先生みたいに思慮深い大人になるために、まだまだ私は学校で学ぶことがあるんだ。

 その事が嬉しくて、私は自然と笑顔になってしまう。

 ニコニコ笑顔になりながら、私は先生にお礼を言った。

「先生、ありがとうございます」

「ん? いや、校則を教えただけだから、お礼は不要だよ?」

「いえ、やっぱりありがとうございます。一年ぶりに受ける最初の授業が、林先生で良かったです」

「そ、そうかい? いやぁ、ちょっと照れちゃうね」

 私の心からのお礼と笑顔に照れた林先生は、ポヨポヨのお腹を揺らしながら教壇に戻って行った。

 むふぅ。本当に最初の授業が林先生で良かった。モチベーションが爆上がりした。

 まぁ、授業自体が退屈なのは変わりないけど、私がまだこの小学校に居ていいって太鼓判を押されたみたいで、すごく安心した。

 授業が終わったらあのポヨポヨのお腹をポヨポヨしよう。

 もし仮に、最初の授業が理科の影山だったら、私のことをなんかネチネチと突いてきたに違いない。

 DMの再生数が凄くてお金稼げていいなぁとか、有名人になって調子に乗ってないかぁとか、それはもうネチネチしてきたはずだ。間違いない。一年前の記憶を漁ると、アイツはそんな教師だったはずだ。

 一年前の私も影山が嫌いだったし、知性が上がった今の私が思い出してもやっぱり嫌いだ。普通に性格が悪い教師だ。うん、今日は理科の授業が無くてラッキーだったね。

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