Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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家族のトラウマ。

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 銀級のモンスターを今のところ、誰も倒せない。だからヒートゲージを下げられなくて、スタンピードが止められない。

 多分私なら倒せるけど、逆に言うと私しか倒せない。

 そんなモンスターが国内で解放されて、あっちこっち行かれたら私一人には対応出来ない。そして誰も相手にならない中ボス級モンスターは日本国民をサクサク殺していくだろう。迷宮事変の時に、ゴブリンがそうしたように。

「銅級ダンジョンはヒートゲージ蓄積に半年。銀級ダンジョンは一年かかります。そして銀級ダンジョンが生まれてから九ヶ月が過ぎ、もうすぐ十ヶ月になります」

 つまり、銀級ダンジョンのヒートゲージがあと二ヶ月ちょいで溜まり切る……?

 それはヤバい。めちゃくちゃヤバい。て言うか私が攻略した銅級ダンジョンが東京のやつで、そのせいかは知らないけど銀級ダンジョンも東京都内に発生したんだよね?

 だったらあと二ヶ月ちょいで東京都内に銅級五層ボスクラスのモンスターが暴れ回ることになる。いやいやいやダメに決まってるじゃん。

 そんなことになったら、私がそばにいても家族に何かあるかも知れないし、私は東京に住んでるんだから友達だって東京に居るのだ。

「笹木さ--」

「--ダメですッッ! 絶対に認めませんッ!」

 私は笹木さんに、すぐ銀級ダンジョン攻略の準備を伝えよう口を開き、そしてお母さんの絶叫に遮られた。

「お、お母さん…………?」

 私とお母さんでお父さんを挟む形で座っていたのだけど、気が付いたらお母さんが凄い形相で笹木さんを睨んで立ち上がってた。

 お母さん、どうしたの?

 私の隣に居るお父さんも、お母さんと同じ顔をしてる。反対側の真緒を見ると、真緒も光の消えた顔で笹木さんをジッと見てた。

 真緒…………? お父さん……?

 私とナイトを除いた家族全員が、突然豹変した。

「み、みんなどうしたの……?」

「優ちゃんッッッ……! ダメですからねッ!」

 戸惑う私に、お母さんは怒鳴るように声を上げる。こんなに大きな声を出すお母さんを、私は初めて見る。

「申し訳ないが、そう言う話しなら私も、この子の父としてお断り申し上げる」

「ダメですっ! 優ちゃんはもう二度とダンジョンになんて行きません!」

 怒りを隠そうともしない二人に、私はその言葉を聞いてやっと気が付いた。

 家族は、私の三ヶ月を誰よりも苦しんで見てたはずなんだ。

 ナイトが死んで、心を閉ざして、人間性を捨てながら、道徳を踏み躙りながら、地獄を生きたあの三ヶ月を、誰よりも苦しんで、誰よりも悲しんで見てたんだ。

「しかし奥さん、旦那さんも、このままでは日本が壊れます。少なくとも、東京は確実に滅ぶのですよ?」

「そんなの、知った事じゃない…………!」

 笹木さんは別に悪くないのに、まるで相手を殺そうとしてるような、凄く冷たくて、掠れた声でお父さんが答える。

 お母さんも唇を噛みながら震えて、飛び出しそうなほど見開いた目からは涙がポロポロ溢れてる。

「ですが、国が--」

「八歳の子供に縋らないと滅びる国ならッッッ! 滅びれば良いのよッッッ…………!」

 言い募る笹木さんに、お母さんが絶叫で返す。

 私は、こんなに家族を傷付けていたのだと、今、この時、やっと理解した。

 私は、そんなことも知らずに…………。

「ナイトの亡骸を背負って、死んだ目でバケモノ共の生き血を啜り、ろくな睡眠も取れず、心を殺しながら三ヶ月も生き抜いて、九ヶ月も昏睡して…………! こんな小さな子供がだぞッ!? あんなっ、あんな地獄にもう一度娘を送るくらいならっ、国ごと死んだ方がずっとマシだッッ……!」

「やっとッ、やっと帰ってきたのよッ! やっと目を覚ましたのよッッ……! 私たちの平和を、娘の平穏を邪魔しないでちょうだいっ……!」

 だから。

 そう、だからこそ。

「…………お父さん。お母さん。真緒」

 私は守りたいんだ。一度諦めたこの場所を、家族を、今度こそ諦めないで戦いたいんだ。

「……だ、ダメよ優ちゃんっ、お母さん許しませんからねっ!」

「優子、お前はもう戦わなくて良いんだ。そんなのは大人の責任だ」

「…………おねーちゃん?」

 呼びかけて、みんなの目を見た。

 私達は家族だ。目を見れば、気持ちが伝わる。

 お母さんは震える声でダメだと言う。お父さんは二度と離さないと私を抱き締め、真緒は私の服の裾を摘んで不安そうにする。

「あのね、私さ」

 気が付くと、声が震えてる。

「大好きなんだ。お父さんも、お母さんも、真緒も、愛してるんだよ」

 目が覚めてから、ナイトの勇姿を動画で見てから、ずっと、ずっと後悔してた。

 誰かが私をダンジョン攻略者と呼ぶ度に、私の中の蒼炎が私の心を焦がすんだ。

「だ、ダメだっ、許さないぞ優子……」

「ダメっ、お願いだからっ、お願いだから行かないで優ちゃんッ……!」

 あの日、銅竜を越えてダンジョンを攻略したのは、私じゃない。

 家族の絆を守ったのは、生きて帰って見せたのは、私じゃないんだ。

 ナイトだ。ナイトだけがダンジョン攻略者なんだ。

 私なんて精々、銅竜と相討ちになったクソガキだ。真の意味でダンジョンを超えたのは、ナイトだけ。

「約束する。……約束するよ。私は今度こそ、諦めないから」

「違うっ、違うぞ! そうじゃないぞ優子……!」

「……優ちゃん、行かないでっ」

 あの時諦めた私は、こんなに素敵な家族と一緒に居る資格が無い。

 こんなにも、こんなにも傷付いてたのに、それを隠して、私が日常に帰れるように無理をしてくれてた家族なのに、私はあの時諦めた。家族よりも復讐を取った。

 私はずっと思ってた。

 もしもう一度、あと一回だけでいいから、チャンスが欲しい。

 この世界で一番素敵な家族に、顔向けできる自分になれるように。

 あの日の馬鹿な私ごと、ダンジョンを殺してみせるから。

 分かってる。そんなの求められてない。これは私のワガママだ。

「絶対に死なない。もう諦めない。ナイトの復讐も、家族の愛も、もう何も、何一つだって諦めないから」

 一人ずつ、目を見る。

 泣いてるお母さんも、震えるお父さんも、笑わない妹も。

「ねぇ、聞いて?」

 多くは言わない。ただ、必要な事と、気持ちだけ。


「私の心を守ってくれるお父さん達を、家族を、私に守らせて……?」

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