Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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いえでする。

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「ダメよ優ちゃん。お母さんはもう決めたの。絶対に譲りませんからね」

「えぇ……、譲ってよぉ……」

「父さんも譲らんからな」

「いやもう、せめてお父さんと真緒はどうするのか、それはしっかり話し合ってくれる? 最悪銅級ダンジョンで特訓するのは分かったからさ。手伝うから。誰が参加するのかはハッキリさせて」

 私は折れた。最悪は私とナイトが本気で守れば、銅級ダンジョンの浅い階層なら守りきれる。

 そうしてお話し合いの結果、お母さんは可能な限り家事を終わらせる形で参戦決定。お母さんは最悪、家政婦さんを雇うとまで言った。この決定は覆らない。

 そしてお父さん。お仕事の都合でそもそも不可能だと判明して不参加。顔を真っ赤にしてプルプル震えるお父さんには申し訳ないけど、仕方ないと思うんだ。

 私も詳しくは知らないんだけど、お父さんは外交官みたいなお仕事をしてて、外国に行くことは少ないんだけど、ダンジョンによって世界が変わりつつある国々の外交は今凄く忙しいらしく、今日休むだけでも結構な無理をしたらしい。

 それを更にダンジョンへ潜るから追加で沢山休みます! なんて言い始めたらお仕事クビになっちゃうらしい。

 私の稼ぎがあればお父さんがお仕事クビになっても大丈夫だと思うけど、お母さんが「あなた、娘に養われるような情けない父で良いのかしら?」って言ったら陥落した。

 本当ならお仕事も投げ出して一緒に行きたいはずなんだけど、私のダンジョン攻略を手伝うのと同じくらい、私が帰って来る場所を守るのも大事だと言って、泣く泣く折れてくれた。

 しかし時間が出来たら参加するから、ライセンスの発行はそのものは求めた。なので、まぁあっても困らないだろうって事でライセンスの発行だけ決定。

 そして真緒は…………。

「……まおはもう、おるすばん、やだ。つれてってくれないなら、いえでする」

 その時、浅田家の面々は戦慄した。

 真緒の「いえで」宣言は、浅田家にとってめちゃくちゃ重い。

 この子は普段からあまりワガママを言わない。だけど絶対に譲れない時は、何があっても譲らない。そういう時に使うのが真緒の「いえで」宣言である。

 この場合は子供らしい『取り敢えず家から出たけど近所をウロウロする実質お散歩』な家出じゃなくて、ガチで家に帰らないつもりで、ひたすら一方向に向かってテクテク歩き続ける本気の家出なのだ。

 過去に二回、真緒がどうしても嫌がったり譲れなかった事で「いえで」宣言をして、それはもうめちゃくちゃ遠くまで出ていった事がある。

 その二回とも、真緒を連れて帰ってきたのはナイトだ。

 正確には真緒と遊びたかったナイトが真緒の匂いを追い掛け、追い付いた場所で常に真緒と一緒に居たおかげで、深夜になっても外を歩いている真緒を保護したお巡りさんがナイトの首輪に書かれた住所などの情報を元に、浅田家に連絡をくれたのだ。二回ともそんな感じである。

 一度目の家出は五歳の時、駅四つ分離れた場所で保護された。二度目の家出は六歳の初め頃、一回目が若干トラウマになった両親がガッチガチの監視をしたにも関わらず、一瞬の隙を突いてあっさりと家出に成功し、三日後に埼玉県で発見された。

 そんな経験があるので、浅田家にとって真緒の「いえでする」は何より怖い。マジで怖い。ここで真緒のお願いを拒否した場合、三回目の家出はどこまで行くのか全く分からない。

 しかも、二回とも真緒を助けに行ってくれたナイトは、現在幽霊なのだ。

 少しだけ検証してみたのだけど、ナイトは私から大きく離れる事が出来なくなってると分かった。

 ナイトが自分で私から離れようとすると最大で二十メートル。私が銅竜に蹴飛ばされた時みたいな不慮の事故でも、百メートルを越えると一瞬消えて、私のそばに再出現する。

 つまりナイトは現在、ただの幽霊じゃなくて私に取り憑いた霊というか、守護霊と言うか、そんな存在になってるのだ。

 だからもし、真緒が三回目の家出をした場合、二度と帰って来ない可能性がある。その時の真緒は本当に一方向へ向かってひたすら歩くから、全周囲を探していては追い付けないのだ。

 それに五歳と六歳の時点で、譲れない気持ちだけでそれだけの距離を歩いて見せた真緒が、七歳になった今、何よりも譲れない家族のことで家出した場合、本当にどこまで行くのか…………。

 最悪、見つからなくても生きていてくれたら良い。だけど幼い女の子が家出して、事故や事件に巻き込まれて死ぬ可能性だって決して低くはないのだ。

 真緒は、こうなったら本当に譲らない。譲れない事は絶対に死んでも譲らない。家出したせいで事故や事件に巻き込まれ、死んでたかもって理解した上で家出をするくらい、何があっても譲らない。

 だからこそ、銅竜との戦いで諦めた私を見てあれだけ怒ってたのだ。真緒はそういう子なのだ。

「…………はい。連れて行きます」

「うん。おねーちゃんと、いっしょ」

 なので折れるしかない。真緒が「いえで」を宣言したら、浅田家に成す術は無い。

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