Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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ちょっと待って。

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「待ってお母さん、一緒に行くって…………」

 当然、私にとっては看過できない事なので説得はする。

「ダメですっ、お母さんも行きます! もう決めましたっ!」

 しかし説得は失敗してしまった!

 かつてないほどお母さんが頑固だっ! 凄い頑なになっちゃった!

 こんな駄々っ子みたいなお母さん初めて見たよ。

「あの、あのねお母さん。死んじゃうよ?」

「それでも行きます。もうダメよ、お母さん決めたの。優ちゃんを一人であんな所に行かせるくらないら、一緒に行って死ぬわ」

「いや、ダメだよお母さん? お母さんたち守りたくて行くのに、連れてって死んじゃったら意味無いじゃん?」

 私の決意が固いように、お母さんの決意も固いようだ。なんかもう意地になってる。

 理屈と効率とは仲違いして、理性と倫理を味方にして、引っ込み付かない感じになってる。

「じゃぁ、それまでに優ちゃんがお母さんを鍛えてちょうだいっ! いきなり銀級ダンジョンについて行ったら死んじゃうなんて、お母さんでもさすがに分かるわ。だから銅級ダンジョンでお母さんを鍛えてちょうだい!」

「…………それ良いな。じゃぁ俺も--」

「あなたはお仕事があるでしょう? 優ちゃんの事は私に任せてちょうだい」

「いやいやいや!? そりゃ無いだろ彩、俺だって優子が心配で……!」

「……じゃぁ、まおもいく」

「「「真緒っ!?」」」

 みんなが私を心配して、私がみんなを心配するから、余計にこんがらがってカオスになって来た。

 お話しが締結する寸前に混沌と化した浅田家フルメンバーを前に、笹木さんも苦笑いになってる。

 先程までの悲痛な感じじゃなくて、今のテンションは子供がお菓子売り場を前に「買って買って買って買ってうわぁ~ん!」って床ゴロゴロの駄々っ子する感じなので、笹木さんも笑って見てられるのだろう。

「み、みんなワガママ言わないでよ……」

「我儘じゃありません。娘を心配する親の気持ちが我儘なもんですかっ」

「いや俺をハブにしようとするのは我儘だろう。お前が行くなら俺も行く」

「だからあなたはお仕事があるでしょう?」

「いやお前も家の事があるだろう?」

「「…………ぐむむむむ」」

「まおもいく」

「待ってマーちゃん、本当に待って」

 カオスだ。まさにカオスだ。

「いや、みんな武器とかどうするの? 覚醒スキルが無いなら武器は必須だよ?」

 私がダンジョンで生き残れたのは、十割が十割、蒼炎のおかげだ。これが無かったら私なんて、ホントにただの子供だ。当時七歳だった無力な子供は、何も出来ずに殺さていた。

「笹木さん!」

「は、はい。なんでしょう?」

 私が武器の事でみんなに諦めて貰おうとすると、お母さんがしたり顔で笹木さんを呼ぶ。呼ばれた笹木さんもまさか自分に飛び火するとは思って無かったみたいで、ビックリして背筋がシャキッとしてる。

「優ちゃんの、娘本人の合意が有るとは言え、まさか未成年の子供を親の許諾なく連れ出せるとは思ってませんよね?」

「……えぇ、まぁ、最終的には納得していただきたいですが。後暗い手段に出ると、今度は我々が浅田優子さんの敵になってしまいますし」

 そりゃそうだ。私の家族に手を出すなら、警察だろうと政府だろうと絶対に許さない。

「でしたら、交換条件です。私たちのダンジョンアタッカー登録を即日、無条件で、今から通してください。あと武器の融通をお願いします」

 ダンジョンアタッカーに資格は要らないけど、登録は居る。だけどそれは、誰でも無条件に無秩序に、ダンジョンアタッカーになれるって意味では無い。

 ダンジョンの中で使うとはいえ、人を殺傷出来る武器の携行を許可するための登録なのだから、登録時には当然審査があるし、審査には時間がかかる。緩い審査をして犯罪者に許可なんか出したら、簡単に購入出来るようになった武器で何をされるのか分かったもんじゃないから。

 だから今お母さんが要求したのは、その審査をすっ飛ばして登録申請を通し、即日にライセンスを発行しろって事なのだ。

「…………よろしいので?」

 笹木さんのこれは、私に聞いている。

 笹木さんの一存でその許可を出して、結果ダンジョンで家族が死ねば、私が敵になる。そう思うからこそ私に許可を求めてるのだろう。

 なんだろう。この、許可を得るための許可を得るための許可、みたいな、権利のタライ回し。

 笹木さんが私に銀級ダンジョン討伐をさせるには親の許可が必要で、家族がライセンスを無理に発行するには笹木さんの許可が必要で、笹木さんが家族にライセンスを発行するには私の許可が必要。

 本ッ気でカオス。

「……えっと、笹木さん、ちょっと待ってもらって良いですか?」

 今度は私が家族の説得を試みる番になった。

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