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武器決定。
しおりを挟む最終的に、私がお勧めした武器は三つ。
槍と、連接棍と、…………刺突剣だ。
初心者用なのにレイピア? ってなるけど、実は対小型モンスターならばレイピアは充分に初心者用装備足り得る。
刺して引く。この動作二つだけで攻撃が成立し、なんならそれ以外に要らないと言っても良いので、モンスターを殺すこと、攻撃を避ける事に集中出来る。何より斬らなくて良いのが大きい。
良く、剣戟がメインの物語で「斬り過ぎて血脂で鈍る」なんて言葉が出るけど、斬撃武器って言うのは刃に備わった摩擦で物を斬るのだ。だからベッチャリとへばりついて摩擦の邪魔をしてしまう脂は、刃物の天敵だ。本当に斬れ無くなる。
だけど、刺突はその限りじゃない。だって突き刺すだけだから。先が尖ってれば、摩擦など関係無く刺さるのだ。
ダンジョンでは継戦能力が問われる。モンスターが次から次に湧いてくるから。
そんな中で脂で鈍った刀身のメンテナンスとかしてられない。
「そんな訳で、慣れない内は『斬撃』じゃなくて『刺突』がメインの武器をオススメします。槍と刺突剣ね。まぁ刺突剣って括りだから、レイピアよりブロードソードをオススメしたいけど」
「どう違うのかしら?」
「ブロードソードは『幅広の剣』って意味なんだけど、この剣が産まれたのはレイピア全盛期で、つまり『レイピアより幅広の剣』って意味なんだ。斬撃も出来る刺突剣って感じ」
「なるほど……。普通の剣としても使えるなら、汎用性が有るって事なのかしら?」
「まぁね。刺突を薦めてるけど、それしか出来ないのと、それしかやらないのじゃ、全然違うでしょ?」
今日の為にアイズギアでめっちゃ調べたんだよ。なんなら今も調べてる。
「この、フレイル? って武器は?」
「こっちはハンマーの代わり。遠心力を最大限に使ってインパクトする武器だから、ヘッドの重量を抑えられてハンマーより取り回しが楽なの。威力も普通のハンマーより強いし」
フレイルとは、簡単に言うとハンマーのヘッドをシャフトから外して、鎖で繋いだ様な武器だ。
振り回すとシャフトから鎖を経由して繋がってるヘッドが遠心力増し増しで当たるので、めちゃくちゃ打撃が重い武器である。
ハンマーよりも威力を出せるという事は、同じ規格のハンマーと同じくらいの威力にするなら重量も減らせるって事だ。その分持ち運びがラクになる。
まぁ、武器の持ち運びは私のインベントリを使えば良いのであんまり気にしなくて良いのだけど。
「そうねぇ、フレイルって言う武器は、振り回せる広さがないとダメなのよね?」
「うん。まぁ大体の武器がそうだけど。それにダンジョンって結構広いし。でも銅級の浅い層は狭い洞窟だから、やっぱり取り回しを気にするのは良い事だよ」
それから、私はサブウェポンや防具の選び方も二人に伝えて行く。あくまで私が経験したダンジョンを元にした持論なので、全部を鵜呑みにはしないでねと言ってある。
その結果、お母さんはメインに三叉槍、サブにブロードソードを選んだ。
「問題は、マーちゃんだね」
「まお、ちっちゃいから…………」
当たり前だけど、アタッカーズショップに置いてある武器は大人用だ。そもそも子供はライセンス発行が出来ないのだから、子供用の武器なんて開発するだけ無駄である。
そして武器って基本的に鉄の塊であり、その上で大きいのだから当然重い。幼女のマーちゃんには厳しい物がある。
重量で威力を出すフレイルなんて持てないし、刀身が当たり前に鉄製のブロードソードも無理だ。
「短槍くらいしか持てないよねぇ」
「…………うん。まお、これでいい」
好きに武器が選べなくて落ち込む真緒は、選択肢が無くてショートスピアとライトバックラー、ロングナイフの三点で決まった。
ショートスピアは柄が新型ジュラルミンで出来てて、穂先もセラミックコートの超高度ステンレス製。幼女でも頑張れば持てる。
ライトバックラーはダンジョン産素材で耐熱性を得た上で、更に耐熱コートが施された新型ポリカーボネート製の盾の表面に、更に波加工されたジュラルミンが張られてる。頑張れば幼女でも持てる。
ロングナイフは説明不要って感じの、無骨で大きなサバイバルナイフだ。刃渡り45センチを超える大物だけど、幼女でも頑張れば持てる。
「…………お、おもぃ」
「マーちゃん、それ持てないとダンジョン連れてかないからね? 武器も持てない子を連れてけるほど、優しい場所じゃ無いし。分かるでしょ?」
「………………い、いえでっ」
「しないよね? 私は連れて行こうとしてて、マーちゃんが武器持てなくて連れて行けなくなるんだから。この場合はマーちゃんのプライド的にも、『いえで』は違うでしょ?」
「……うぅぅ」
真緒は可愛く、賢く、素直で、可愛くて、更に可愛いと言う最強の天使ちゃんだ。ワガママも滅多に言わないし、『いえで』だって『自分は間違ってない』って言う譲れない芯を幼心なりに発奮したのがソレなのだ。
だから、『自分が間違ってる』場合はいえでしない。真緒はそれが本当に『ただのワガママ』になると分かってる。それは真緒のプライドが許さない。
そんな妹がいじらしくて、愛らしくて、私は頑張って武器を持ってる真緒をぎゅって抱き締めた。
「頑張ってね、マーちゃん。お姉ちゃんは真緒の為なら、なんだってお手伝いするから」
と言うか、レベルさえ上がればこのくらいの重量はなんて事なくなるし。
「まぁ、どっちにしろ訓練は必要なんだし、ちゃんと武器を持てるようになろうね、マーちゃん」
「…………ぅんっ」
さて、じゃぁ次は防具かな。
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