67 / 153
珠々苑。
しおりを挟むお肉と聞いて、ナイトまで顕現して「ハッハッハッ……」と期待に舌を出してる。可愛い。
お母さんが車を走らせて向かった先は、みんな大好きなお高い焼肉屋、珠々苑だ。
「えへへっ、三人で焼肉なんて行ったのバレたら、お父さんがいじけちゃうね」
「それもそうねぇ……」
「んゆ? あとでおとーさんもいっしょにくれば、いいんじゃないの?」
渋谷駅前のコインパーキングに車を停めて、みんなで降りる。顕現してるナイトもぬいぐるみサイズになってもらって、お父さん以外の浅田家が勢揃いだ。お父さんごめんね…………。
ここは代々木公園からすぐ側にある珠々苑で、渋谷駅のすぐ近くに軒を構える店舗だ。て言うか代々木ってやたら珠々苑有るよね。なんで?
コインパーキングから駅近くまで歩いて、珠々苑が入ってるビルを目指す。
「しかし、珠々苑か…………」
「あら、優ちゃんは珠々苑嫌いだったかしら? 昔は喜んでたと思うのだけど……」
「あ、いや、ほら……」
ふとした呟きをお母さんに拾われて、ちょっと慌てる。別に嫌な訳じゃ無いんだよ。
「ほら、珠々苑って食べ放題無いじゃん? 私ってレベル8で鬼ほど食べるからさ」
「………………あぁ~、それもそうねぇ。じゃぁ、どうしましょう? お店変える?」
「いや、お支払いを私に任せてくれるなら珠々苑で良いよ?」
伊達に億単位で稼いでない。私だってお高い和牛の焼肉とか普通に食べたいもん。
お支払いを気にしなくて良い状態なら容赦無く食べれるし、むしろ払わせて欲しい。私は家のエンゲル係数を破壊したくは無いんだ。
「んん~、流石にママだって、親としてのプライドくらい有るのよ……?」
「それは、ほら、レベリングしてダンジョンで鬼みたいに稼げる様になったら奢り返してくれれば良いと思うんだ。今日からお母さんもマーちゃんも、ダンジョンアタッカーな訳じゃん? 先輩アタッカーからのお祝い、的な?」
口八丁でお母さんを丸め込むと、優しいお母さんは抵抗せずに丸め込まれてくれた。その代わり、珠々苑で実質食べ放題が出来るくらいに凄いアタッカーにしてくれって言われた。
任せろぃ!
ちなみに真緒はよく分からないけどお肉、お肉♪︎ って感じだった。
それから三人、お喋りしながら大きくて目立つ渋谷のビルに入って行く。一階テナントにアイスクリーム屋が入ってて真緒を剥がすのに少し苦労した。
ビルの八階に入ってる珠々苑に到着すれば、高級焼肉店とはかくあるべしって言うサービスの行き届いたおもてなしがまってる。
青く燃えるぬいぐるみを抱っこした『蒼乃フラム』が来店しても、何も揺るがず、「ナイトの入店は可能ですか?」と聞けば、「当店には、勇敢にも大事な人を守りきって見せた高名な騎士様にお帰り願う決まりは御座いません。どうぞご家族揃ってお食事をお楽しみください」と言われた。
案内された席は珠々苑らしいボックス席で、高めの壁で仕切られた『ほぼ個室』的な席である。
個室では無いんだけど、パーソナルエリア的に見るとかなり快適な空間だ。やっぱお高いお店は席からして違う。
食べ放題が無い高級焼肉珠々苑だけど、コースメニューでも充分過ぎるボリュームが有る。けど、まぁ、今は昼だしね。
「ランチメニューでいい? どうせ私は足りなくてグランドメニューから追加するけど」
「お母さんもレベルを上げたらそんなに食べるのかしら?」
「多分ね?」
「まおも?」
「多分ね」
雰囲気からしてちょっとお高い感じがヒシヒシと伝わる落ち着いたボックス席で、取り敢えずランチを三つ。それから上カルビと塩タンを三人前ずつ頼んで置いた。
「二人ともミックスランチ? 吟味でも良かったのに」
「流石に娘のお金で六千円近いランチとか食べられないわよ」
そんなの気にしなくて良いのに。
どうせ銀級で戦える様になったら、その程度は簡単に稼げる。私は二人をそのレベルに育てないといけない。つまり確定事項なんだ。
一ヶ月も過ぎる頃には、この場にいる三人が三人とも世間の平均的な収入を大きく上回る稼ぎを叩き出してるはすだ。
そんな事を懇々と語る私に、お母さんの反応は微妙だった。うーん、伝わらないこの気持ち…………。
そんなやり取りをしてる内に、注文してたお肉とランチが届いた。一気にテーブルが赤色に染る。
ちなみにナイトの分はランチではなくカルビを都度頼む形になってる。ナイトはご飯や野菜よりお肉の方が良いからね。
「うひょぉ、お肉だぁ☆」
「優ちゃん、そんなにお肉好きだったかしら?」
お肉を喜ぶ私を見たお母さんがそんな事を言う。
確かに一年前の私は、ここまでお肉に喜ぶ系幼女じゃ無かったと思う。
「んー、多分この体になってからかなぁ? レベル上がるとさ、なんか、どうしてもお肉食べたくなるんだよねぇ」
銅級ダンジョンの後半でも、好んで動物系のモンスターを狩って食べてた気がする。
思い出したくもない悪夢だけど、同時に懐かしい記憶を掘り起こしながらトングを掴み、届いたメニューをさっそく網に乗せて焼き始める。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
異世界帰りのハーレム王
ぬんまる兄貴
ファンタジー
俺、飯田雷丸。どこにでもいる普通の高校生……だったはずが、気づいたら異世界に召喚されて魔王を倒してた。すごいだろ?いや、自分でもびっくりしてる。異世界で魔王討伐なんて人生のピークじゃねぇか?でも、そのピークのまま現実世界に帰ってきたわけだ。
で、戻ってきたら、日常生活が平和に戻ると思うだろ?甘かったねぇ。何か知らんけど、妖怪とか悪魔とか幽霊とか、そんなのが普通に見えるようになっちまったんだよ!なんだこれ、チート能力の延長線上か?それとも人生ハードモードのお知らせか?
異世界で魔王を倒した俺が、今度は地球で恋と戦いとボールを転がす!最高にアツいハーレムバトル、開幕!
異世界帰りのハーレム王
朝7:00/夜21:00に各サイトで毎日更新中!
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる