Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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 腹八分目…………? レベルアップの弊害で限界値が分からなくなった胃袋を、なんとなくの感覚で測ってみる。

 まぁひとまず、とにかく、お昼を食べて満足の十二時半。

「ふぃい…………、食ったァ…………」

「お、お会計が恐ろしい事になってるわね……」

 お母さんが伝票の数字を見ておののいてる。

「ゼロがいっぱぁーい!」

 小中学校の教室が諭吉さんで埋まるくらいは使ったね。まぁ極上霜降りシリーズが一人前で8800円だし、こんなもんかな。

「これさ、三日以上前から予約してたらダンジョン産のお肉も食べれるらしいんだけど…………」

「…………? え、ダンジョン産のお肉なら優ちゃんのインベントリに入ってるんでしょう? 珠々苑に来る必要って有るのかしら?」

 ………………それもそうか。

 高級黒毛和牛とかは簡単に仕入れられないから珠々苑で食べよってなるけど、ダンジョン産の仕入れならむしろ私がプロじゃん。インベントリに色々入ってるよ。

「むしろ、インベントリのお肉をお店に渡して処理して貰えば食べれたのでは…………?」

「あら? 珠々苑は確か、お肉の処理は別の場所でしてるんじゃなかったかしら?」

 あら、そなのか。

「確か、珠々苑で出すお肉は全部手作業で切り分けて提供してたはずよ。美味しく食べる為に脂身と赤身の配分を計算して切り分けたりしてるって、何かで見た記憶があるわよ?」

 マジかよ珠々苑凄いなっ!? お店でマシンカットとか、最初から切り分けられたお肉を仕入れるとかじゃないんだっ!?

「凄いなぁ…………。やっぱりダンジョン産のお肉も珠々苑で食べない? そこまでしてるお店と比べたら、流石にお家焼肉じゃ勝てないでしょ」

「それもそうねぇ。でも要予約でしょう?」

「ダンジョン産食品の流通ってまだ一年未満で、固まり切って無いよね? 私が横から割り込んで、珠々苑にお肉を流すくらいは出来ると思うんだ。その代わりに優待券貰うとか、相応の待遇をして貰えないかな?」

 具体的にはダンジョン産のお肉が予約無しで食べれたりとかさ。

 いや、必要ならちゃんと予約もするけどさ。私的にはやっぱりお肉を沢山食べたいんだよ。

「ふぅ……、さて」

 食べ終わって一息ついて、少し気を引き締める。ちなみにまだ店内でお茶飲んでまったりしてる。

「そろそろお会計して、ダンジョン行こっか。本当はこんなに沢山食べない方が良いんだろうけど、何回も言うけど今日は慣れることが最優先ね」

 食べる為に緩めてた衣服を少し締め直し、ボックス席を出てレジで会計。

 三人とも色違いだけど同じ服を着てるので、若干目立つ三人組になってる。

「お支払いは?」

「スピードペイでお願いします」

 普通はカードとかで支払うんだろうけど、私はカードとか持ってないので銀行口座直結のスピードペイで一括お支払い。

 この時点でナイトは顕現してる必要が無いので守護霊モードに戻ってる。

「こんなお支払いを一括で出来ちゃうくらいに、立派なったのねぇ」

「結果的にはね? こんなの、ダンジョンから帰って家族に会いたいって、頑張ったオマケだもん。しかも私って最後諦めたし…………」

 つまり、このお支払いはナイトの奢りって見方も出来る。だってあそこでナイトが諦めなかったから帰って来れて、帰って来れたからインベントリの中身に意味が出たんだし。

 あそこで息絶えてたらインベントリもクソもないのだ。

「まぁ、だから、リベンジだよね」

 お支払いを終わらせてビルを出る。店員さんに「ダンジョンアタック頑張って下さい!」と応援されて、やる気も上々。

 あの店員さんは私のペイッターアカウントをフォローしてるのかな。

「…………おねーちゃん、アイスたべたい」

「帰りにね。ダンジョンで頑張ったら四段買ってあげるから」

「ほんとっ!?」

 またビルの一階に入ってる41フォーティワンアイスクリームに釣られそうな真緒ちゃんに約束して、何とか引き剥がす。真緒はどれだけアイスクリーム好きなんだ……。

 アイスクリームトラップを回避して、ゴチャゴチャとした人混みを超えてコインパーキングまで戻る。

「ねぇおねーちゃん。どうしてわざわざ、くるまできたの?」

 車に乗り込む際に、真緒からそんな質問が来た。

 最初は何を聞いてるのか分からなかったけど、よくよく考えると意味が分かったので普通に答える。

「武器の運搬を考えると、車の方が楽だからだよ」

 要は、なんで激近のダンジョン行くのに車出したの? って質問なのだ。

 私が当時、ナイトのお散歩中に巻き込まれた事からも分かる通りに、浅田家の家から代々木公園までは滅茶苦茶近い。幼女の私がお散歩で行ける距離にある。

 そして今しがた食事をして来た珠々苑がある渋谷駅前も、代々木公園から最寄りでは無いけどかなり近い位置にある。都内らしく信号の多い道路や渋滞を鑑みると、徒歩で来た方が早い可能性があるくらいには近い。

 そんな場所に行くのに、なんで車? って真緒は不思議に思ったのだ。

 そして答えは言った通りに武器の運搬が理由。

 銃刀法でガッチガチのケース入りにして運ばないとダメな武器類を運搬するのに、専用バッグがあるとは言え手持ちだと面倒だ。なので車に乗せて運ぶ。これアタッカーの常識よ。

「マーちゃんも大きくなって、一人でダンジョン来れるようにでもなったら意味が分かるかもね」

「そなの? じゃぁまお、はやくおおきくなるねっ」

 その頃には覚醒スキルでも持ってて欲しいけど、そう簡単には手に入らない物なので仕方ない。その時にはダンジョン近くに貸倉庫を借りるか、車の免許を取るか、なにか手を打って欲しいところだ。

 もちろん私を連れてっても良いけどね。真緒のお願いなら二つ返事で聞くし。

 お腹も膨れてにこにこしてる可愛い妹を眺めながら、私たちはぼちぼちダンジョンへ向かい始める。

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