Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

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無駄レベル。

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「これまでが、この後に話す一番大事な授業を聞くのに必要な前提知識です。みんなちゃんと着いてきてね」

「ふ、フラムちゃん…………? お母さん、もう結構頭がフラフラしてるんだけど…………」

「あ、もしかして魔力切れ? ポーション飲む?」

「ああ違うのフラムちゃん…………。常識がひっくり返って、足元が覚束無いだけなのよ……」

 とは言っても、そろそろ二人の魔力も限界だと思うのでポーション自体は飲んでもらう。

 現在は私しか持ってない超希少なアイテムだけど、どうせお母さんとニクスを連れ回してダンジョン攻略するなら、この先勝手に溜まって行くはずだ。今惜しんでも仕方ないアイテムである。

「最後にね、ステータスの伸ばし方なんだけどさ」

「ああ、続けちゃうのねフラムちゃん…………」

「おかーさん、だいじょーぶ? ねぇおねーちゃん、すこしおやすみしよっ?」

 ポーションを手渡しながら授業を続けようとしたら、ニクスに窘められちゃった。おねーちゃん反省…………。

「ん。じゃぁ蒼炎で結界張るから、中で休もうね。本当ならダンジョンの中では簡単に休めないんだから、今日くらいだよ?」

 スキルは汎用性が高く、特に蒼炎は使い方次第で割りと何でも出来る。結界なんて使い方も思いのままだ。と言うか通路を炎で塞ぐだけだし。

 ナイトと二人がかりで、前と後ろの通路を極厚な蒼炎で塞ぐ。一メートル以上の幅がある壁なので、これをゴブリンが通ろうとしたら確実に消し炭だ。

 そうやってモンスターとの遭遇を物理的に完全カットしたので、休憩タイムだ。

 せっかくだし、携行食も食べよう。お昼もガッツリ食べたけど、もう結構時間経ってるからね。オヤツくらいなら胃に入るでしょ。

「はいお母さん、クッションとお茶と…………、携行食はカロリーメイクとスティッカーズ、どっちが良い?」

「………………あっさりしてる方をお願い出来るかしら?」

 じゃぁカロリーメイクかな。スティッカーズは甘さがネットリ、こってりしてるから。

 ダンジョンの剥き出した地面に座って休む為のクッションと、ペットボトルの「おほぉ~いお茶」と、カロリーメイクのチョコ味をお母さんに渡す。ニクスはスティッカーズ食べてみたいって言うので、そっちを渡す。

「詰め込み過ぎたかな?」

「…………そうね。ダンジョンが生まれてから今日までの定説、全部ひっくり返っちゃったんだもの。お母さん、ビックリしてフラフラしちゃったわ」

「ニクスはよくわかんなかった!」

 分かんないニクス可愛い。流石私の妹…………。

 強制的に作った安全地帯で一休み。私もニクスに合わせてスティッカーズを齧る。あまぁぁい…………。

「でも、定説が間違ってるなら早めに否定しないと大変だよね?」

「それもそうなんだけど……」

 申し訳ないけど、止めるつもりは無いんだよね。ステータスがしっかり伸びてるアタッカーが増えてくれれば、銀級攻略が楽になると思うし。

 その為の種は早いうちに蒔かないと、銀級のダンジョンブレイクまでに間に合わないかも知れない。必要な時に、必要な芽が出てくれないと意味が無いのだ。

「そうだなぁ。二人もダンジョンにはもう慣れただろうし、残りはここで休んで、授業が終わったら帰ろっか」

 今すぐ詰め込むとお母さんがパンクしそうなので、もう少し休憩したら再開する。止めるって選択肢は無い。この情報は配信に乗せたいから。

 あと、ちょっと酷な事を言うと、ダンジョンに着いてくるつもりならこのくらいでヘタらないで欲しいかな。

 お母さんが望んでるのは、あくまで「ついていく」だけじゃなくて「一緒に戦う」事なんだから。だからソレが強くなる為に必要な情報なら、混乱なんかしないで吸収して欲しい。

 もちろん、お母さんが少しも強くならなくて、それでもダンジョンに着いてくるって言うなら、私も頑張って守るよ。

 けどそれを望まないのはお母さんだ。お母さんが一緒に戦いたいと願ってるんだ。ならばもう少しだけ、もうちょっとだけ頑張って欲しい。

 そうすれば、あとは全部私がお膳立てするから。

「フラムちゃん、ごめんなさいね……」

「んーん、良いの。どんなお母さんでも大好きだよ」

「にくすもっ!」

「…………ふふっ、お母さんも二人が大好きですよ」

 私とニクスがお母さんに抱きついて、お母さんが抱き締め返してくれる、幸せな時間。

 今も通路を塞いでる蒼炎に突っ込んでくるゴブリンが勝手に燃えて、蒼炎が奪った魔力を私に渡してくる。なんて無粋なのか。今はニクスと一緒にお母さんへ甘える時間なのに。

 イラついたので少し魔力を込めて、壁の外側に向かって蒼炎を解放した。

「で、落ち着いた?」

「ええ、もう大丈夫よ」

「ほんとっ? おかーさんのかおいろ、よくないよ……?」

「それは単純に疲れてるからね。うん、それだけだから大丈夫よ」

 初日から飛ばし過ぎたかな。でも初日にやらないとダメだしな。

 レベ・・リン・・グは・・正し・・くや・・らな・・いと・・弱く・・なる・・

 レベ・・ルを・・上げ・・て増・・える・・ステ・・ータ・・スは・・経験・・値の・・稼ぎ・・方で・・増減・・する・・

 だから、無駄・・なレ・・ベリ・・ング・・する・・と弱・・くな・・

 レベルが上がり易い序盤は特に気を付けないと、意味・・の無・・いレ・・ベル・・アッ・・をしたら取り返せない。

 今のところ、一度上げたレベルを下げる方法なんて見つかってないんだから。

「落ち着いたら、レベルの秘密について教えるね」

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