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リベンジマッチはステゴロで。
しおりを挟む「前回は悪かったね。故意に蒼炎を暴走なんて、湿気た終わり方でさ」
階層ごとのレベルキャップ説。今では割りと真実なんじゃ無いかと思ってるコレはつまり、銅級ダンジョンを攻略した私のレベルキャップはレベル10まで。
今はレベル8だから、あと2レベルも上がる余地がある。
そうすると、ならば目の前の銅竜はつまりレベル10相当のモンスターって事であり、今の私から見ても奴は格上って事になる。
前回だって、お母さんやニクスと同じように私も一撃で戦況をひっくり返されて、危うく死ぬところだったんだ。
でも、その上で、事実を理解した上で思う。
もうコイツに負ける気はしないし、負けるつもりも無い。
このまま戦ったら経験値が温くなる気配すらする。だから、私は、ゴスドラを投げ捨てた。
実際にはインベントリにしまったんだけどね。蒼炎にボワッと燃やされ消える重量級武装はなかなかの迫力だ。
次に防具、いま着てるゴスロリワンピースも蒼炎で燃やしてインベントリへ。下に着てるキャミソール姿になるけど気にしない。
下着姿どころか、ほぼスッポンポンな姿さえ億単位の人に見られてるんだから、今更キャミソール姿が何だと言うのか。
武器も防具も放棄した私を見て、銅竜は怪訝な顔をする。ドラゴンとは、結構表情が豊かなんだな。
私がなんのつもりで、どんな策で武器を手放したのか。下手に賢しい銅竜は思案してる。
だからハッキリと、両の拳を胸の前で打ち付けながら告げてやる。
「ねぇ銅竜。殴り合いしようよ」
拳に蒼炎が宿る。
今、この瞬間まで我慢してた感情を全て薪にする。憎悪と怒りと羞恥を蒼に焚べる。
「リベンジマッチなんだよ」
今、この瞬間も新しく湧き出てくる激怒と憎しみと喜びも全部全部、燃え盛る私の心に注ぎ込む。
燃えろ、燃えろ燃えろ燃えろ私の心ッッ……!
そう、リベンジなんだ。リベンジなんだよ。
「武器は要らない。質の良い防具も同じ。…………あの時は、そんなもの無かったから」
私の腕が無事な分、完全再現とはいかないけれど。
銅竜だってお尻が無事なのでイーブンだ。
「私は銅級ダンジョン唯一の攻略者。だけど、この世で銅竜を討伐した唯一の存在は、私じゃないっ!」
ナイトだ。
ナイトだけが、前回の勝者なんだ。
「私は無様に自爆して終わった。銅竜も巻き込まれて実質引き分け」
勝者は、最後まで諦めず、私が手放した蒼炎を握り直して銅竜を焼き、私を地上に連れて帰った騎士様ただ一人だけ。
だから、
「私は今度こそ諦めないッッ……!」
家族に向き合いたい。心の底から大好きだよって言いたい。
ナイトの隣に居たい。世界で一番素敵な騎士様の隣で、胸を張れる私で居たい。
だから、
「さぁ、あの日の続きをはじめよう…………! 今度は、暴走なんてつまらない終わり方はしない!」
私がこの、切羽詰まった時に銅竜素材の収集依頼を受けた一番の理由。
やり直したかった。あの日の「諦め」を。
あらゆる感情が溢れ出す。呼応する魔力が私の蒼を染め上げて、もっと深く熱く煮え滾る。
拳に纏った蒼炎が火力を上げ、もはや宇宙から見る地上の様に真っ青だ。
「準備は良いか、銅竜ブロンズフィニール。前回は私の不徳で終わったから、今日はそっちの好きなタイミングで初めて良いからさ」
拳が燃えてる。心が燃えてる。今日の私は誰にも負けない。
「今日で私は、お前を完全に超えてみせる」
--コルロロォォァアアアアアアアアッッ…………!
私の啖呵が気に入らなかったのか、それとも逆に気に入ったからこそなのか、銅竜は私の言に大振りのテレフォンパンチで応えてくれた。
「ルォぉおああアアアアアアアアッッ……!」
激突。
銅竜の右殴りに、私も右のベアナックルで応酬する。
私のステータスで膂力の評価はC。八段階評価に於いて上から四段目。つまりほぼ真ん中。
しかもレベルも8であり、レベル10相当だと思われる銅竜を相手に殴り合うのは普通に無謀だ。
ドラゴンってだけで膂力評価Aは確実だろう生き物を相手に、レベルが2も下の私が真っ向から力比べ?
そんなの、押し負けて当然……………………、
「ンな訳ないんだよなぁぁあッッ!」
ミサイルでも、ロケットでも、ジェットでも、呼び方はなんでも良い。私には蒼炎がある。ナイトの死が私に与えてくれたこの力がある。
拳から、肘から、背中、腰、膝裏、あらゆる場所から蒼炎を噴いて膂力の足しにする。重量の足しにする。
押し負けない。真っ向から殴り合う。
「私の魔力評価はA! そしてダンジョン由来の生物は魔力の含有量でダメージが変化するっ!」
魔力による干渉力。
この一点だけが、このルールだけが私をここまで連れて来た。
「蒼炎で魔力を奪えば敵が弱くなる!」
私が持つ、絶対的なアドバンテージ。
重量? 膂力? レベル? 格?
関係無い。全部関係無い。
魔力を奪えば、全員私の格下だからッ…………!
「ぶっ飛べオラァぁぁあああああッッ!」
私は拳を、振り抜いた。
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