Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

文字の大きさ
127 / 153

足踏みの始まり。

しおりを挟む


 ニクスと屋台食べ歩きなどをした結果、私主観のサナの町レポート。

 まず、思ったより広い。この町広いぞ。

 もしかしたらこの町、防壁の内側は空間が歪んでるとかで見た目より規模が大きい可能性がある。その場合は街や都市と言うべきなのかも知れないけど、住人達が自分で「ようこそサナの町へ」って言うから町で良いや。

 この町での支払いは例外なくDDダンジョンドルで行う。これは払いも受け取りも変わらない。

 話し変わるけど、アイズギアの制作会社であるDDスクリプトさんの『DD』とダンジョンドルのDDは別物だ。今更だけどね。

 DDスクリプトさんの『DD』は『DDダンジョンドロップ』って意味らしい。ダンジョン・ドロップ・スクリプトでDDスクリプトだそうだ。

 はい、話し戻って、支払いが例外無くDDって事は、支払いの下限が日本円換算で1200って事になる。1DDが1200円だからね。

 アメリカみたいにセントとか無い。全部ドルだ。DDの下限は1DDだ。

「宿が5DDで、屋台の串焼きとかは基本的に1DDで複数売りか……」

「んもぅ! またおねーちゃんお金の話してる!」

「あはは、ごめんごめん」

 つまりは纏め売りの文化なのだ。通貨の下限が1200円相当なら、1200円分のセットにして売っちゃえって事なんだろう。と言うか日本みたいに、通貨が細分化してるからって最小単位でバラ売りする文化の方が珍しいんだっけ? 先進国ならこんなもんだっけ?

 やっぱりネットが使えないダンジョンは不便だなぁ。気になった事をその場で調べられない。

「あ、おねーちゃん! あそこにアイテム売ってるみたいだよ!」

「おー、お母さんには頼んであるけど、自分でも見てみようか。知らないアイテムとかは見なきゃ分かんないしね」

 はしゃぐニクスに手を引かれて町を歩いて、やって来たのは市場的な場所。

 道行く獣人さん達が思い思いに過ごす中で、私とニクスは露店を冷やかして行く。

「むしろ知らないアイテムの方が多い件について」

「わあ~、なにこれ~!」

 私達幼女でも覗ける露店で、私達幼女の手でも握込める大きさをした漆黒のドクロとか、ウサギの尻尾ストラップみたいなアイテムとか、干した草とか根っことか、知らない物ばっかりだ。ニクスが手に持ってるのは黒いドクロだ。マジで何それ。

「おう! そいつぁ『怨み玉』ってモンでな、効果は--」

 買った。必須アイテムやってん。

 獣人のお兄さんが説明するドクロのアイテムは、見た目や名前と裏腹に普通の便利アイテムだった。

 なんでもコレ、一層にあったモクログサを主材に作られたアイテムで、焚き火に投げ込むと五時間は匂いを持続して獣系モンスターを追い払えるってアイテムだった。しかも人にはキツく無いように厳選したハーブも加えてあり、燃やしても臭くないらしい。神アイテムか?

 ついに、ついに念願のセーフティエリア生成用のアイテムが手に入った。正直辛かったんだ。

「おうおう! いっぱい買ってくれんならオマケしようかねぇ!」

 普通に有用で高級なアイテムなので、値段は一個20DDと結構お高い。けど背に腹はかえられ無いし、ダンジョンで比較的安全な睡眠がたった20DDで買えると思えばむしろ安い。

 ちなみに、魔力がたっぷりだったモクログサから分かる通り、燃やす時に怨み玉へ込めた魔力量で追い払えるモンスターの格が変わるらしい。

 その後も、ニクスと共に回る屋台は面白い物で溢れてたし、必須アイテムも多かった。

 途中で買い出し中のお母さんとも遭遇して情報交換をして、その後にまたニクスとデートをした。

 途中、『魔法入門』なんて本を見付けて購入した。やはりサナの町で魔法を身に付けられるらしい。

「帰ったら一緒に読もうね~」

「うんっ♪︎」

 ニッコニコのニクスと一緒に遊び回るけど、どれだけ時間を使っても陽が落ちる事が無い。というか青い空に太陽なんて物は無く、無いものは落ちれないと言うべきか。

 ダンジョンの中にあるサナの町は、常に陽が出て夜が来ない町でもある。

「そろそろ帰る?」

「ん~…………」

 陽が落ちるから子供は一日の終わりを感じて家に帰る。けどここだと陽が登りっぱなしだから、子供だろうとセルフマネジメントしないと永遠に家へ帰れない。家っていうか宿だけど。

 私が帰るか聞くと、ニクスは「まだおねーちゃんに甘えてワガママ聞いて欲しいけど、そろそろダンジョン攻略のテンションに切り替えないと……」みたいな葛藤が透けて見えるお顔で唸ってた。

「今日も寝る時はお姉ちゃんにぎゅってして良いから」

「ん! じゃぁ帰るぅ!」

 私はこの可愛い妹を一生可愛がる刑に処されてるから、うにうにと悩む妹は可愛がってあげないといけないのだ。

「まぁ、お休みは今日までだけど、どうせまだ滞在はするだろうし。またデートする時間くらいはそのうち取れるよ」

「ほんと?」

「たぶんね」

 私達は五層まで来たが、しかしまだ来ただけだ。六層への階段は見つかってないし、そしてどのくらいで見つかるのかも分からない。

 しかも、ヒートゲージの減少を目指してモンスターだって倒さないといけないのに、五層にはモンスターが見当たらない。

 六層への階段を探しながら、四層へ戻ってモンスター討伐まで並行してやる必要がある。どちらか一方に傾注すると片方が立ち行かない。

 階段探しを優先すると五層にモンスターが居ないからあっという間にヒートゲージが溜まるだろう。逆にモンスター討伐を優先した場合はヒートゲージに影響があるけど、もっとヒートゲージを減らせるモンスターを六層で探せない。

 それじゃダメなんだ。今のままだとヒートゲージの減りが怪しすぎで、拮抗出来ても拮抗じゃダメなんだ。だって私達が帰れなくなる。ダンジョンブレイク寸前のヒートゲージを保つ為に、永遠に戦い続けるとか冗談じゃない。

「まったく、困った階層だよ此処ここは」

 私達がこの階層を抜けるのが何時になるのか、私には予想すら出来なかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...