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破壊の規模。
しおりを挟むニクスがコルドゥラの発動に成功した。その結果、いやもう、言葉が無い。なんだこれ、災害じゃん。
「…………………………四層が、凍った」
「……えへっ、やり過ぎちゃった」
てへぺろする妹が可愛くてほっぺにちゅっちゅするけど、まぁ発動した魔法はヤバかった。もしかして可愛さに比例する威力なのか? ダメだ私いま混乱してるな。
コルドゥラが発動すると、まず四層全域の天候が一時間ほど吹雪になった。
吹き荒ぶ風が魔力を孕んだ雪を運び、そうして階層が雪に覆われていって、最後にはモンスターもゆっくりとその生命活動を止めていく。
ん、私? もちろん蒼炎で守ってますが?
いや蒼炎無かったら私もヤバかったよコレ。なにこれ。一個人が出来て良い破壊じゃないよね?
いやさ、私も銅級の五層や銀級の一層とかで、蒼炎で周囲を焼き滅ぼした事はある。あるけど、それでもちょっとしたミサイルくらいの被害しか無かったはず。
個人がミサイルくらいの破壊力を持ってる時点でヤバいのはそうなんだけど、でもニクスのコレは比べ物にならないでしょ。こんなのもう、放射能汚染の無い核兵器じゃん。
だってさ、だってさ? 銀級の四層ってどれだけ広いと思うの? 多分埼玉県とかならスッポリ入りそうな広さだよ?
そこを、全域吹雪っすか。そっすか。
「…………クーちゃん、魔力は?」
「えと、すっからかんだよぉ~」
肩で息をして、お目々はパッチリ瞳孔ガン開きのニクスちゃん。多分、脳内物質とかドバドバ出てる状態なんだろう。
レベル10のアタッカーが、魔力全部使って小一時間詠唱した結果、この大規模殲滅魔法なのか。
魔法って言うのは、魔力を効率良くチカラに変える術だ。それを、効率良く全魔力を破壊に変えた結果がコレ。もう、政府も怖くてアタッカー隔離するんじゃねって感じだよ。その場合はお父さん連れて来てサナの町に住もう。
羽ちゃんや湯島くんも連れてこよう。国が私達を核兵器扱いして来たらダンジョン亡命だ。絶対やるぞ。
他の国に逃げても良いんだけど、平和な日本でこうなら、他の国でも似たようなもんだよねって。だからダンジョンに亡命しよう。そうしよう。
「…………大丈夫?」
「んっ、だいじょーぶ。でも、ちょっとだけ辛いから、おねーちゃんに甘えていーい?」
「それは勿論、辛くなくても24時間365日いつでも良いよ?」
私は一生妹を可愛がる刑に処されてるからね!
魔法は一時間で終わったけど、凍り付いた階層がすぐ溶ける訳でも無い。
たっぷりと停滞効果が練り込まれた雪と氷にまみれた世界は、新しくポップしたモンスターも蝕んで行く。
概念レベルで襲う停滞効果で命ごと活動を緩められ、その間に冷気が全てを奪ってく。
そんな世界は、さらに暫くの間、モンスターを拒み続けた。
「……今日はもうこれ、スローター要らないでしょ。クーちゃん、五層に帰ろ」
「…………うんっ」
嬉しそうに背中へ乗ったニクスをおんぶしながら、新雪その物みたいな雪を踏み締めて四層を歩いた。階段まで戻って、今日はもうお仕事終わりである。
「…………あれ? つまり、これもう目的達成なのでは?」
ふと、気が付く。
ニクスがコルドゥラの発動に成功した。この一手で、私達の問題は大体解決してるのだと気が付いちゃった。
これで六層行けるし、四層のスローターでもヒートゲージを抑えられたんだから、六層でもう一回ニクスがコルドゥラを使えば、相応のヒートゲージが減少するはずだ。
そうじゃなくても、もうワザとダンジョンブレイクさせて、その時に一層をコルドゥラで殺しとけば被害はゼロだろう。
ダンジョンブレイクは、その時にその階層に居るモンスターを解放する仕組みだから、ダンジョンブレイク時に一層を皆殺しすれば、もうそれで終わりなのだ。
…………おや? コレはもしかして?
「勝った? ……第三部完!」
「おねーちゃん、どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
ネットで見たネタを使って見たくて口にしたけど、妹から心配されてしまった。
いつの間にか戻って来たナイトが私に憑依して犬耳をまた生やしながら、私はニクスをおんぶして五層を目指す。
「わぁ、もふもふっ、もふもふっ……」
「ひゃんっ、まっ、あんまり強く触っちゃダメだよ? クーちゃん?」
「ごめんなさーい!」
あんまりごめんなさいと思ってない声でニクスが謝る中、私は「あれ、この辺に階段あったよね?」って四層を彷徨いた。ちくしょう、階段が雪に埋もれてた。
やっと見付けた階段を降りて五層に帰ると、キンッキンに冷えてた空気が急に温くなってブルブルっと体が震える。
「とりあえず、今日はクーちゃんのランク4発動記念にお祝いだね」
「やったー! あのね、ニクスね、コプトの唐揚げが良いなぁ!」
「ふふ、町に到着する前に少し狩って行こうか」
「うん! あと、コプトのハンバーグも!」
「分かった分かった。お母さんと一緒に作るから」
ニクスはコプトが大好きである。
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