Blue Flame Little Girl 〜現代ダンジョンで地獄を見た幼女は、幸せに成り上がる〜

ももるる。

文字の大きさ
139 / 153

ランク4、発動。

しおりを挟む


「にふふぅ~♪︎ おねーちゃんかぁいい~♪︎」

「ちょ、あの、あんまり弄らないでね……? くすぐったい……」

 ナイトの憑依能力が発覚してから、既に数日。

 家族にはもう伝えてあって、そしてお母さんにもニクスにも大人気となってる。お母さんは「娘の獣耳……、いいわっ……!」とちょっと見た事ない顔を見せてくれたし、「おねーちゃんのふわふわー!」とニクスも喜んでる。

 私の獣耳や尻尾が撫でられると、本来そのパーツの持ち主であるナイトも喜ぶ。私の中で「うれしい!」って気持ちが尻尾ブンブン丸なのだ。

 憑依中は、犬部位を触られると私にも感覚がある。だからニクスに尻尾を揉み揉みされるとくすぐったい。

 私の蒼炎+守護霊で実体化してるナイトのパーツだから、実際の所はもふもふの毛並みは無いんだけど、それはそれとしてマシュマロみたいなふわふわ感は残ってるから、便宜上これらは「もふもふ」にカテゴリーする事でお母さんとは合意してある。

「ほらニクス、お姉ちゃんはスローターしなきゃだし……」

「いいの! スローターはニクスがやるもんっ」

 そんな私は本日、四層でスローターだ。ニクスは魔法の練習ローテなので、私を見守りながら魔法の練習をするのが正しいのだけど、後ろから私に抱き着いて耳と尻尾をもふもふしてるニクスが離してくれない。

「魔法の練習はどうするの」

「同時にやるもんっ」

 私が窘めると、ニクスはそう言って魔法を起動し始めた。

 森の木々を避ける様に顔を出しつつあるモンスター達目掛け、後ろから私にしがみついたまま、ランク1のボルトを何個も何個も準備する。

「即席ランク4魔法! ボルトシャワー!」

「なるほど。ランク1を四つ同時に使えれば実質ランク4って? 確かに練習には良いかもね。…………私もやろ」

 魔法陣の緻密さで圧倒的な差があるから、ランク1を四つ並べたとてランク4と同じ難易度にはならない。四本の線で一つの陣を精密に描くのと、全く同じ魔法陣を四つ並列するのでは、当たり前だけど難度が違う。

 それでも良い練習なのは間違いない。なんなら、五つか六つくらい並べて魔法陣構築……、カッコつけて詠唱とでも呼ぼうかな? 詠唱の精度を上げるのは普通にアリだ。

 ニクス命名の並列ボルト、ボルトシャワーなる魔法を真似して重ねて、森に弾丸をバラ蒔いていく。今の私ならランク1の詠唱に五秒くらいだから、魔法陣を五個並べたら一秒に一発撃てる計算だ。

 もちろん、慣れてる魔法と普段使わない魔法では差があるけど、それも含めて練習って事だろう。

「シールドも一緒に練習しようかな。…………そう言えば、ニクスはなんのランク4を練習してるんだっけ?」

「んぇ? コルドゥラって名前の魔法だよ」

 魔法ガチ勢おばちゃんに言われた課題はランク4の発動。と言うか特定の教本に書かれてる魔法の発動。だから発動する魔法の種類は私達が選んで良いのだ。

 ニクスが言うコルドゥラって魔法は確か、大規模な嵐を呼ぶ魔法だったかな。

 ああ、そうか。コルドゥラを白雪で発動すると吹雪になるのか。しかも停滞のデバフ付き? は? 強くない?

「進捗はどのくらい?」

「んー、じゃぁ今やってみるねっ?」

 完成度どのくらいか聞けば、なんと見せてくれるらしい。

 私達の練習方法だとローテーションがネックで他の人の練習を参考にしずらいんだよね。スローターを疎かにしちゃだめだし、役割それぞれ違うし。

 今だって手抜きで魔法乱射してるだけなの、あんまり良くないんだ本当は。もっと本気で「エリア内に同種族の肉片一つすら残さねぇぞ、根絶やしにしてやる」ってくらいの勢いで殺戮しないとヒートゲージがね、下がらないの。

 だけど、まぁ、たまには良いでしょ。ここんところはヒートゲージもミクロ単位で下げられてるみたいだし。

「じゃぁ行くよ、見ててねっ」

 ニクスが私にしがみついたまま目を瞑って、大規模な詠唱に入った。

 魔力は基本的に視認出来ないから、第六感みたいな感覚で知覚する。その感覚で見れば、ニクスの額から少し浮いた所に魔法陣がゆっくりと構築され始めた。

 陣の四方から線が伸びて、緻密なレースにも見える繊細な模様を描いていく。ゆっくり、ゆっくりと。

 手順をほんの一つ間違えただけで失敗するから慎重に進む詠唱は、生半可な難易度ではない事が良くわかる。

 私達の気配に釣られて襲って来るモンスターを、木々の隙間にボルトを乱射して殺しながらニクスを見守る。

 途中、ナイトが「しゃらくせぇ!」って感じで憑依をといてグレートソードブンブン丸し始めたから防衛が更に楽になって、片手間でモンスターを殺しながらニクスを見守る。

 そうして、十分、二十分と過ぎて、そろそろ三十分が経とうとする頃に、私は違和感を感じた。

 ………………いや? あれ、なんか成功しそうじゃない?

 どこかでミスって「今はこれくらい!」ってなるのを予想してたのに、三十分も経ってまだニクスは詠唱を続けてるのだ。知覚する魔法陣も、もう九割型完成してるように見えるし。

 失敗した時点で魔法陣は瓦解するから、こうやって残ってるのは成功中の証明だ。

「…………え、うわっ、ちょ--」

 魔法陣が完成しそうで、何故か慌ててしまう私。しかしニクスは気にせず詠唱をする。



「……………………出来た。発動、枯死の吹雪コルドゥラッッ!」



 そして更に十分使って、ランク4魔法は発動した。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

処理中です...