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ギルドからの依頼
第70話 朝未狙われる
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瑶さんの実験の話の流れでわざと汚した布にクリーンの代わりにホーリーを掛けてみて『驚きの白さ』的な体験をした翌日、あたしと瑶さんは2度目の変異種討伐(?)変異種だけが対象じゃないからこれは違うわね。
まあ魔物討伐で良いわよね。
ということで、討伐エリアに来ているのだけど。
「ねえ、瑶さん。これはどういう状況なのかしら?」
何故討伐エリアの入口にハンターがこんなに大勢いるのかしら。5、6パーティ30人くらいは居そうよね。これじゃ聖属性魔法のテストも出来ないわね。しかも視線があたしに集中している気がするのよね。
「あー、まあ、朝未狙いが本格的になってきた感じかなあ」
瑶さんが苦笑いしてるわね。
「あ、あの天使ちゃん。今日の予定は決まってる?」
え?いきなり?ナンパなの?あたしみたいな子供相手に?見た目だけは整っている男の人(ただしハンターとしてはという限定ではあるけど)に掛けられた言葉にあたしは嫌悪感を感じてしまった。
「え、いきなり何?気持ち悪い」
あ、思わず本音が漏れちゃったわ。でも、本当に気持ち悪いもの。瑶さんの後ろに隠れさせてもらうのが良いかしらね。話したことも無い人がいきなりこれは無いと思うの。
「まともな挨拶もしないで、人のバディに粉を掛けるとか、どういうつもりですか?少なくともここにいるということは6級以上のハンターなのでしょうに。まともな常識も持ち合わせていないのですか?」
あたしを後ろに庇って瑶さんが硬い声で相手を遠ざけてくれた。やっぱり瑶さんのそばが一番安心できるわね。向こうでは『焦りすぎだ』だの『直接が無理なら……』だのと面倒な言葉も聞こえてくるので、瑶さんの袖を軽く引っ張ってあたしに向いてもらった。
「ね、瑶さん。ここにいると気持ち悪いの。さっさと行きましょう」
「そうだね。さっさと行こうか。……瑶と朝未だ。これから討伐に入る」
瑶さんは周囲をじろりと睨んで、もう何度目かになるギルドの係員に声を掛けると、あたしを周りの目から隠すようにして討伐エリアに入っていった。
討伐エリアに近づいたところで、あたしはいつもの通り探知魔法を展開した。
「あら?」
「どうした、朝未?」
「うーん、後ろから多分3パーティくらいついてきてます」
「多分?朝未にしては珍しいな。いつもきっちり数は把握してるよね」
「え?ああ、人数は分かりますよ。16人です。ただ動きがどうも別パーティではないように感じるものですから。だから人数から3パーティくらいって言ったんです」
「ああ、確かにいるね」
ちらりと後ろを軽く確認した瑶さんがため息をついたわ。
「でも、どうします?あんなの引き連れてだと、ろくに魔法は使えないですよね」
「魔法だけではないよ。潜んで近づいて先制攻撃をしかける私達の戦い方とはあまりにも相性が悪いね。ダッシュで引き離すことは出来るけど、討伐エリア内ではやりたくないしね」
「いっそ邪魔だって言っちゃいます?」
「いや、さすがにそれは……。いや、いいのか?」
瑶さんがちょっと頬を掻きながら考え込んだわ。
「ま、苦情と警告をしておこうか。朝未は、私の後ろにいるといいよ」
そう言うと、瑶さんはツカツカと多分隠れているつもりなのだろうハンターたちに向かって歩いていった。
「そこの16人。雑な隠れ方して私達の邪魔をしないでもらいたい」
瑶さんが指摘したのだけど、出てこないわね。どうしようかしら。
「人の言葉が分からない魔物みたいね。討伐対象かしら」
あたしが弓を構えると、さすがに慌てて出て来たわね。
「あ、わわ。撃たないで、天使ちゃん。魔物じゃないから」
「なら、そんな下手な隠れ方をしながらついてこないでください」
「なら堂々と……」
「何をふざけたことを言ってるんですか」
「我々は君たちが危ない目に合わないように陰から護衛を……」
「誰が頼みましたか。むしろあなた方がついてきた方があたし達にとってリスクです」
「君たちは2人だからね。人数が少ないと突発事態に弱いから助けようと……」
相手がそこまで言ったところで、瑶さんが前に出てくれた。あたしも嫌悪感から言葉が止まらなかったので助かったわ。
「そこまでです。つまりあなた方は、私達の戦力が不足だから加勢しようとついてきたということですか?」
「いや、そこまでは……」
「ならばなんですか?私達にとってあなた方は狩りの邪魔なんですが」
「我々も6級ハンターのパーティーだ。君たちの邪魔になるような追跡はしない」
「これだけ言っても改める気は無いということですね。では、あくまでも自己責任でどうぞ。これは警告でもあります。私達は、あなた方とは狩りの方法が違いますからね。巻き込まれて痛い目にあっても責任は持ちませんよ」
「な、我々とてハンターだ。自らの行動の結果を君たちのせいにしたりはしない」
瑶さんの軽蔑するような言葉に相手のリーダーらしき男性ハンターが反論してきたわね。でも、ここまで言わせればいいのじゃないかしら。そっと瑶さんの様子を伺うとちょっと黒い笑みを浮かべているじゃないの。
「なら、結構。さ、朝未行こう。もう彼らを気にする必要はないから」
瑶さんは、あたしの背中を押して進み始めた。そして彼らに声が届かない程度に離れると小声であたしに指示を出してきたの。
「ゴブリンでもオークでも構わないから、あまり大きすぎない群れ、そうだな5、6体の群れが2つ私達が間をギリギリ通り抜けられるくらいの間隔でいるのを探してくれないか?」
「え?ええ。別に探すのはいいですけど」
あたしが首を傾げて瑶さんを見ると、ちょっと困った顔で説明をしてくれた。
「私達は2人だから群れと群れの間を通り抜けるけど、彼らは16人と大人数だからね」
「え?魔物に襲わせるんですか?」
「というより、足止めだね。まさか魔物の群れに気づかないってことはないだろうし。2つの群れの間をぬけるのは16人もの大人数ではむりだろうから。それに6級ハンターが16人もいれば、戦闘になっても大したケガもなく対処できるだろうからね。彼らが戦闘をしているあいだに彼らと距離を取れるよ」
瑶さんの言う事は分かるわ。でも……。
あら、瑶さんが大きなため息をついたわね。
「わかった。朝未は優しいね。あんな奴らの事まで気にして。……なら10体くらいの群れを探して、2人で殲滅してみせようか。私達の力を見せつける方向で。ただし、使っていい魔法は魔法は探知魔法と補助魔法だけだよ」
まあ魔物討伐で良いわよね。
ということで、討伐エリアに来ているのだけど。
「ねえ、瑶さん。これはどういう状況なのかしら?」
何故討伐エリアの入口にハンターがこんなに大勢いるのかしら。5、6パーティ30人くらいは居そうよね。これじゃ聖属性魔法のテストも出来ないわね。しかも視線があたしに集中している気がするのよね。
「あー、まあ、朝未狙いが本格的になってきた感じかなあ」
瑶さんが苦笑いしてるわね。
「あ、あの天使ちゃん。今日の予定は決まってる?」
え?いきなり?ナンパなの?あたしみたいな子供相手に?見た目だけは整っている男の人(ただしハンターとしてはという限定ではあるけど)に掛けられた言葉にあたしは嫌悪感を感じてしまった。
「え、いきなり何?気持ち悪い」
あ、思わず本音が漏れちゃったわ。でも、本当に気持ち悪いもの。瑶さんの後ろに隠れさせてもらうのが良いかしらね。話したことも無い人がいきなりこれは無いと思うの。
「まともな挨拶もしないで、人のバディに粉を掛けるとか、どういうつもりですか?少なくともここにいるということは6級以上のハンターなのでしょうに。まともな常識も持ち合わせていないのですか?」
あたしを後ろに庇って瑶さんが硬い声で相手を遠ざけてくれた。やっぱり瑶さんのそばが一番安心できるわね。向こうでは『焦りすぎだ』だの『直接が無理なら……』だのと面倒な言葉も聞こえてくるので、瑶さんの袖を軽く引っ張ってあたしに向いてもらった。
「ね、瑶さん。ここにいると気持ち悪いの。さっさと行きましょう」
「そうだね。さっさと行こうか。……瑶と朝未だ。これから討伐に入る」
瑶さんは周囲をじろりと睨んで、もう何度目かになるギルドの係員に声を掛けると、あたしを周りの目から隠すようにして討伐エリアに入っていった。
討伐エリアに近づいたところで、あたしはいつもの通り探知魔法を展開した。
「あら?」
「どうした、朝未?」
「うーん、後ろから多分3パーティくらいついてきてます」
「多分?朝未にしては珍しいな。いつもきっちり数は把握してるよね」
「え?ああ、人数は分かりますよ。16人です。ただ動きがどうも別パーティではないように感じるものですから。だから人数から3パーティくらいって言ったんです」
「ああ、確かにいるね」
ちらりと後ろを軽く確認した瑶さんがため息をついたわ。
「でも、どうします?あんなの引き連れてだと、ろくに魔法は使えないですよね」
「魔法だけではないよ。潜んで近づいて先制攻撃をしかける私達の戦い方とはあまりにも相性が悪いね。ダッシュで引き離すことは出来るけど、討伐エリア内ではやりたくないしね」
「いっそ邪魔だって言っちゃいます?」
「いや、さすがにそれは……。いや、いいのか?」
瑶さんがちょっと頬を掻きながら考え込んだわ。
「ま、苦情と警告をしておこうか。朝未は、私の後ろにいるといいよ」
そう言うと、瑶さんはツカツカと多分隠れているつもりなのだろうハンターたちに向かって歩いていった。
「そこの16人。雑な隠れ方して私達の邪魔をしないでもらいたい」
瑶さんが指摘したのだけど、出てこないわね。どうしようかしら。
「人の言葉が分からない魔物みたいね。討伐対象かしら」
あたしが弓を構えると、さすがに慌てて出て来たわね。
「あ、わわ。撃たないで、天使ちゃん。魔物じゃないから」
「なら、そんな下手な隠れ方をしながらついてこないでください」
「なら堂々と……」
「何をふざけたことを言ってるんですか」
「我々は君たちが危ない目に合わないように陰から護衛を……」
「誰が頼みましたか。むしろあなた方がついてきた方があたし達にとってリスクです」
「君たちは2人だからね。人数が少ないと突発事態に弱いから助けようと……」
相手がそこまで言ったところで、瑶さんが前に出てくれた。あたしも嫌悪感から言葉が止まらなかったので助かったわ。
「そこまでです。つまりあなた方は、私達の戦力が不足だから加勢しようとついてきたということですか?」
「いや、そこまでは……」
「ならばなんですか?私達にとってあなた方は狩りの邪魔なんですが」
「我々も6級ハンターのパーティーだ。君たちの邪魔になるような追跡はしない」
「これだけ言っても改める気は無いということですね。では、あくまでも自己責任でどうぞ。これは警告でもあります。私達は、あなた方とは狩りの方法が違いますからね。巻き込まれて痛い目にあっても責任は持ちませんよ」
「な、我々とてハンターだ。自らの行動の結果を君たちのせいにしたりはしない」
瑶さんの軽蔑するような言葉に相手のリーダーらしき男性ハンターが反論してきたわね。でも、ここまで言わせればいいのじゃないかしら。そっと瑶さんの様子を伺うとちょっと黒い笑みを浮かべているじゃないの。
「なら、結構。さ、朝未行こう。もう彼らを気にする必要はないから」
瑶さんは、あたしの背中を押して進み始めた。そして彼らに声が届かない程度に離れると小声であたしに指示を出してきたの。
「ゴブリンでもオークでも構わないから、あまり大きすぎない群れ、そうだな5、6体の群れが2つ私達が間をギリギリ通り抜けられるくらいの間隔でいるのを探してくれないか?」
「え?ええ。別に探すのはいいですけど」
あたしが首を傾げて瑶さんを見ると、ちょっと困った顔で説明をしてくれた。
「私達は2人だから群れと群れの間を通り抜けるけど、彼らは16人と大人数だからね」
「え?魔物に襲わせるんですか?」
「というより、足止めだね。まさか魔物の群れに気づかないってことはないだろうし。2つの群れの間をぬけるのは16人もの大人数ではむりだろうから。それに6級ハンターが16人もいれば、戦闘になっても大したケガもなく対処できるだろうからね。彼らが戦闘をしているあいだに彼らと距離を取れるよ」
瑶さんの言う事は分かるわ。でも……。
あら、瑶さんが大きなため息をついたわね。
「わかった。朝未は優しいね。あんな奴らの事まで気にして。……なら10体くらいの群れを探して、2人で殲滅してみせようか。私達の力を見せつける方向で。ただし、使っていい魔法は魔法は探知魔法と補助魔法だけだよ」
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