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新たな仲間
第76話 ピンチ
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「朝未!」
「大丈夫です。体勢をくずしただけでケガもありません」
高性能になった身体は、この程度では傷もつかないのよね。別に身体を触っても硬くなっているって感じはしないのだけど。
あたしは、転がったままで2体の変異種の様子をうかがいどちらにも近づかない方向に転がりながら立ち上がった。
「あいつら……」
思わず、怒りの声を漏らしてしまった。
「朝未、頭にきているのは分かるけど、今はこの2体をどうにかするよ……。そっちの槍持ちの女の子、これから起きることを誰にも言わないと誓えるか。あんたの主人であるあの女神の雷にも」
「わたしは、さきほど主従契約の約定にある無謀な戦いを強制された事で主従契約が切れました。主人のいない奴隷です。あなた方が、わたしの主人になっていただければ誰にも秘密は漏れません」
「ちっ、奴隷とか私達の主義に反するのだけど、奴隷から解放ってのは出来ないのか?」
「わたしは奴隷紋の支配下にあります。そのため主人となった方の命令には逆らえません。あなた方が何をするつもりなのかわかりませんが、わたしに秘密を守らせるにはわたしの主人になっていただくしかありません」
瑶さんが、嫌そうな顔してるわね。多分あたしも同じような顔してると思うわ。でも、今は選択の余地がないし、それに彼女から感じるこの感じ。
「瑶さん。多分ですけど、奴隷紋については、後であたしがなんとかできそうです」
あたしは、2体の変異種の様子をうかがいながら女の子に向かって口を開いた。
「奴隷としてでなく、1人の人として誓ってください。今はそれで十分です」
「わかりました。わたしの名はマルティナ。この名にかけてこれから起こることを秘すと誓います」
マルティナさんの言葉を聞いたあたしは、瑶さんに視線を向けた。
「瑶さん。後をお願いしますね」
「分かっている。でも……。いや、今は……。朝未、頼む」
今も2体の攻撃を辛うじていなす2人をチラリ見てあたしは魔力を練り上げる。1回で使い切ってはダメ。ギリギリでコントロールする。
「ホーリー」
最初は2体ともを範囲に捕らえたホーリーを発動させる。ごそっとあたしの中から魔力が抜ける。う、やっぱり気持ち悪い。でもまだ大丈夫。
「よし。朝未。効いている。ゴブリンの変異種の方はこのまま斃し切れそうだよ」
「な、何をされたのですか?この光はいったい。それに変異種がいきなり弱体化しました。今まで皮に傷を付けることさえ出来なかったオークの変異種に槍が少しは刺さります。動きも急に鈍く……。それにこの煙のようなものはいったい……」
あたしは魔力を節約しながら瑶さんをサポートするために、短剣でゴブリンの変異種に切りかかった。
あたしのホーリーで弱体化したゴブリンの変異種は、あたしからちょっかいを掛けられるため、瑶さんに集中できずあっという間に瑶さんに切り伏せられた。あたしのホーリーで弱体化していたとはいえ、まるで通常種のように首を切り飛ばした瑶さんの近接戦闘力にはちょっとあたしもビックリしたわ。
「マルティナと言ったか。待たせたね。良く抑えてくれた。ここからは3人で……。朝未頼む」
「はい、ハイオークが動かないように抑えてください」
あたしは、ギリギリまで魔力を練り上げ、発動範囲を集中させることで魔法の密度を上げる。でも、ギリギリ気を失わない程度に、そうすれば最悪もう1度使えるから……。
「ホーリー」
うっ、きつい。でも、まだ大丈夫。意識を放り出すほどでは無いわ。膝をつき眩暈と虚脱感、そして気持ちの悪さに耐えながら、あたしは瑶さんとマルティナさんがオークの変異種、もうハイオークで良いわね、に攻撃を仕掛けるのを目の端に捕らえている。
あのハイオークを1人で抑えていられるマルティナさんは強い。そこに瑶さんが加われば、きっとホーリーで弱体化している今なら倒すことも不可能じゃないと思う。瑶さんの横に立っているのがあたしじゃないのは寂しいけど……。
マルティナさんが、槍でハイオークの肩を突いた。違うわ、そこじゃない。マルティナさんの正確で強い突きならもっと効果のある攻撃が出来るはずなのに。
それでも、マルティナさんの突きに気を取られたハイオークに瑶さんが横から切りつけていったわ。いつものように首を狙った斬撃は、ハイオークの首に大きな切り傷を付けたわね。
でも、このハイオークってどれだけ頑丈なの?
あたしのホーリーで弱体化しているところに補助魔法で強化された瑶さんの斬撃を首に受けて致命傷じゃないなんて。
「マルティナさ、ん。もっと効果的な……攻撃を。弱点を、……狙って。あな、た、なら、出来る、から」
あたしは、力の入らない中で、マルティナさんに声を掛けた。力の入らない声だから、戦闘中の彼女に聞こえたかどうか分からないけど。それでも、声を掛けずにはいられなかった。
マルティナさんからは反応が感じられない。やっぱり聞こえなかったのね。でも、ちょっと今はこれ以上は声も出ないわ。
それでも、瑶さんは順調にダメージを与えているから、大丈夫……よね。
あら?マルティナさんの槍を突く場所が少しかわった?喉や頭部、心臓を狙っている?ハイオークの方もマルティナさんからの攻撃も嫌がって意識がかなり分散しているみたい。瑶さんの攻撃もかなり当たっているわね。
この調子ならもう少しで……
あたしがちょっとホッとしたところで、ハイオークが急に暴れだした。あれはまるでネトゲのボスのHPバーが赤くなって攻撃力があがるのに似てる。あ、マルティナさんがハイオークの振り回した腕に吹き飛ばされたわ。間に槍を入れて受けていたから多少ダメージは吸収できてるとは思うけど、立ち上がれないでいる。浅く胸が上下しているから生きてはいるわね。あたしが回復するまで生きていてくれたら回復してあげるから頑張って生きていてね。
って、それより今は瑶さん。さすがは瑶さん、とりあえず初撃は避けたようね。でもマルティナさんが戦線離脱した以上は、ハイオークは瑶さんだけを狙っているから、この状態の攻撃をいなすのは瑶さんでも大変そう。ゲームなら時間経過でもとに戻ることも多いけど……。
『バキン』ついに瑶さんに攻撃が当たって……。あら?ハイオークが跳ね飛ばされたわね。
……、あ、リフレクね。あたしはちょっと胸をなでおろしたわ。
でも、瑶さんにリフレクを掛けなおさないと。
「リフレク」
ぐぅ、回復できてない状態ではリフレク掛けるだけで、こんな負担なの?多分掛かったと思うけど。これはきついわ。う、目が回る。今まではひざは着いていたいたけど辛うじて頭は上げていたのに、だめ、ついにあたしは両手を地面についてしまった。
本当はダメなのに。瑶さんがピンチになったら、ちょっとでも魔法で援護するためには頭だけは上げていないといけないのに。
『バキン』
そんな、あたしの耳に不穏な音が響いた。
「大丈夫です。体勢をくずしただけでケガもありません」
高性能になった身体は、この程度では傷もつかないのよね。別に身体を触っても硬くなっているって感じはしないのだけど。
あたしは、転がったままで2体の変異種の様子をうかがいどちらにも近づかない方向に転がりながら立ち上がった。
「あいつら……」
思わず、怒りの声を漏らしてしまった。
「朝未、頭にきているのは分かるけど、今はこの2体をどうにかするよ……。そっちの槍持ちの女の子、これから起きることを誰にも言わないと誓えるか。あんたの主人であるあの女神の雷にも」
「わたしは、さきほど主従契約の約定にある無謀な戦いを強制された事で主従契約が切れました。主人のいない奴隷です。あなた方が、わたしの主人になっていただければ誰にも秘密は漏れません」
「ちっ、奴隷とか私達の主義に反するのだけど、奴隷から解放ってのは出来ないのか?」
「わたしは奴隷紋の支配下にあります。そのため主人となった方の命令には逆らえません。あなた方が何をするつもりなのかわかりませんが、わたしに秘密を守らせるにはわたしの主人になっていただくしかありません」
瑶さんが、嫌そうな顔してるわね。多分あたしも同じような顔してると思うわ。でも、今は選択の余地がないし、それに彼女から感じるこの感じ。
「瑶さん。多分ですけど、奴隷紋については、後であたしがなんとかできそうです」
あたしは、2体の変異種の様子をうかがいながら女の子に向かって口を開いた。
「奴隷としてでなく、1人の人として誓ってください。今はそれで十分です」
「わかりました。わたしの名はマルティナ。この名にかけてこれから起こることを秘すと誓います」
マルティナさんの言葉を聞いたあたしは、瑶さんに視線を向けた。
「瑶さん。後をお願いしますね」
「分かっている。でも……。いや、今は……。朝未、頼む」
今も2体の攻撃を辛うじていなす2人をチラリ見てあたしは魔力を練り上げる。1回で使い切ってはダメ。ギリギリでコントロールする。
「ホーリー」
最初は2体ともを範囲に捕らえたホーリーを発動させる。ごそっとあたしの中から魔力が抜ける。う、やっぱり気持ち悪い。でもまだ大丈夫。
「よし。朝未。効いている。ゴブリンの変異種の方はこのまま斃し切れそうだよ」
「な、何をされたのですか?この光はいったい。それに変異種がいきなり弱体化しました。今まで皮に傷を付けることさえ出来なかったオークの変異種に槍が少しは刺さります。動きも急に鈍く……。それにこの煙のようなものはいったい……」
あたしは魔力を節約しながら瑶さんをサポートするために、短剣でゴブリンの変異種に切りかかった。
あたしのホーリーで弱体化したゴブリンの変異種は、あたしからちょっかいを掛けられるため、瑶さんに集中できずあっという間に瑶さんに切り伏せられた。あたしのホーリーで弱体化していたとはいえ、まるで通常種のように首を切り飛ばした瑶さんの近接戦闘力にはちょっとあたしもビックリしたわ。
「マルティナと言ったか。待たせたね。良く抑えてくれた。ここからは3人で……。朝未頼む」
「はい、ハイオークが動かないように抑えてください」
あたしは、ギリギリまで魔力を練り上げ、発動範囲を集中させることで魔法の密度を上げる。でも、ギリギリ気を失わない程度に、そうすれば最悪もう1度使えるから……。
「ホーリー」
うっ、きつい。でも、まだ大丈夫。意識を放り出すほどでは無いわ。膝をつき眩暈と虚脱感、そして気持ちの悪さに耐えながら、あたしは瑶さんとマルティナさんがオークの変異種、もうハイオークで良いわね、に攻撃を仕掛けるのを目の端に捕らえている。
あのハイオークを1人で抑えていられるマルティナさんは強い。そこに瑶さんが加われば、きっとホーリーで弱体化している今なら倒すことも不可能じゃないと思う。瑶さんの横に立っているのがあたしじゃないのは寂しいけど……。
マルティナさんが、槍でハイオークの肩を突いた。違うわ、そこじゃない。マルティナさんの正確で強い突きならもっと効果のある攻撃が出来るはずなのに。
それでも、マルティナさんの突きに気を取られたハイオークに瑶さんが横から切りつけていったわ。いつものように首を狙った斬撃は、ハイオークの首に大きな切り傷を付けたわね。
でも、このハイオークってどれだけ頑丈なの?
あたしのホーリーで弱体化しているところに補助魔法で強化された瑶さんの斬撃を首に受けて致命傷じゃないなんて。
「マルティナさ、ん。もっと効果的な……攻撃を。弱点を、……狙って。あな、た、なら、出来る、から」
あたしは、力の入らない中で、マルティナさんに声を掛けた。力の入らない声だから、戦闘中の彼女に聞こえたかどうか分からないけど。それでも、声を掛けずにはいられなかった。
マルティナさんからは反応が感じられない。やっぱり聞こえなかったのね。でも、ちょっと今はこれ以上は声も出ないわ。
それでも、瑶さんは順調にダメージを与えているから、大丈夫……よね。
あら?マルティナさんの槍を突く場所が少しかわった?喉や頭部、心臓を狙っている?ハイオークの方もマルティナさんからの攻撃も嫌がって意識がかなり分散しているみたい。瑶さんの攻撃もかなり当たっているわね。
この調子ならもう少しで……
あたしがちょっとホッとしたところで、ハイオークが急に暴れだした。あれはまるでネトゲのボスのHPバーが赤くなって攻撃力があがるのに似てる。あ、マルティナさんがハイオークの振り回した腕に吹き飛ばされたわ。間に槍を入れて受けていたから多少ダメージは吸収できてるとは思うけど、立ち上がれないでいる。浅く胸が上下しているから生きてはいるわね。あたしが回復するまで生きていてくれたら回復してあげるから頑張って生きていてね。
って、それより今は瑶さん。さすがは瑶さん、とりあえず初撃は避けたようね。でもマルティナさんが戦線離脱した以上は、ハイオークは瑶さんだけを狙っているから、この状態の攻撃をいなすのは瑶さんでも大変そう。ゲームなら時間経過でもとに戻ることも多いけど……。
『バキン』ついに瑶さんに攻撃が当たって……。あら?ハイオークが跳ね飛ばされたわね。
……、あ、リフレクね。あたしはちょっと胸をなでおろしたわ。
でも、瑶さんにリフレクを掛けなおさないと。
「リフレク」
ぐぅ、回復できてない状態ではリフレク掛けるだけで、こんな負担なの?多分掛かったと思うけど。これはきついわ。う、目が回る。今まではひざは着いていたいたけど辛うじて頭は上げていたのに、だめ、ついにあたしは両手を地面についてしまった。
本当はダメなのに。瑶さんがピンチになったら、ちょっとでも魔法で援護するためには頭だけは上げていないといけないのに。
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そんな、あたしの耳に不穏な音が響いた。
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